[P-KS-10-4] 頭部前方位姿勢が座位における骨盤傾斜角と胸椎角度変化に与える影響
キーワード:頭位, 胸椎, 骨盤傾斜角
【はじめに,目的】
頭部前方位姿勢は加齢に伴う退行変性や,近年のパソコンやスマートフォンの普及により,若年者においても多くみられる姿勢である。頭部前方位に伴う胸腰椎後彎,骨盤後傾姿勢は上半身重心が後方へ移動し,特に高齢者などの立ち上がり動作が困難になることは臨床上よくみられる。一般的には後傾位から骨盤を前傾することにより脊柱の伸展や,重心の前方移動が起こり,スムーズな立ち上がりが可能となるが,高齢者のような頭部前方位姿勢の症例では困難なことが多い。そこで本研究では,頭位の違いが座位での骨盤傾斜角と胸椎角度変化に与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象者は健常成人男性8名(平均年齢28.4±4.6歳)とした。測定前に被験者のTh1,Th4,Th7,Th9,Th12棘突起,上前腸骨棘(以下ASIS),上後腸骨棘(以下PSIS),にマーカーを添付した。測定肢位は足底全面接地にて,骨盤傾斜角0°,膝関節屈曲90°,股関節内外旋中間位の座位とした。また両上肢は胸部前方で組むように指示した。頭部自然位姿勢は耳垂のやや後方からの垂線が肩峰を通り軽く顎を引いた姿勢とし,頭部前方位姿勢は頸部が伸展,屈曲しないように前方へ突出させ,最大頭位前方姿勢となった状態と定義した。動作課題は測定肢位より,頭部自然位と頭部前方位という条件下にて骨盤前傾,胸椎伸展運動を2回ずつ行うように指示を与えた。測定中,目の高さに設置した前方の指標を注視させた。各肢位は被験者の側方からデジタルカメラで撮影した。その後,画像解析ソフト(Scion image)を用いてTh1,Th4,Th7のなす角度(上位胸椎角度),Th7,Th9,Th12のなす角度(下位胸椎角度),Th1,Th7,Th12のなす角度(胸椎角度),ASISとPSISを結ぶ延長線と床面との仮想水平線とが成す角度(骨盤傾斜角)を写真上で測定した。動作課題2回の角度平均値を各被験者で算出し,得られた値より,変化量を求めた。各姿勢の角度変化の比較は,Wilcoxonの符号付順位和検定を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
骨盤前傾,胸椎伸展に伴う角度変化は頭部自然位姿勢では,上位胸椎(4.8±2.4°),下位胸椎(4.1±2.6°),胸椎(7.0±2.9°),骨盤前傾(18.5±3.8°)であった。頭部前方位姿勢では,上位胸椎(2.1±1.7°),下位胸椎(0.1±3.3°),胸椎(2.8±2.3°),骨盤前傾(16.3±4.5°)であった。胸椎角度変化と下位胸椎角度変化は,頭部自然位姿勢と頭部前方位姿勢の間に有意差(p<0.01)が認められ,上位胸椎角度変化と骨盤前傾角度変化は有意差が認められなかった(p>0.05)。
【結論】
本研究の結果から頭部前方位姿勢の方が頭部自然位姿勢に比べ,下位胸椎伸展角度変化と胸椎伸展角度変化が小さく,頭位が脊柱運動に影響をおよぼす可能性が示唆された。坐位における骨盤前傾に伴う胸椎伸展誘導を行う場合,頭部位置を考慮して評価・アプローチを行うことが重要であると考える。
頭部前方位姿勢は加齢に伴う退行変性や,近年のパソコンやスマートフォンの普及により,若年者においても多くみられる姿勢である。頭部前方位に伴う胸腰椎後彎,骨盤後傾姿勢は上半身重心が後方へ移動し,特に高齢者などの立ち上がり動作が困難になることは臨床上よくみられる。一般的には後傾位から骨盤を前傾することにより脊柱の伸展や,重心の前方移動が起こり,スムーズな立ち上がりが可能となるが,高齢者のような頭部前方位姿勢の症例では困難なことが多い。そこで本研究では,頭位の違いが座位での骨盤傾斜角と胸椎角度変化に与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象者は健常成人男性8名(平均年齢28.4±4.6歳)とした。測定前に被験者のTh1,Th4,Th7,Th9,Th12棘突起,上前腸骨棘(以下ASIS),上後腸骨棘(以下PSIS),にマーカーを添付した。測定肢位は足底全面接地にて,骨盤傾斜角0°,膝関節屈曲90°,股関節内外旋中間位の座位とした。また両上肢は胸部前方で組むように指示した。頭部自然位姿勢は耳垂のやや後方からの垂線が肩峰を通り軽く顎を引いた姿勢とし,頭部前方位姿勢は頸部が伸展,屈曲しないように前方へ突出させ,最大頭位前方姿勢となった状態と定義した。動作課題は測定肢位より,頭部自然位と頭部前方位という条件下にて骨盤前傾,胸椎伸展運動を2回ずつ行うように指示を与えた。測定中,目の高さに設置した前方の指標を注視させた。各肢位は被験者の側方からデジタルカメラで撮影した。その後,画像解析ソフト(Scion image)を用いてTh1,Th4,Th7のなす角度(上位胸椎角度),Th7,Th9,Th12のなす角度(下位胸椎角度),Th1,Th7,Th12のなす角度(胸椎角度),ASISとPSISを結ぶ延長線と床面との仮想水平線とが成す角度(骨盤傾斜角)を写真上で測定した。動作課題2回の角度平均値を各被験者で算出し,得られた値より,変化量を求めた。各姿勢の角度変化の比較は,Wilcoxonの符号付順位和検定を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
骨盤前傾,胸椎伸展に伴う角度変化は頭部自然位姿勢では,上位胸椎(4.8±2.4°),下位胸椎(4.1±2.6°),胸椎(7.0±2.9°),骨盤前傾(18.5±3.8°)であった。頭部前方位姿勢では,上位胸椎(2.1±1.7°),下位胸椎(0.1±3.3°),胸椎(2.8±2.3°),骨盤前傾(16.3±4.5°)であった。胸椎角度変化と下位胸椎角度変化は,頭部自然位姿勢と頭部前方位姿勢の間に有意差(p<0.01)が認められ,上位胸椎角度変化と骨盤前傾角度変化は有意差が認められなかった(p>0.05)。
【結論】
本研究の結果から頭部前方位姿勢の方が頭部自然位姿勢に比べ,下位胸椎伸展角度変化と胸椎伸展角度変化が小さく,頭位が脊柱運動に影響をおよぼす可能性が示唆された。坐位における骨盤前傾に伴う胸椎伸展誘導を行う場合,頭部位置を考慮して評価・アプローチを行うことが重要であると考える。