第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本心血管理学療法学会 一般演題ポスター
心血管P03

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-HT-03-2] 虚血性心疾患患者における服薬の種類と運動機能面の相違

蓮沼雄人 (辻内科循環器科歯科クリニック)

Keywords:虚血性心疾患, 服薬の種類, 運動機能

【はじめに,目的】

虚血性心疾患患者はβ遮断薬と利尿剤が一般的に使用されているが,運動療法を処方され心肺運動負荷試験(以下,CPX)を実施する際に,服薬の違いによる運動機能に相違があるのではないかと考えている。利尿剤は,体液の貯留により前負荷が増大する事を抑制する為に処方され,β遮断薬は心筋収縮力の低下などを起こし酸素消費量を減らすことで効果を発揮する。この2種類の薬剤は共に代表的な治療であるが心臓リハビリテーション(以下,心臓リハ)を実施する際には薬剤効果を予想した上でプログラムを立案する事が望ましい。今回は,利尿剤とβ遮断薬をそれぞれ単独で処方されている患者の心臓リハ開始時の身体機能について検討する事を目的とした。

【方法】

心臓リハの処方を受けた患者で,CPXが実施可能であった虚血性心疾患患者29名(男性20,女性9名)を対象とした。対象は,利尿剤だけを処方されている患者(以下,利尿剤群)とβ遮断薬だけを処方されている患者(以下,β遮断薬群)に群分けし,それぞれの群間で心臓リハ実施前の運動機能面についての比較検討を実施した。測定時の両群の心臓機能として,左室駆出率では利尿剤群は56%,β遮断薬群は55%と統計学的有意差は認めなかった。測定項目は,心臓リハ開始前の最大酸素摂取量を算出した。また,運動機能として6分間歩行距離(以下,6MD),5m最大歩行速度・Timed up and go test(以下,TUG)・Chair Standing-30(以下,CS-30)とした。統計的手法として,両群における運動機能の差についてMann-Whitney's U testを実施し,有意確立は5%未満とした。

【結果】

結果は,利尿剤群,β遮断薬群の順に記載する。最大酸素摂取量では10.86±3.30ml/kg/min,17.125±5.38 ml/kg/min,6MDでは294.2±105.8m,379.0±113.2m,5m最大歩行速度では4.59±1.07秒,2.8±1.40秒,TUGでは11.18±2.82秒,6.16±3.53秒,CS-30では10.8±1.22回,14.5±3.69回と全ての項目においてβ遮断薬群が有意に高値を示した。

【結論】

虚血性心疾患患者に対するβ遮断薬の使用は,運動療法を開始する前段階における運動耐容能と運動機能に効果的な作用をもたらしている事が示唆された。β遮断薬の作用機序は,心拍数減少に伴う心筋消費エネルギーを節約し,末梢筋骨格系の機能を働かせるという効果である。利尿剤による心臓前負荷の減少も効果をもたらすものであるが,今回の検討ではβ遮断薬群の方が機能向上は期待出来ていた。共に運動機能を向上させる治療であるが,末梢効果としてはβ遮断薬の方が機能の改善が得られやすい事が示唆された。今後は,その効果も含めて継続的に検討する事が必要である。