第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P05

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-05-5] 筋収縮様式の違いによるメカニカルストレスの変化がEnthesis(腱付着部)に及ぼす影響

黒尾元基1, 国分貴徳2, 村田健児3, 金村尚彦2 (1.医療法人名圭会白岡整形外科リハビリテーション科, 2.埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科, 3.埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科後期課程)

Keywords:Enthesis, メカニカルストレス, 付着部症

【はじめに,目的】

理学療法領域において,Enthesisの付着部症は非常に高頻度で認められる。また,Enthesisは神経・血管に乏しく修復能力は極めて低いとされ,治癒に難渋することも多い。これに加え,付着部症の発症メカニズムは未だ解明されておらず,治療方針が一貫していないのが現状である。そこで本研究においては,先行研究に基づき,ラットにおける抗重力筋である肩関節棘上筋に対し,異なる筋収縮様式の運動負荷を優先的に与えるモデルを作成し,メカニカルストレスの変化がEnthesisに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。


【方法】

Wistar系白色雄性ラット18匹(3週齢)を対象とした。先行研究に基づき,トレッドミル傾斜角度が0度のLevel群(求心性,遠心性収縮を同程度に負荷),+16度のUp群(求心性収縮を優位に負荷),-16度のDown群(遠心性収縮を優位に負荷)の3群にランダムに分類し,分速18mで60分間,週5日で4週間の走行運動を実施した。介入終了直後,麻酔下にて右肩関節を採取し,固定,脱灰処理後,凍結包埋した。クリオスタットを使用し,棘上筋のEnthesisが観察可能となるように前額面上で厚さ14μmの切片を作成し,Hematoxylin-Eosin染色,Toluidine Blue(以下,TB)染色を実施した。各群6サンプルずつから検鏡によりTB染色後の画像を採取し,画像解析ソフトWinROOFを用いて棘上筋のEnthesisにおける線維軟骨層(以下,FC)と石灰化線維軟骨層(以下,CFC)の面積を測定し,FCにおけるCFCの割合を算出した。層の境界線は,先行研究に基づき細胞形状から断定した。統計解析は一元配置分散分析を実施し,後検定はTukey法を採用した(有意水準5%未満)。


【結果】

各群6サンプルにおいて,FCにおけるCFCの割合の平均値±標準偏差は,Level群40.73±6.57%,Up群34.17±8.84%,Down群41.75±6.20%であった。Up群,Level群,Down群の順にFCにおけるCFCの割合が増加する傾向がみられたが,各群において統計学的な有意差はみられなかった(p>0.05)。


【結論】

統計学的な有意差はみられなかったものの,FCにおけるCFCの割合の増加傾向は,棘上筋腱の付着部に対する負荷量の増加を示す可能性が高い。各群に負荷した運動の特性から,遠心性収縮の割合が増加することがEnthesisに対するメカニカルストレスを増加させた可能性が示唆されたが,今後更なる検証が必要である。本研究は小動物モデルではあるが,臨床上非常に一般的な疾患である筋腱付着部症の発症メカニズムの解明に繋がる可能性があり,今後更なる解明を進めることで,本疾患に対する理学療法介入のエビデンスを確立することに繋がる基礎データを提示できる。