[P-KS-05-3] 高周波温熱療法Capacitive and Resistive Electric Transferが筋組織内循環動態,筋温及び軟部組織柔軟性に与える影響
キーワード:高周波温熱, 近赤外線分光法, 筋組織内血流
【はじめに,目的】
近年,筋を始めとした軟部組織の柔軟性を改善させる手段の一つとして高周波温熱療法Capacitive and Resistive Electric Transfer(以下CRet)が注目されており,疼痛緩和や組織修復の促進などの効果に関する報告がなされている。これらの効果には酸素供給を含めた血液循環動態の促進が重要であるが,CRetが筋組織内循環動態や筋温に及ぼす影響については報告されていない。これを検討することで,スポーツ選手に好発し,筋の柔軟性低下が発生の一要因となる大腿二頭筋肉離れの予防及び治療や筋疲労の回復促進などへの活用が期待できる。よって本研究の目的はCRetが筋組織内循環動態,筋温及び軟部組織柔軟性に及ぼす影響について詳細に検討することとした。
【方法】
対象は健常成人10名とし,同一被験者に対し3条件の介入実験を行った。測定及び介入部位は右大腿二頭筋とした。介入方法はCRet条件,ホットパック(以下HP)条件,sham(高周波照射なし)条件とし比較検討した。CRet条件はINDIBAⓇ active ProRecoveryを使用し,HP条件は湿熱法で各々15分間大腿後面に施行した。sham条件は機器の電源を入れずに,その他の条件はCRet条件と同様の方法で行った。測定項目は,近赤外線分光法(NIRS)にて総ヘモグロビン(Total-Hb),酸化ヘモグロビン量(Oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン量(Deoxy-Hb)を測定した。また皮下10mの深部温(DT-10mm),表面温(surface temperature:ST)及びStraight Leg Raise(SLR)を測定した。Total-Hb,Oxy-Hb,Deoxy-Hb,DT-10mm及びSTは介入5分前と介入直後から30分後まで5分毎に測定し,SLRは介入5分前,介入直後,15分後,30分後の計4回測定した。統計解析は介入方法と測定時間を2要因とする反復測定による二元配置分散分析を行った後に多重比較(sidak法)を実施した。
【結果】
Total-Hb,Oxy-Hb,DT-10mm,ST及びSLRにおいて交互作用を認めた(P<0.05)。多重比較の結果ではCRet条件とHP条件がsham条件と比較しDT-10mm,ST及びOxy-Hbが介入直後から30分後まで有意に高値を示した(P<0.05)。さらに,CRet条件のみがSLRに関して介入直後から30分後までsham条件よりも有意に高値を示した(P<0.05)。また,CRet条件とHP条件を比較した場合,各測定項目に有意な差は認められなかったが,Total-Hb,Oxy-Hb,DT-10mm,ST及びSLRは介入直後から30分後までCRet条件の変化量の方が高い傾向であった。
【結論】
本研究の結果,HPと同様にCRetは持続的に筋組織内の循環動態及び酸素供給を促進する効果が示され,疼痛緩和や組織修復の促進に作用する可能性が示唆された。またCRetは持続的に筋組織の柔軟性を改善させる効果が示唆された。CRetとHPの比較では有意な差は認められなかったが,CRetの方が酸素供給や循環動態促進効果が高い傾向にあり,有効な治療手段となりうる可能性が伺えた。
近年,筋を始めとした軟部組織の柔軟性を改善させる手段の一つとして高周波温熱療法Capacitive and Resistive Electric Transfer(以下CRet)が注目されており,疼痛緩和や組織修復の促進などの効果に関する報告がなされている。これらの効果には酸素供給を含めた血液循環動態の促進が重要であるが,CRetが筋組織内循環動態や筋温に及ぼす影響については報告されていない。これを検討することで,スポーツ選手に好発し,筋の柔軟性低下が発生の一要因となる大腿二頭筋肉離れの予防及び治療や筋疲労の回復促進などへの活用が期待できる。よって本研究の目的はCRetが筋組織内循環動態,筋温及び軟部組織柔軟性に及ぼす影響について詳細に検討することとした。
【方法】
対象は健常成人10名とし,同一被験者に対し3条件の介入実験を行った。測定及び介入部位は右大腿二頭筋とした。介入方法はCRet条件,ホットパック(以下HP)条件,sham(高周波照射なし)条件とし比較検討した。CRet条件はINDIBAⓇ active ProRecoveryを使用し,HP条件は湿熱法で各々15分間大腿後面に施行した。sham条件は機器の電源を入れずに,その他の条件はCRet条件と同様の方法で行った。測定項目は,近赤外線分光法(NIRS)にて総ヘモグロビン(Total-Hb),酸化ヘモグロビン量(Oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン量(Deoxy-Hb)を測定した。また皮下10mの深部温(DT-10mm),表面温(surface temperature:ST)及びStraight Leg Raise(SLR)を測定した。Total-Hb,Oxy-Hb,Deoxy-Hb,DT-10mm及びSTは介入5分前と介入直後から30分後まで5分毎に測定し,SLRは介入5分前,介入直後,15分後,30分後の計4回測定した。統計解析は介入方法と測定時間を2要因とする反復測定による二元配置分散分析を行った後に多重比較(sidak法)を実施した。
【結果】
Total-Hb,Oxy-Hb,DT-10mm,ST及びSLRにおいて交互作用を認めた(P<0.05)。多重比較の結果ではCRet条件とHP条件がsham条件と比較しDT-10mm,ST及びOxy-Hbが介入直後から30分後まで有意に高値を示した(P<0.05)。さらに,CRet条件のみがSLRに関して介入直後から30分後までsham条件よりも有意に高値を示した(P<0.05)。また,CRet条件とHP条件を比較した場合,各測定項目に有意な差は認められなかったが,Total-Hb,Oxy-Hb,DT-10mm,ST及びSLRは介入直後から30分後までCRet条件の変化量の方が高い傾向であった。
【結論】
本研究の結果,HPと同様にCRetは持続的に筋組織内の循環動態及び酸素供給を促進する効果が示され,疼痛緩和や組織修復の促進に作用する可能性が示唆された。またCRetは持続的に筋組織の柔軟性を改善させる効果が示唆された。CRetとHPの比較では有意な差は認められなかったが,CRetの方が酸素供給や循環動態促進効果が高い傾向にあり,有効な治療手段となりうる可能性が伺えた。