第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本心血管理学療法学会 一般演題ポスター
心血管P02

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-HT-02-5] 血液透析患者における体液量の変化が呼吸循環動態に及ぼす影響―第1報―

―心肺運動負荷試験による検討―

梅田義之1, 岡部陽介1, 藤山亮太1, 山口華奈1, 田村岳志1, 浅倉恵子2, 岡本威志1, 武居光雄1 (1.医療法人光心会諏訪の杜病院, 2.医療法人光心会どんぐりの杜クリニック)

Keywords:異常呼吸パターン, 心拍応答, 非HD日

【はじめに,目的】

血液透析(HD)患者における体液量の変化が呼吸循環動態に及ぼす影響を検討し,運動療法の最適なタイミングやリスク管理等の一助を得ることを目的とする。

【方法】

対象は慢性腎炎による末期腎不全でHD施行中の33歳男性(HD歴9.5年)。HDデータは標準体重56.5kg,CTR41.4%,Kt/V1.34,nPCR0.80。週末のHDから週始めのHDの期間(2日空き)においてHD直後,非HD日,HD直前の3条件でAE-310S(ミナト医科学(株))にて心肺運動負荷試験(CPX)を実施,呼吸循環動態を評価した。protocolは20W ramp20,end pointは米国心臓病学会の運動負荷試験と運動療法に関するガイドラインに準じた。CPXより得られたデータを基に呼吸パタ-ンの指標として1回換気量-呼吸数(TV-RR)をグラフ化,健常者のパターンと比較検討した。二酸化炭素排泄効率の指標として分時換気量-二酸化炭素排出量(VE-VCO2),循環動態の指標として心拍数-酸素脈(HR-O2pulse),心拍応答の指標として心拍数-酸素摂取量(HR-VO2)を回帰分析し,3条件で比較検討した。

【結果】

CPX前の体重はHD直後56.5kg,非HD日57.5kg,HD直前59.3kg,体重増加率は標準体重に対してHD直後0%,非HD日1.8%,HD直前5.0%であった。

TV-RRは非HD日で健常者の呼吸パターンに類似し,嫌気性代謝閾値(AT)付近まではTV増加,RR減少,AT以降はRR増加傾向であった。HD直後,HD直前はTVとRR増加が不規則であり,特にHD直後で異常呼吸パターンが顕著であった。

VE-VCO2の回帰直線は,HD直後Y=26.855x+2.738,非HD日Y=27.865x+0.223,HD直前Y=26.929x+3.550,同一負荷におけるVE,VCO2はHD直前,HD直後,非HD日の順に高値であった。

HR-O2pulseの回帰直線は,HD直後Y=25.172x-45.420,非HD日Y=16.758x+8.620,HD直前Y=17.413x-4.041,O2pulseはHD直前,非HD日,HD直後,HRはHD直後,非HD日,HD直前の順に高値であった。

HR-VO2の回帰直線は,HD直後Y=0.081x+54.533,非HD日Y=0.070x+60.487,HD直前Y=0.065x+62.924,心拍応答はHD直後,非HD日,HD直前の順に高値であった。

【結論】

HD直前は体液量増加による肺胞周囲の浮腫が肺コンプライアンス低下を招き,換気受容体の亢進や自律神経系の機能低下により異常呼吸パターンを呈し,VE,VCO2の増加に繋がったものと推測される。

HD直後は溢水状態は改善し血管内の水分は減少したが,肺胞周囲の浮腫の残存による肺コンプライアンス低下や換気受容体の亢進等の要因で異常呼吸パターンを呈したものと推測される。心拍応答の増加は,1回拍出量減少による心拍出量減少の代償反応,自律神経系の機能低下の影響と推測される。

非HD日は体液量の増加が1.0kgと少なく前回のHDから37時間程経過している為,呼吸循環器系への負担が軽減し,VE,VCO2が適正に保たれ,異常呼吸パターンの改善,心拍応答の正常化に繋がったものと推測される。

運動療法のタイミングは,呼吸循環動態が安定している非HD日が最適である可能性が示唆された。