[P-KS-10-2] 背臥位における15mmの頭部並進運動が頚椎・上位胸椎動態に及ぼす影響
MRIを用いた二次元解析
キーワード:頭部並進運動, 胸椎, MRI
【はじめに,目的】
頚椎は高い可動性を持ち,逆に胸椎の可動性は比較的制限されているため,頚椎の屈曲・伸展の動きにおいて胸椎は関与していないと認識されている。よって頚椎の屈曲伸展時の骨動態解析の先行研究では第7頚椎を固定したモデルが多い。鷲見らは健常人の頚椎運動を検討し,骨動態には上位胸椎の関与を示唆している。ただし運動課題は頚椎の屈曲伸展運動のみであり,並進運動については言及していない。頚部痛を有する者は作業課題中に頭部前方姿勢となる特徴が報告されており,理学療法士は可動域測定や動作分析において頚椎や胸椎並進運動の評価は重要である。そのため,健常若年者を対象とし,頭部並進運動前後における頚椎と上位胸椎屈曲角度と並進運動距離の基礎的資料を得る目的で骨動態解析を行った。
【方法】
健常人女性10名(24±3.1歳),包含基準は頚肩腕の痛みで過去3ヶ月以内に受診をしていない者とした。東芝MRI Vantage Elan MRT―2020を使用。背臥位にて頭部水平位置を定める為に,鼻尖と外耳孔を結ぶ線がベッドと垂直になる様に規定し撮像した。その後,発砲スチロール製の枕で15mm頭部を並進運動させ,再度撮像した。20mm以上の並進運動では,鼻尖と外耳孔を結ぶ線を保持することが困難となることから15mmと決定した。撮影条件はSE法におけるT1強調画像をTR:550msec,TE:15.0msec,FA:90°により撮像し,スライス厚3mm,FOV:40×25cm,MS:352×352とした。画像データをFUJIボリュームアナライザーSYNAPSE VINCENTで2枚の画像をフュージョンし解析した。椎体測定は第3頚椎から第5胸椎までの各椎体の並進運動距離とした。原画像からフュージョン画像を3枚作成し,平均値を求めた。
【結果】
椎体並進運動距離は頚椎から胸椎の順序で小さくなる傾向にあり,第5胸椎まで僅かではあるが運動が確認された。頭部並進運動において頚椎椎体のみならず第5胸椎椎体まで腹側へ運動を起す群と,頚椎もしくは第5胸椎までのいずれかの椎体レベルで背側に移動する運動群がみられた。
【結論】
上位胸椎は頚椎と,下位胸椎は腰椎と骨形態が類似していくことからも上位胸椎は頚椎と連動して椎体運動がおこると推察される。着目すべきは,胸椎運動方向にある。頚椎は前弯,胸椎は後弯しており,反対方向への弯曲が存在する。つまり頚椎と胸椎の間には前弯から後弯に移行する変曲点が存在すると考えられ,一般的には頭部前方姿勢により,胸椎は後弯するものと考えられている。しかし,今回の結果から,頭部前方姿勢には上位胸椎の前弯(平坦)での姿勢制御パターンも確認された。本結果は脊椎疾患の理学療法の姿勢・動作分析における一助に成り得ると考える。
頚椎は高い可動性を持ち,逆に胸椎の可動性は比較的制限されているため,頚椎の屈曲・伸展の動きにおいて胸椎は関与していないと認識されている。よって頚椎の屈曲伸展時の骨動態解析の先行研究では第7頚椎を固定したモデルが多い。鷲見らは健常人の頚椎運動を検討し,骨動態には上位胸椎の関与を示唆している。ただし運動課題は頚椎の屈曲伸展運動のみであり,並進運動については言及していない。頚部痛を有する者は作業課題中に頭部前方姿勢となる特徴が報告されており,理学療法士は可動域測定や動作分析において頚椎や胸椎並進運動の評価は重要である。そのため,健常若年者を対象とし,頭部並進運動前後における頚椎と上位胸椎屈曲角度と並進運動距離の基礎的資料を得る目的で骨動態解析を行った。
【方法】
健常人女性10名(24±3.1歳),包含基準は頚肩腕の痛みで過去3ヶ月以内に受診をしていない者とした。東芝MRI Vantage Elan MRT―2020を使用。背臥位にて頭部水平位置を定める為に,鼻尖と外耳孔を結ぶ線がベッドと垂直になる様に規定し撮像した。その後,発砲スチロール製の枕で15mm頭部を並進運動させ,再度撮像した。20mm以上の並進運動では,鼻尖と外耳孔を結ぶ線を保持することが困難となることから15mmと決定した。撮影条件はSE法におけるT1強調画像をTR:550msec,TE:15.0msec,FA:90°により撮像し,スライス厚3mm,FOV:40×25cm,MS:352×352とした。画像データをFUJIボリュームアナライザーSYNAPSE VINCENTで2枚の画像をフュージョンし解析した。椎体測定は第3頚椎から第5胸椎までの各椎体の並進運動距離とした。原画像からフュージョン画像を3枚作成し,平均値を求めた。
【結果】
椎体並進運動距離は頚椎から胸椎の順序で小さくなる傾向にあり,第5胸椎まで僅かではあるが運動が確認された。頭部並進運動において頚椎椎体のみならず第5胸椎椎体まで腹側へ運動を起す群と,頚椎もしくは第5胸椎までのいずれかの椎体レベルで背側に移動する運動群がみられた。
【結論】
上位胸椎は頚椎と,下位胸椎は腰椎と骨形態が類似していくことからも上位胸椎は頚椎と連動して椎体運動がおこると推察される。着目すべきは,胸椎運動方向にある。頚椎は前弯,胸椎は後弯しており,反対方向への弯曲が存在する。つまり頚椎と胸椎の間には前弯から後弯に移行する変曲点が存在すると考えられ,一般的には頭部前方姿勢により,胸椎は後弯するものと考えられている。しかし,今回の結果から,頭部前方姿勢には上位胸椎の前弯(平坦)での姿勢制御パターンも確認された。本結果は脊椎疾患の理学療法の姿勢・動作分析における一助に成り得ると考える。