[P-KS-10-3] 踵骨部パッドが胸郭形状に与える影響
足底を壁に接地した背臥位での呼吸運動に着目して
キーワード:胸郭, 踵骨部パッド, 左右差
【はじめに,目的】
胸郭には体幹に関わる多くの筋群が付着し,その形状は体幹機能に関わると考える。臨床では足部への介入が胸郭形状の非対称性の改善につながることがあり,足部と胸郭の関係は重要であると感じる。今回,足底を壁に接地した背臥位で踵骨部パッドの有無が胸郭形状に与える影響を,努力呼吸時の胸郭形状を画像解析することで検証した。
【方法】
対象は,健常男性11名(平均年齢27.5±3.9歳)とした。測定肢位は,足底を壁に接地させた背臥位とした。踵骨部パッドは,片側踵骨底面に2mm板(以下Heel pad)を挿入した。Heel padの挿入は,足部,膝の位置変化が生じないよう十分注意した。胸郭の定義は,上位胸郭を第3肋骨,下位胸郭を第10肋骨とした。マーキングは,第3肋骨と乳頭を通る垂線の交点,第10肋骨前端,腸骨稜に行った。条件は,安静背臥位,左Heel pad,右Heel padの3条件とした。胸郭形状の変化は,各条件で努力呼吸時の胸郭を左右からデジタルカメラ(FUJIFILM社製F770EXR)にて撮影した。デジタルカメラの設置は,ベッド端頭方から50cm尾方,乳頭を通る垂線から左右等距離とした。努力呼吸は,各条件で3回行い,測定間隔は安静呼吸3回とした。画像解析は,各条件で努力呼吸時のマーカの位置変化を画像解析ソフトImage Jを用いて計測した。マーカの移動距離は,体側に10cm定規を置き距離を補正した。データ解析は,平均値を代表値とし,安静背臥位での各マーカの座標を基準として各条件と比較検討した。骨盤の位置変化は,各条件で腸骨稜の座標を比較検討した。統計学的判断は,一元配置分散分析反復測定で主効果を確認後,安静背臥位を基準としたDunnett検定を用いて検討した。解析には,統計ソフトウェアJSTATを使用し,有意水準はそれぞれ5%未満とした。
【結果】
安静背臥位の胸郭形状は,第3肋骨,第10肋骨ともに右側に比べ左側が有意に頭方に位置していた(p<0.01)。胸郭形状の変化は,安静背臥位と比べ右Heel padで右第3肋骨,右第10肋骨が有意に頭方へ位置し(p<0.01),左Heel padで右第3肋骨,左第3肋骨が有意に頭方へ位置した(p<0.05)。胸郭形状の左右差は,右Heel padで第3肋骨,第10肋骨ともに頭尾方向の左右差が有意に減少した(p<0.05)。骨盤の位置変化に有意差はなかった(n.s)。
【結論】
踵骨部パッドの有無で胸郭形状は有意に変化し,その変化には左右差がみられた。胸郭形状の変化の左右差は,安静背臥位の肋骨位置から胸郭は右傾斜位であり,右Heel padでは右傾斜位の助長に対し,胸郭の左傾斜が生じたと考える。左Heel padでは,下位胸郭形状の変化が少ないため下位胸郭の右傾斜位が助長し,それに対し上位胸郭の左傾斜が生じたと考える。今回,踵骨部パッドは胸郭形状の変化に影響を与えることが示唆された。足部への理学療法介入では胸郭に与える影響を考慮し,その影響を知ることは評価の一助になり得る。
胸郭には体幹に関わる多くの筋群が付着し,その形状は体幹機能に関わると考える。臨床では足部への介入が胸郭形状の非対称性の改善につながることがあり,足部と胸郭の関係は重要であると感じる。今回,足底を壁に接地した背臥位で踵骨部パッドの有無が胸郭形状に与える影響を,努力呼吸時の胸郭形状を画像解析することで検証した。
【方法】
対象は,健常男性11名(平均年齢27.5±3.9歳)とした。測定肢位は,足底を壁に接地させた背臥位とした。踵骨部パッドは,片側踵骨底面に2mm板(以下Heel pad)を挿入した。Heel padの挿入は,足部,膝の位置変化が生じないよう十分注意した。胸郭の定義は,上位胸郭を第3肋骨,下位胸郭を第10肋骨とした。マーキングは,第3肋骨と乳頭を通る垂線の交点,第10肋骨前端,腸骨稜に行った。条件は,安静背臥位,左Heel pad,右Heel padの3条件とした。胸郭形状の変化は,各条件で努力呼吸時の胸郭を左右からデジタルカメラ(FUJIFILM社製F770EXR)にて撮影した。デジタルカメラの設置は,ベッド端頭方から50cm尾方,乳頭を通る垂線から左右等距離とした。努力呼吸は,各条件で3回行い,測定間隔は安静呼吸3回とした。画像解析は,各条件で努力呼吸時のマーカの位置変化を画像解析ソフトImage Jを用いて計測した。マーカの移動距離は,体側に10cm定規を置き距離を補正した。データ解析は,平均値を代表値とし,安静背臥位での各マーカの座標を基準として各条件と比較検討した。骨盤の位置変化は,各条件で腸骨稜の座標を比較検討した。統計学的判断は,一元配置分散分析反復測定で主効果を確認後,安静背臥位を基準としたDunnett検定を用いて検討した。解析には,統計ソフトウェアJSTATを使用し,有意水準はそれぞれ5%未満とした。
【結果】
安静背臥位の胸郭形状は,第3肋骨,第10肋骨ともに右側に比べ左側が有意に頭方に位置していた(p<0.01)。胸郭形状の変化は,安静背臥位と比べ右Heel padで右第3肋骨,右第10肋骨が有意に頭方へ位置し(p<0.01),左Heel padで右第3肋骨,左第3肋骨が有意に頭方へ位置した(p<0.05)。胸郭形状の左右差は,右Heel padで第3肋骨,第10肋骨ともに頭尾方向の左右差が有意に減少した(p<0.05)。骨盤の位置変化に有意差はなかった(n.s)。
【結論】
踵骨部パッドの有無で胸郭形状は有意に変化し,その変化には左右差がみられた。胸郭形状の変化の左右差は,安静背臥位の肋骨位置から胸郭は右傾斜位であり,右Heel padでは右傾斜位の助長に対し,胸郭の左傾斜が生じたと考える。左Heel padでは,下位胸郭形状の変化が少ないため下位胸郭の右傾斜位が助長し,それに対し上位胸郭の左傾斜が生じたと考える。今回,踵骨部パッドは胸郭形状の変化に影響を与えることが示唆された。足部への理学療法介入では胸郭に与える影響を考慮し,その影響を知ることは評価の一助になり得る。