第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P06

2016年5月27日(金) 16:30 〜 17:30 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-KS-06-5] 起立動作による持久力の評価方法について

阪本良太1, 嶋田尚徳2 (1.社会医療法人寿楽会大野記念病院, 2.尼崎医療生協病院)

キーワード:持久力, 6分間歩行, 起立動作

【目的】持久力を評価する方法として,6分間歩行距離(6MD)がよく用いられる。ただその測定には30mの歩行路など広いスペースが必要になり,クリニックやデイケアなど限られたスペースしかない場合,測定に難渋することも少なくない。また痛みや麻痺などで歩行が困難な場合には測定が困難になる。そこで,省スペースで障害の度合いに出来るだけ左右されない持久力を測定する方法が必要と考え,膝関節が60°屈曲位になるように座面高を高くした状態での3分間起立テスト(3MS)を考案した。この研究の目的は,6MDと,30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30),および3MSとの関係性を確認し,3MSの持久力の評価方法としての妥当性を検討することである。


【方法】対象は,当院でリハビリテーションを受けた患者46名である。平均年齢は75.0歳±9.8歳,男性16名,女性30名であった。対象者に対し,6MDは6分間の歩行距離,3MSは3分間の起立回数,CS-30は30秒間の起立回数を計測した。またそれぞれの計測後のBorg指数,脈拍を計測した。脈拍については,カルボーネン法の計算式から運動強度の推定値を算出しデータとして採用した。比較検討として,6MD,3MS,CS-30で得られた値について,Pearsonの相関係数を用いてそれぞれの間の関係性の分析を行った。また6MD,3MS,CS-30におけるBorg指数,運動強度の推定値について,分散分析およびBonferroniの多重比較検定にて比較を行った。有意水準は5%とした。


【結果】対象者の6MD,3MS,CS-30のそれぞれの平均値の値は,252.8±112.2m,64.1±24.8回,7.9±4.5回であった。6MDと3MSとの間の相関係数は0.822であり,強い相関が認められた。6MDとCS-30との間の相関係数は0.673であり,中等度の相関が認められた。3MSとCS-30の間の相関係数は0.732であり,強い相関が認められた。6MD,3MS,CS-30におけるBorg指数については,13.0±2.1,13.1±2.0,12.1±2.0であり,6MDおよび3MSに比べてCS-30が有意(p<0.01)に低かった。運動強度の推定値については,39.5±18.7%,39.4±17.5%,23.3±13.3%であり,6MDおよび3MSに比べてCS-30が有意(p<0.01)に低かった。


【結論】今回の結果から,6MDと3MSとの間の相関は非常に高く,自覚的運動強度,脈拍から算出した運動強度の推定値にも差がみられなかったことから,3MSの持久力評価法としての妥当性が示唆された。起立動作を利用した作業成績を評価する方法としてCS-30があり,持久力の指標として用いた報告もみられるが,今回の結果からは3MSに比べて6MDとの相関は低く,自覚的運動強度,脈拍から算出した運動強度の推定値も低かったことから,その持久力評価法としての妥当性は低いと考えられた。以上から,今回考案した膝関節が60°屈曲位になるように座面高を高くした状態での3分間起立テストは,限られた環境の中で簡便に実施できる持久力評価法として有用な方法だと考えた。