[P-HT-03-1] 心拍数を低下させる薬剤内服患者における新たな心拍処方法確立の試み
キーワード:心臓リハビリテーション, 心拍処方, AT-restHR
【はじめに,目的】心疾患患者における心臓リハビリテーション(心リハ)は運動耐容能の改善をはじめとした多面的効果をもたらし,患者の生命予後を改善する。心リハの中心は運動療法であるが,患者に適切な強度の有酸素運動を処方するために,心肺運動負荷試験(CPX)を行うのが望ましいとされている。CPXが実施できない場合の運動処方法にKarvonen法や安静時の心拍数(HR)からの上昇値による処方があるが,β遮断薬やジルチアゼム,ベラパミルといったHRを低下させる薬剤の内服患者では運動中のHRを高く見積もってしまう恐れがある。本研究ではこれらの患者に対し,CPXを用いずに,心臓超音波検査の指標を主に用いて新たな処方法の確立を試みた。
【方法】対象は,当院心リハに参加した心疾患患者のうち,CPXと心臓超音波検査を実施した156名(男性109名,女性47名,平均年齢70.1±9.5歳,狭心症101名,心筋梗塞41名,心不全12名,急性大動脈解離2名)とした。CPXの負荷プロトコールは,3分間の安静後,10wattで3分間のwarm up(wu),その後毎分10watt増加するramp負荷とした。方法①:β遮断薬,ジルチアゼム,ベラパミルの内服患者と非内服患者の2群に分類し,CPX中のHR(rest,wu,AT,Peak)をそれぞれ比較した。②:安静からATへのHR変化(AT-restHR)に着目し,その中央値を境に高値群と低値群に分類した。2群間で上記薬剤の内服状況,心臓超音波指標を調査し比較した。③:上記薬剤の内服患者63名において,AT-restHRと心臓超音波指標,安静からATへのHRの変化(wu-restHR),年齢の関連をそれぞれ調査した。④:AT-restHRを従属変数,③で関連を認めたDct,Evel,E'vel,wu-restHRを説明変数とし,ステップワイズ法による重回帰分析を行った。統計解析はR2.8.1を使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】①AT,Peak時HRは,内服患者の方が有意に低値であった(AT:90.8±15.5 bpm vs 94.9±14.1 bpm, Peak:109.8±20.6 bpm vs 115.8±16.1bpm)。②AT-restHRの中央値は24bpmであり,2群間での内服患者の内訳は有意な差を認めなかった。さらにβ遮断薬の1日投与量についても両群間で有意な差を認めなかった。③内服患者では,AT-restHRとDct(p=0.01,rs=-0.32),Evel(p=0.03,rs=0.27),E'vel(p=0.003,rs=0.36),wu-restHR(p<0.001,rs=0.72)の間に相関を認めた。④Dctとwu-restHRが抽出され,重回帰式はAT-restHR=15.3-33.8×Dct+0.98×wu-restHRであり,自由度調整済み決定係数は0.633であった。
【結論】HRを低下させる薬剤の内服患者では非内服患者に比べATHR,PeakHR,AT-restHRが低かったが,それら薬剤の1日量とAT-restHRの関連は低く,これには薬剤以外の他要因も影響している事が示唆された。その因子としてCPXにおける安静からwuまでのHR増加応答,左室拡張機能の指標であるDctが抽出され,それらによりAT-restHRを算出する事で,CPXが使用できない場合でもHR処方ができる事が示唆された。
【方法】対象は,当院心リハに参加した心疾患患者のうち,CPXと心臓超音波検査を実施した156名(男性109名,女性47名,平均年齢70.1±9.5歳,狭心症101名,心筋梗塞41名,心不全12名,急性大動脈解離2名)とした。CPXの負荷プロトコールは,3分間の安静後,10wattで3分間のwarm up(wu),その後毎分10watt増加するramp負荷とした。方法①:β遮断薬,ジルチアゼム,ベラパミルの内服患者と非内服患者の2群に分類し,CPX中のHR(rest,wu,AT,Peak)をそれぞれ比較した。②:安静からATへのHR変化(AT-restHR)に着目し,その中央値を境に高値群と低値群に分類した。2群間で上記薬剤の内服状況,心臓超音波指標を調査し比較した。③:上記薬剤の内服患者63名において,AT-restHRと心臓超音波指標,安静からATへのHRの変化(wu-restHR),年齢の関連をそれぞれ調査した。④:AT-restHRを従属変数,③で関連を認めたDct,Evel,E'vel,wu-restHRを説明変数とし,ステップワイズ法による重回帰分析を行った。統計解析はR2.8.1を使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】①AT,Peak時HRは,内服患者の方が有意に低値であった(AT:90.8±15.5 bpm vs 94.9±14.1 bpm, Peak:109.8±20.6 bpm vs 115.8±16.1bpm)。②AT-restHRの中央値は24bpmであり,2群間での内服患者の内訳は有意な差を認めなかった。さらにβ遮断薬の1日投与量についても両群間で有意な差を認めなかった。③内服患者では,AT-restHRとDct(p=0.01,rs=-0.32),Evel(p=0.03,rs=0.27),E'vel(p=0.003,rs=0.36),wu-restHR(p<0.001,rs=0.72)の間に相関を認めた。④Dctとwu-restHRが抽出され,重回帰式はAT-restHR=15.3-33.8×Dct+0.98×wu-restHRであり,自由度調整済み決定係数は0.633であった。
【結論】HRを低下させる薬剤の内服患者では非内服患者に比べATHR,PeakHR,AT-restHRが低かったが,それら薬剤の1日量とAT-restHRの関連は低く,これには薬剤以外の他要因も影響している事が示唆された。その因子としてCPXにおける安静からwuまでのHR増加応答,左室拡張機能の指標であるDctが抽出され,それらによりAT-restHRを算出する事で,CPXが使用できない場合でもHR処方ができる事が示唆された。