[P-KS-06-1] メジャーを用いた距離測定と頚部関節可動域との関連
~頚部屈曲・伸展・回旋・側屈での検討~
キーワード:ROM測定, 頚部, メジャー
【はじめに,目的】
関節可動域(以下,ROM)測定は,理学療法評価において臨床で最も実施される重要な評価法の一つである。一般的に測定にはゴニオメーターが用いられるが,代償運動や軸の投影など影響も指摘され,測定の妥当性も問題視されている。なかでも頚部ROM測定に関しては,メジャーを用いた頚部ROM測定(以下,メジャー法)が1950年代より紹介されているが,測定の妥当性や信頼性に関する検討は行われていない。本研究の目的は,メジャー法での再現性を検証し,臨床でのメジャー法の有用性を検討することである。
【方法】
対象は健常成人10名(男性5名,女性5名),平均年齢は21.8歳とした。測定課題は他動頚部屈曲,伸展,側屈,回旋運動とし,測定条件はメジャー法,従来からのゴニオメーターでの頚部ROM測定(以下,ゴニオ法),三次元動作解析装置NORAXON社製myomotion EM-M13による計測法(以下,三次元法)の3条件とした。測定の順番は無作為として,各々5回ずつ実施した。測定肢位はプラットホーム上端座位とし,体幹の代償を防ぐため正中位で保持するよう指示した。また,上肢の重みの影響を除外するため,上肢は大腿の上に置かせた。ゴニオ法は東大式ゴニオメーターを使用し,日本整形外科学会の基準を用い測定した。なお,数値は1°単位で読み取り使用した。三次元法は三次元動作解析装置(NORAXON社製 myomotion EM-13)を用い,モーションセンサーを後頭隆起,第7頚椎部,仙骨に貼付して,メジャー法,ゴニオ法の測定時に同時に計測した。メジャー法は,先行研究に準じて屈曲では第7頚椎と後頭隆起間,伸展では胸骨切痕とオトガイ隆起間,側屈では耳垂と肩峰間,回旋ではオトガイ隆起と肩峰間とし,数値は1mm単位で読み取り使用した。統計解析は,検者内信頼性をICC(1.1)にて解析した。
【結果】
メジャー法の検者内信頼性は,頚部屈曲ICC(1.1)=0.98(95%CI;0.964-0.955),頚部伸展ICC(1.1)=0.99(95%CI;0.99-0.998),頚部側屈ICC(1.1)=0.93(95%CI;0.85-0.98),頚部回旋ICC(1.1)=0.97(95%CI;0.94-0.99)と高い再現性が示された。三次元法の検者内信頼性は,頚部屈曲ICC(1.1)=0.96(95%CI;0.91-0.99),頚部伸展ICC(1.1)=0.94(95%CI;0.87-0.98),頚部側屈ICC(1.1)=0.93(95%CI;0.84-0.98),頚部回旋ICC(1.1)=0.86(95%CI;0.72-0.95)と高い再現性が認められた。
【結論】
メジャー法,三次元法ともに頚部関節可動域測定は高い再現性が得られた。ただし,三次元法で頚部回旋のみ低い傾向を示し,この結果には頚部屈曲,側屈の代償の影響している可能性があると考えられた。したがって,測定時には目線を一定にする,顎を引いた状態で実施するなどの注意を払うことにより,より高い再現性が得られる可能性があると考える。今後は頚部回旋の測定方法の再検証,検者間信頼性,有疾患者を対象とした検討が必要であるが,メジャー法は臨床において簡便に行える有用な方法となり得る。
関節可動域(以下,ROM)測定は,理学療法評価において臨床で最も実施される重要な評価法の一つである。一般的に測定にはゴニオメーターが用いられるが,代償運動や軸の投影など影響も指摘され,測定の妥当性も問題視されている。なかでも頚部ROM測定に関しては,メジャーを用いた頚部ROM測定(以下,メジャー法)が1950年代より紹介されているが,測定の妥当性や信頼性に関する検討は行われていない。本研究の目的は,メジャー法での再現性を検証し,臨床でのメジャー法の有用性を検討することである。
【方法】
対象は健常成人10名(男性5名,女性5名),平均年齢は21.8歳とした。測定課題は他動頚部屈曲,伸展,側屈,回旋運動とし,測定条件はメジャー法,従来からのゴニオメーターでの頚部ROM測定(以下,ゴニオ法),三次元動作解析装置NORAXON社製myomotion EM-M13による計測法(以下,三次元法)の3条件とした。測定の順番は無作為として,各々5回ずつ実施した。測定肢位はプラットホーム上端座位とし,体幹の代償を防ぐため正中位で保持するよう指示した。また,上肢の重みの影響を除外するため,上肢は大腿の上に置かせた。ゴニオ法は東大式ゴニオメーターを使用し,日本整形外科学会の基準を用い測定した。なお,数値は1°単位で読み取り使用した。三次元法は三次元動作解析装置(NORAXON社製 myomotion EM-13)を用い,モーションセンサーを後頭隆起,第7頚椎部,仙骨に貼付して,メジャー法,ゴニオ法の測定時に同時に計測した。メジャー法は,先行研究に準じて屈曲では第7頚椎と後頭隆起間,伸展では胸骨切痕とオトガイ隆起間,側屈では耳垂と肩峰間,回旋ではオトガイ隆起と肩峰間とし,数値は1mm単位で読み取り使用した。統計解析は,検者内信頼性をICC(1.1)にて解析した。
【結果】
メジャー法の検者内信頼性は,頚部屈曲ICC(1.1)=0.98(95%CI;0.964-0.955),頚部伸展ICC(1.1)=0.99(95%CI;0.99-0.998),頚部側屈ICC(1.1)=0.93(95%CI;0.85-0.98),頚部回旋ICC(1.1)=0.97(95%CI;0.94-0.99)と高い再現性が示された。三次元法の検者内信頼性は,頚部屈曲ICC(1.1)=0.96(95%CI;0.91-0.99),頚部伸展ICC(1.1)=0.94(95%CI;0.87-0.98),頚部側屈ICC(1.1)=0.93(95%CI;0.84-0.98),頚部回旋ICC(1.1)=0.86(95%CI;0.72-0.95)と高い再現性が認められた。
【結論】
メジャー法,三次元法ともに頚部関節可動域測定は高い再現性が得られた。ただし,三次元法で頚部回旋のみ低い傾向を示し,この結果には頚部屈曲,側屈の代償の影響している可能性があると考えられた。したがって,測定時には目線を一定にする,顎を引いた状態で実施するなどの注意を払うことにより,より高い再現性が得られる可能性があると考える。今後は頚部回旋の測定方法の再検証,検者間信頼性,有疾患者を対象とした検討が必要であるが,メジャー法は臨床において簡便に行える有用な方法となり得る。