第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本心血管理学療法学会 一般演題ポスター
心血管P03

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-HT-03-3] 低左心機能でディコンディショニングが強い心不全患者の体重増加に対して,体組成評価で心不全兆候の確認や生活指導に役立てることができた一症例

中野善之1, 服部鏡子2, 鷲田幸一2, 岡永幸平1, 福田由香1, 有年徳成1, 山田典夫1, 谷口良司3 (1.兵庫県立尼崎総合医療センターリハビリテーション部, 2.兵庫県立尼崎総合医療センター看護部, 3.兵庫県立尼崎総合医療センター循環器内科)

Keywords:心停止蘇生後, 体組成計, 骨格筋量

【はじめに・目的】人工呼吸器管理,全身炎症,筋不動化,ベッド上安静等でディコンディショニングをきたした症例は,退院時十分筋肉量の改善がみられず退院する。低左心機能を呈した心不全症例の体重増加が心不全悪化によるものか,骨格筋量または脂肪量の増加によるものか確信できないことがある。今回,重症肺炎,心停止蘇生後症例において,体組成評価で退院後の体重増加要因が推測でき,患者の生活指導にも役立てることができたので報告する。

【症例提示】40歳台男性,164cm,84kg。会社員で日常生活自立。両側肺炎により入院し,翌日人工呼吸器管理された。4病日に急性心筋梗塞で心停止し,経皮的心肺補助装置(PCPS),大動脈内バルーンパンピング(IABP),体外式膜型人工肺(ECMO)を導入(peakCPK11972IU/l,BNP1289pg/ml)。6病日にPCPS,8病日にIABP,ECMOを離脱。13病日より病棟リハビリ開始。段階的に離床を進め,34病日に人工呼吸器離脱,64病日に独歩で退院した(退院時体重70.7kg)。退院時,BNP333pg/ml,左室駆出率29%,弁膜症は見られなかった。体組成計(InBody社製InBody720)での骨格筋量(筋量/体重に対する発達率)は右上肢(2.31kg/77.6%),左上肢(2.17kg/73.1%),体幹(19.8kg/83.7%),右下肢(6.42kg/77.6%),左下肢(6.52kg/78.9%)と低下,体脂肪量は29.1kg(41.1%)と高値を示した。浮腫の指標となるEWC/TBWは0.394と正常上限であった。

退院後,復職までの1か月は週1~2回,復職後は1~2か月に1回の外来心臓リハビリ(以下,心リハ)介入となった。内容はATレベルの有酸素運動,レジスタンストレーニングに加え,心不全・心筋梗塞再発予防指導,運動耐容能改善に合わせた通勤方法を検討,内服方法の提案,日常の運動指導,栄養指導を行った。

【経過と考察】心リハ実施5か月間,心疾患による再入院はなく経過した。体重は増加(70.7kg→76.8kg)し,骨格筋量の増加(右上肢2.31kg→3.17kg,左上肢2.17kg→2.98kg,体幹19.8kg→24.6kg,右下肢6.42kg→8.05kg,左下肢6.52kg→8.02kg),体脂肪量の減少(29.1kg→28.2kg)を認めた。EWC/TBWは0.382と正常範囲で推移した。採血データは,BNP333→132pg/mlと改善傾向を示した。

体重は退院後に大幅増加したが,骨格筋量も増加し,細胞外水分量の増加はみられなかった。これは,退院後も運動耐容能に合わせた活動・運動療法を実施できたからだと考える。入院中著明に骨格筋量が低下した症例は,退院後に体重増加し続ける可能性がある。その場合,心リハ中の評価に加え,体組成を測定することは有効であると考える。

【まとめ】重症肺炎,心停止蘇生後心不全患者の体重増加について,体組成評価も行った。5か月間で骨格筋量の増加,体脂肪量の減少がみられ,心疾患増悪はなかった。心リハにおいて体組成評価は,体重増加の要因を推測でき,その後の生活指導にも役立てることができる。