第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P05

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-05-4] 筋疲労に対する渦流浴の回復効果に関する検討

永井杏亮1, 坂野裕洋1, 豊田愼一2, 渡辺将弘3, 柳瀬準4, 内川智貴5 (1.日本福祉大学健康科学部, 2.星城大学リハビリテーション学院, 3.東海記念病院リハビリテーション科, 4.前原外科・整形外科小児科リハビリテーション科, 5.前原整形外科リハビリテーションクリニックリハビリテーション科)

Keywords:渦流浴, 筋疲労, 回復効果

【はじめに,目的】骨格筋は,スポーツ等の激しい身体活動によって疲労し,最大発揮筋力や筋力発揮時間などの筋パフォーマンスが低下する。一方,温浴や冷浴,炭酸泉浴などの渦流浴は,筋疲労の回復を目的に身体活動後にしばしば用いられる物理療法のひとつである。しかしながら,これらの渦流浴が骨格筋の疲労回復に与える効果について比較検討している報告は少ない。そこで,本研究では前脛骨筋を対象に,筋疲労に対する温浴や冷浴,炭酸泉浴の回復効果について比較し,筋疲労回復に最も適した渦流浴の方法について検討した。

【方法】対象筋は,健常大学生40名の右前脛骨筋とし,渦流浴を行わない8名(対照群),不感温度で渦流浴を行う8名(不感温度群),不感温度で炭酸泉浴を行う8名(炭酸群),42℃で渦流浴を行う8名(温熱群),10℃で渦流浴を行う8名(寒冷群)の5群に無作為に振り分けた。実験は安静5分,運動課題,介入20分,運動課題の順に実施した。運動課題は,等尺性最大筋力の50%で右足関節を持続的に背屈させ,筋力を維持出来なくなるまで行わせた。筋疲労の評価は,各運動課題の持続時間(秒)を計測し,1回目の値を100%とした変化率を算出して比較した。また,表面筋電図を用いて運動課題中における前脛骨筋の活動電位を記録し,各運動課題開始直後と終了直前の1秒間の平均振幅,中間周波数,極性変化を求め,1回目の運動課題開始直後の値を100%とした変化率を算出して比較した。統計学的解析は,群内比較にFriedman検定とWilcoxonの符号付順位和検定を用い,群間比較にKruskal-Wallis検定とMann-Whitney検定を用いた。有意水準は5%未満とした。

【結果】運動課題の持続時間では,炭酸群と寒冷群において他群と比較して有意な回復効果を認めた。平均振幅では,炭酸群で有意な回復効果を,寒冷群で有意な回復の遅延を認めた。中間周波数では,温熱群と炭酸群で有意な回復効果を,寒冷群で有意な回復の遅延を認めた。極性変化では,対照群と温熱群,および炭酸群で有意な回復効果を,寒冷群で有意な回復の遅延を認めた。

【結論】本研究結果から,炭酸浴が筋疲労回復に最も適した渦流浴の方法である可能性が示唆された。これは,炭酸泉に含まれる二酸化炭素がもたらすボーア作用や血管拡張作用によって,有酸素系代謝が賦活され,ATP産出量の増加や,疲労物質の流出が促進されるためと推察される。一方,冷浴では筋力発揮時間の回復は期待できるが,筋活動様式をみると平均振幅の増加,中間周波数の徐波化,極性変化におけるターン数の低下といった,疲労時と同様の結果となり回復の遅延が生じていると考えられるため,筋疲労の回復を目的に冷浴を用いる場合には,筋パフォーマンスの持続時間だけでなく筋活動様式を含めた配慮が必要であると考えられる。