第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本心血管理学療法学会 一般演題ポスター
心血管P07

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-HT-07-4] 蘇生教育の心理的側面への影響 第二報

―関心と自信の経時的変化―

加藤太郎 (文京学院大学)

キーワード:心肺蘇生法, 心理的側面, 経時的変化

【目的】

本学1年次の一次救命処置(Basic Life Support;以下BLS)の授業について,理学療法学科学生(以下学生)への蘇生教育の効果を実際の行動に関する心理的側面(以下心理的側面)から検証し,第一報で報告した。「BLSに対する関心があるか(以下関心)」について,また「目の前で人が倒れたら近づいて声をかけられるか(以下初動)」と「目の前で人が倒れたら適切な行動ができるか(以下実施)」における「できる自信」について,授業履修後にそれぞれ有意に向上した。先行研究ではBLS技術(以下技術)は学習後,経時的に低下するとされる。しかし,心理的側面の経時的変化はどうであろうか。本研究は,BLS学習後の心理的側面の経時的変化を明らかとすることを目的とした。


【方法】

本学学生(現2年生)86名を対象とし,質問紙調査を実施した。調査項目は関心,初動,実施の3項目とした。各項目は5段階とし,関心は5ある,4ややある,3どちらともいえない,2あまりない,1ないとした。初動と実施は5できる,4ややできる,3どちらともいえない,2あまりできない,1できないとした。さらに追加調査として,対象のうち無作為に抽出した36名にBLSを1度だけ実践させ技術を確認させた後,同質問紙調査を実施した。本調査の1年前に得た授業履修後の回答(以下履修後)と本調査で得た回答(以下1年後),追加調査で技術確認後に得た回答(以下確認後)について,各群を比較検討した。統計処理は分散分析(Kruskal-Wallis検定)および多重比較(Bonferroni検定)を用いて分析検討し,有意水準は5%とした。統計解析は,SPSS ver.21.0J for Windowsを使用した。


【結果】

結果を中央値(四分位範囲)で示した。履修後は関心5(5-5),初動5(4-5),実施4(4-5)であった。1年後は関心5(4-5),初動4(3-5),実施4(3-4)であった。確認後は関心5(4-5),初動4(3-4.75),実施2(2-3)であった。関心と初動は,履修後に比べ1年後と確認後は有意に低かった(p<0.05)。実施は,各群間全てに有意差を認め,確認後が最も低かった(p<0.05)。


【結論】

本研究により,BLS学習後の心理的側面の経時的変化が明らかとなった。履修後と比較し1年後は初動,実施において低くなったが,これは仮説よりも高い結果だった。経時的に技術は低下する先行研究から,技術が低下していることに対象自身が気付いていないと考えた。追加調査の技術確認後は,実施において履修後,1年後より低くなった。これは,技術の低下に気付いたことが要因となったと考える。対象自身が技術をできると捉えていることは,継続学習の阻害因子となり得る。技術の継続学習のためには,定期的な技術評価の場が気付きを与えると考えられる。