[P-KS-08-2] 経頭蓋直流電気刺激の刺激極性が膝関節最大伸展筋力および筋出力制御能力に与える影響
Keywords:経頭蓋直流電気刺激, 刺激極性, 筋機能
【はじめに,目的】
経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation:以下tDCS)は頭皮上に設置した電極から微弱な直流電流を一定時間流すことで,非侵襲的に皮質活動の興奮性を強化または減弱することが可能とされている。一次運動野(以下M1)直上へ陽極電極を設置するAnodal tDCSでは筋力,巧緻性,運動学習の向上などが報告されている。一方,同部位に陰極電極を設置したCathodal tDCSに関しては報告が少なく,未だ一致した見解が得られていない。そこで,本研究の目的はM1へのAnodal tDCS,Cathodal tDCSが最大等速性膝伸展筋力(以下 最大筋力)および膝関節筋出力制御能力(以下 筋制御能力)に与える即時的な影響を明らかにすることである。
【方法】
対象は整形外科疾患の既往のない健常男性5名(平均年齢22.4±2.0歳)とした。刺激条件はAnodal tDCS,Cathodal tDCS,Sham tDCSの3条件を無作為化し3日間に分け,二重盲検法で実施した。tDCSはNeuroConn社製DC Stimulator Plusを用い左M1直上と右眼窩上へ条件に合わせ電極(35cm2)を設置した。刺激強度は1mAとし,Anodal tDCS,Cathodal tDCS時には20分間刺激を継続し,Sham tDCS時には刺激開始30秒後に自動的に電流を停止させた。各試行間での学習効果の影響を避けるため1週間以上の間隔をあけた。tDCSの実施前,実施直後にBIODEX社製バイオデックスシステム4を用い右膝関節の最大筋力と筋制御能力を評価した。最大筋力は角速度60deg/sでの等速性筋力を3回2セット実施し,最大トルクを算出した。筋制御能力は設定された目標筋出力値に近い筋出力を制御する能力とし,角速度60deg/sでの等速性求心収縮にて20Nmを目標筋力値とした。測定前に5分間の練習を行い,方法の確認後5回連続で測定を実施した。また,筋制御の評価として先行研究(Hortobagyi T, et al., 2001)を参考に目標値と実測値との差の絶対値を算出し,角速度60deg/secでの屈曲90°から最終伸展位までの範囲の平均値をForce accuracyとして算出した。
解析は最大筋力,筋制御能力ともにtDCS刺激前後比を求め,3条件間での比較を行った。統計処理として最大筋力を一元配置分散分析後post hoc testとしてBonferroni testを実施し,筋制御能力をFriedman検定にて統計処理を行い,ともに有意水準を5%以下とした。
【結果】
最大筋力は3条件間に統計学的有意差はみられなかった。また,筋制御能力においても3条件間に統計学的有意差はみられなかったが,Anodal tDCSでは5名中4名が刺激後に即時的にForce accuracyは低下(改善)を示し,Cathodal tDCSにおいても刺激後に即時的に5名中4名に上昇(増悪)を示した。
【結論】
本研究結果よりAnodal tDCS,Cathodal tDCSともに最大等速性膝関節伸展筋力への影響は認めなかった。一方で,膝関節筋出力制御能力に関してAnodal tDCSは即時的に制御能力を向上させ,Cathodal tDCSは抑制させる可能性が示唆された。
経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation:以下tDCS)は頭皮上に設置した電極から微弱な直流電流を一定時間流すことで,非侵襲的に皮質活動の興奮性を強化または減弱することが可能とされている。一次運動野(以下M1)直上へ陽極電極を設置するAnodal tDCSでは筋力,巧緻性,運動学習の向上などが報告されている。一方,同部位に陰極電極を設置したCathodal tDCSに関しては報告が少なく,未だ一致した見解が得られていない。そこで,本研究の目的はM1へのAnodal tDCS,Cathodal tDCSが最大等速性膝伸展筋力(以下 最大筋力)および膝関節筋出力制御能力(以下 筋制御能力)に与える即時的な影響を明らかにすることである。
【方法】
対象は整形外科疾患の既往のない健常男性5名(平均年齢22.4±2.0歳)とした。刺激条件はAnodal tDCS,Cathodal tDCS,Sham tDCSの3条件を無作為化し3日間に分け,二重盲検法で実施した。tDCSはNeuroConn社製DC Stimulator Plusを用い左M1直上と右眼窩上へ条件に合わせ電極(35cm2)を設置した。刺激強度は1mAとし,Anodal tDCS,Cathodal tDCS時には20分間刺激を継続し,Sham tDCS時には刺激開始30秒後に自動的に電流を停止させた。各試行間での学習効果の影響を避けるため1週間以上の間隔をあけた。tDCSの実施前,実施直後にBIODEX社製バイオデックスシステム4を用い右膝関節の最大筋力と筋制御能力を評価した。最大筋力は角速度60deg/sでの等速性筋力を3回2セット実施し,最大トルクを算出した。筋制御能力は設定された目標筋出力値に近い筋出力を制御する能力とし,角速度60deg/sでの等速性求心収縮にて20Nmを目標筋力値とした。測定前に5分間の練習を行い,方法の確認後5回連続で測定を実施した。また,筋制御の評価として先行研究(Hortobagyi T, et al., 2001)を参考に目標値と実測値との差の絶対値を算出し,角速度60deg/secでの屈曲90°から最終伸展位までの範囲の平均値をForce accuracyとして算出した。
解析は最大筋力,筋制御能力ともにtDCS刺激前後比を求め,3条件間での比較を行った。統計処理として最大筋力を一元配置分散分析後post hoc testとしてBonferroni testを実施し,筋制御能力をFriedman検定にて統計処理を行い,ともに有意水準を5%以下とした。
【結果】
最大筋力は3条件間に統計学的有意差はみられなかった。また,筋制御能力においても3条件間に統計学的有意差はみられなかったが,Anodal tDCSでは5名中4名が刺激後に即時的にForce accuracyは低下(改善)を示し,Cathodal tDCSにおいても刺激後に即時的に5名中4名に上昇(増悪)を示した。
【結論】
本研究結果よりAnodal tDCS,Cathodal tDCSともに最大等速性膝関節伸展筋力への影響は認めなかった。一方で,膝関節筋出力制御能力に関してAnodal tDCSは即時的に制御能力を向上させ,Cathodal tDCSは抑制させる可能性が示唆された。