第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本心血管理学療法学会 一般演題ポスター
心血管P02

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-HT-02-1] 大血管・末梢動脈疾患の腎機能と術後離床時の血圧変化

小山雄大1, 正保哲2, 小幡洸介1 (1.町田市民病院リハビリテーション科, 2.文京学院大学保健医療技術学部理学療法学科)

Keywords:大血管, 腎機能, 血圧

【はじめに,目的】

理学療法を施行する上で患者の病態を把握することは重要である。CKDとCVDの関係は心腎連関と呼ばれ,動脈硬化による内皮障害,腎機能低下に伴う体液調節障害,骨代謝異常,貧血などにより悪循環をきたすといわれている。大血管・末梢動脈疾患においてもCKDが合併する場合が多い。今回,術前の腎機能と心機能,動脈硬化指標,術後離床時の血圧変化との関連について検討した。


【方法】

対象は平成24年4月~平成27年10月までに待機的に大血管・末梢動脈疾患の手術を施行した113例(男性94例,女性19例,年齢76.2±7歳,術式:人工血管置換術/ステントグラフト内挿術/末梢動脈バイパス術)で,EF50%以上,eGFR30~89 mL/min/1.73m2とし,CKDstage2・3に分類した。評価項目は年齢,BMI,術前・術後eGFR,術前・術後Hb,術前BNP,足首/上腕血圧比ABI,上腕-足首間脈波伝播速度baPWV,心エコー所見(EF,E/A,DcT,%FS,Dd,Ds,LAD,EDV,ESV,SV),術前・術後臥位SBP,術後座位SBP,術後立位SBPとした。


【結果】

理学療法開始まで1.7±1.3日,術前eGFR:58.1±14.5mL/min/1.73m2,術前Hb:12.9±1.9g/dl,ABI:1.06±0.18/1.04±0.14,baPWV:2011.1±623.3/1955±458.6cm/s,E/A:0.71±0.2であった。術前eGFRと術前・術後Hbに正の相関,術前eGFRとBMI,術後eGFR,BNP,Dd,Ds,EDV,ESV,SVに負の相関がみられた。Stage2・3の比較では,E/Aはstage2で有意な低下がみられ(p<0.05),Hbはstage3で有意な低下がみられた(p<0.05)。Stage2で術前・術後安静臥位SBP・術後座位SBPに比べ術後立位SBPで有意な低下がみられた(p<0.05)。Stage3で術前・術後臥位SBPに比べ術後座位SBPで有意な低下がみられた(p<0.001)。また,術前・術後臥位SBPに比べ術後立位SBPで有意な低下がみられた(p<0.001)。


【結論】

Stage2では立位で血圧低下がみられたが,stage3では臥位から座位への姿勢変化でも血圧低下がみられた。大血管・末梢動脈疾患はCKDを有することが多く,動脈硬化指標であるbaPWVが高値であり内皮機能の低下があると予測される。内皮機能の低下により血管平滑筋の収縮・弛緩が生じにくくなる。動脈硬化が重度となると圧受容器の感受性低下や,大動脈のコンプライアンス低下によるウィンドケッセル効果の減弱がみられる。また,腎機能の低下によりRAS系の機能亢進が生じ安静時の血圧は上昇する。臥位から座位,立位への姿勢変化で下肢への血液灌流が生じ血圧は低下する。正常では圧受容体反射やウィンドケッセル効果により血圧変動は少ないが,CKDのような病態においては大血管・末梢血管ともに動脈硬化による内皮機能の低下から血流速度が速くなり,姿勢変化や運動による血圧変動は大きくなると考えられる。また,CKDでは左室拡張能の低下や貧血がみられたことから,術後の体液バランス,心拍数,酸素化能,脈圧などについても今後検討していきたいと考える。