[P-KS-02-1] ハムストリングス短縮の評価法の検討
骨盤の動きに着目して
キーワード:ハムストリングス, 骨盤, 評価
【はじめに,目的】
ハムストリングスの短縮の評価には下肢伸展挙上(以下,SLR)テスト,膝伸展テストなどが用いられる。SLRテスト時には骨盤が後傾するため,見かけ上のSLR角度ではハムストリングス短縮の評価法として妥当性が低い可能性がある。膝伸展テストでは膝伸展運動の様式や股関節屈曲保持方法などの条件を変えたときの骨盤の傾斜角度については明らかになっていない。本研究は健常成人を対象として,SLRテストと膝伸展テストにおける運動様式を変えたときの骨盤後傾角度の違いを明らかにすることを目的とした。研究仮説:自動運動での膝伸展テスト時,骨盤の後傾が少ない。
【方法】
被験者は健常な学生20名とし,右下肢を対象に背臥位でのSLRテストと膝伸展テストが行われた。皮膚上から骨盤(左右上後腸骨棘の高さで正中仙骨稜上)に傾斜角度計が取り付けられた。傾斜角度計はSLRテスト時には右下肢の大腿前面に,膝伸展テスト時には右下肢の脛骨前面にそれぞれ取り付けられた。全ての実験は測定用ベッド上で行われた。
1)SLRテスト
背臥位を開始肢位とし,この肢位での骨盤傾斜角度が記録された。テスト最終域でのSLR角度と骨盤傾斜角度が記録された。測定は5回行われた。測定条件は運動様式の違い(自動,他動)と骨盤・対側下肢の固定の有無の合計4条件とした。
2)膝伸展テスト
背臥位で股関節及び膝関節90°屈曲位を開始肢位とし,この肢位での骨盤傾斜角度が記録された。テスト最終域での膝伸展角度と骨盤傾斜角度が記録された。測定は5回行われた。測定条件は股関節屈曲保持方法の違い(自動,他動),運動様式の違い(自動,他動),骨盤・対側下肢の固定の有無の合計8条件とした。
両テストともに骨盤の傾斜角度はテスト開始肢位から最終域までの角度変化量とした。
統計処理:SLRテストでは2元配置,膝伸展テストでは3元配置の分散分析を行い,その後多重比較検定を行った。同条件でのテスト間の比較は対応のあるt検定を用いた。有意水準はそれぞれ0.05未満とした。
【結果】
SLRテスト,膝伸展テストともに運動様式(自動,他動)と骨盤・対側下肢の固定の有無について交互作用が認められず,それぞれに主効果が認められた。股関節屈曲保持方法の違い(自動,他動)については主効果が認められなかった。SLRテスト,膝伸展テストのそれぞれで,骨盤角度変化量が最も小さかったのは,いずれも自動運動,骨盤・対側下肢の固定あり条件であり(SLR4.2±2.7°,膝伸展0.6±2.1°),他動運動条件での値(SLR11.0±3.8°,膝伸展3.4±1.6°)よりも有意に小さかった。自動運動,骨盤・対側下肢の固定あり条件でのSLRテストと膝伸展テストにおける骨盤角度変化量は膝伸展テストでの値が有意に小さかった。
【結論】
本研究の結果より,自動運動での膝伸展テストが,臨床で多く用いられている他動でのSLRテストよりもハムストリングスの短縮の評価法として妥当性が高いことが明らかとなった。
ハムストリングスの短縮の評価には下肢伸展挙上(以下,SLR)テスト,膝伸展テストなどが用いられる。SLRテスト時には骨盤が後傾するため,見かけ上のSLR角度ではハムストリングス短縮の評価法として妥当性が低い可能性がある。膝伸展テストでは膝伸展運動の様式や股関節屈曲保持方法などの条件を変えたときの骨盤の傾斜角度については明らかになっていない。本研究は健常成人を対象として,SLRテストと膝伸展テストにおける運動様式を変えたときの骨盤後傾角度の違いを明らかにすることを目的とした。研究仮説:自動運動での膝伸展テスト時,骨盤の後傾が少ない。
【方法】
被験者は健常な学生20名とし,右下肢を対象に背臥位でのSLRテストと膝伸展テストが行われた。皮膚上から骨盤(左右上後腸骨棘の高さで正中仙骨稜上)に傾斜角度計が取り付けられた。傾斜角度計はSLRテスト時には右下肢の大腿前面に,膝伸展テスト時には右下肢の脛骨前面にそれぞれ取り付けられた。全ての実験は測定用ベッド上で行われた。
1)SLRテスト
背臥位を開始肢位とし,この肢位での骨盤傾斜角度が記録された。テスト最終域でのSLR角度と骨盤傾斜角度が記録された。測定は5回行われた。測定条件は運動様式の違い(自動,他動)と骨盤・対側下肢の固定の有無の合計4条件とした。
2)膝伸展テスト
背臥位で股関節及び膝関節90°屈曲位を開始肢位とし,この肢位での骨盤傾斜角度が記録された。テスト最終域での膝伸展角度と骨盤傾斜角度が記録された。測定は5回行われた。測定条件は股関節屈曲保持方法の違い(自動,他動),運動様式の違い(自動,他動),骨盤・対側下肢の固定の有無の合計8条件とした。
両テストともに骨盤の傾斜角度はテスト開始肢位から最終域までの角度変化量とした。
統計処理:SLRテストでは2元配置,膝伸展テストでは3元配置の分散分析を行い,その後多重比較検定を行った。同条件でのテスト間の比較は対応のあるt検定を用いた。有意水準はそれぞれ0.05未満とした。
【結果】
SLRテスト,膝伸展テストともに運動様式(自動,他動)と骨盤・対側下肢の固定の有無について交互作用が認められず,それぞれに主効果が認められた。股関節屈曲保持方法の違い(自動,他動)については主効果が認められなかった。SLRテスト,膝伸展テストのそれぞれで,骨盤角度変化量が最も小さかったのは,いずれも自動運動,骨盤・対側下肢の固定あり条件であり(SLR4.2±2.7°,膝伸展0.6±2.1°),他動運動条件での値(SLR11.0±3.8°,膝伸展3.4±1.6°)よりも有意に小さかった。自動運動,骨盤・対側下肢の固定あり条件でのSLRテストと膝伸展テストにおける骨盤角度変化量は膝伸展テストでの値が有意に小さかった。
【結論】
本研究の結果より,自動運動での膝伸展テストが,臨床で多く用いられている他動でのSLRテストよりもハムストリングスの短縮の評価法として妥当性が高いことが明らかとなった。