第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本心血管理学療法学会 一般演題ポスター
心血管P01

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-HT-01-5] 高齢心臓血管外科術後患者における糖尿病の有無と筋力との関連

瀧野皓哉1, 原康貴1, 作井大介1, 久世洋嗣1, 永井敬志1, 富田伸司2, 恒川智宏2, 加藤貴吉2, 泉二佑輔2, 川村一太3, 菊地淳3, 山田純生4 (1.岐阜ハートセンター心臓リハビリテーション室, 2.岐阜ハートセンター心臓血管外科, 3.岐阜ハートセンター循環器内科, 4.名古屋大学大学院医学系研究科)

Keywords:糖尿病, 筋力, 心臓血管外科術後

【はじめに,目的】

近年,糖尿病(以下,DM)患者は非罹患者と比べて筋力および骨格筋量が減少していることが報告されている。心筋梗塞後患者や心不全患者においても同様にDM既往の有無によって筋力に差を認めたことが報告されているが,心臓血管外科術後患者においては注目が置かれていないのが実状である。DMによる筋力低下は軽微なため若年者おいては,ADL上大きな問題にならないとされている。しかし,高齢者は若年者と比べて骨格筋量がすでに減少しているため,高齢の心臓血管外科術後患者においては虚弱や要介護といった状態に影響を及ぼすことが推察できる。そこで,本研究では心臓血管外科術後の安定期でありADLが回復段階である術後3ヶ月時点において高齢心臓血管外科術後患者のDMの有無と膝伸展筋力および握力との関連性について検討した。

【方法】

当院にて心臓血管外科手術を施行され,平成27年1月~10月までに術後3ヶ月を迎えた65歳以上の高齢心臓血管外科術後患者54例(平均年齢74.1±5.5,男性30例,女性24例)を対象とした。本研究は,診療録より筋力(膝伸展筋力,握力),DMの有無,患者背景因子(年齢,性別,BMI,薬剤,基礎疾患,手術情報,既往歴,血液データ,エコー所見)を後方視的に調査した。DMの有無において筋力,患者背景因子についてMann-Whitney U検定,Fisher正確確率検定を用いて解析した。また,筋力とDMとの関連性を明らかにするため,膝伸展筋力および握力を従属変数とし,DMの有無,調整因子(年齢,性別,BMI,手術時間)を独立変数とした重回帰分析を行った。いずれの場合も有意水準は5%未満とした。

【結果】

高齢心臓血管外科術後患者においてDMを既往に持つ割合は29%(16例)であった。DMの有無でHbA1c,Glu,TG,HDL-cho,手術時間に有意差を認めた。しかし,膝伸展筋力(40.1% vs 44.3%,P=0.23),握力(21.8 kg vs 22.8kg,P=0.85)についてはDMの有無で有意な差を認めなかった。重回帰分析の結果,膝伸展筋力の関連因子としてDMの有無(β=-0.29,P=0.03),性別(β=0.40,P=0.005)が抽出された(R2=0.28)。また,握力の関連因子としてDMの有無(β=-0.24,P=0.02),性別(β=0.71,P<0.001),年齢(β=-0.23,P=0.03),BMI(β=0.21,P=0.03)が抽出された(R2=0.62)。

【結論】

高齢者や心筋梗塞後患者,心不全患者と同様に,高齢心臓血管外科術後患者においても筋力にDMが関連していることが明らかにされた。今後は筋力に関連するとされる身体活動量や糖尿病神経障害,糖尿病罹患年数,糖尿病の管理状況などの詳細な情報を踏まえた上での解析,さらには術前および術後,術後3ヶ月といった縦断的な調査をしていく必要性がある。