[P-KS-10-6] 頸椎の肢位変化が胸郭形状に及ぼす影響
矢状面における検討
Keywords:頸椎, 胸郭, 3次元画像解析装置
【はじめに,目的】
胸郭の配列に関する我々の研究により,その配列に共通点を見出すことができた。その定型的ともいえる胸郭形状が隣接する分節の肢位や運動に与える影響についても明らかになってきている。臨床上,胸郭形状と頸椎の関係においても法則性のある肢位や運動が観察され,安定した頸椎運動を再建するにあたり,その中枢である胸郭形状を指標とし,治療展開することで良好な結果を引き出すことに成功している。本研究では,頸椎と胸郭間の運動学的知見を得るために矢状面上における上・下位頸椎肢位が水平面上の胸郭形状に及ぼす影響について3次元画像解析装置を用いて検討することを目的とした。
【方法】
対象は成人男性12名とした。課題肢位は,上位頸椎伸展位+下位頸椎伸展位,上位頸椎屈曲位+下位頸椎屈曲位,上位頸椎伸展位+下位頸椎屈曲位,上位頸椎屈曲位+下位頸椎伸展位の4肢位とし,3次元画像解析装置3DイメージメジャラーQM-3000(トプコンテクノハウス社)を用いて各々の胸郭形状を再現した。各課題肢位における上位胸郭および下位胸郭の左右形状を定量化するため,左右の上位胸郭および下位胸郭の水平断面積を算出した。なお,個人間における体形差の影響を考慮するために,左右断面積の総和を100%とし左右各々の割合を断面積の値として算出した。統計処理は,安静位における上位胸郭および下位胸郭の左右形状を比較するために,左右の胸郭断面積値を対応のあるt検定を用いて検討した。また,上・下位頸椎の肢位変化が胸郭形状に与える影響について分析するために,上位,下位胸郭における水平断面積値の左右差を算出し2元配置分散分析を用いて検討した。なお,有意確率は5%未満とした。
【結果】
安静位における上位胸郭および下位胸郭の断面積の左右比較では,上位胸郭にて左側が有意に大きかった。下位胸郭では,右側が有意に大きかった。二元配置分散分析の結果,上位および下位胸郭において下位頸椎の主効果は有意であり,上位頸椎の主効果および上位頸椎と下位頸椎の交互作用について有意差はなかった。
【結論】
本研究により,矢状面上の頸椎肢位変化における胸郭形状変化は下位頸椎肢位に依存し,下位頸椎伸展位で胸郭形状が対称化し,下位頸椎屈曲位で胸郭形状が非対称化することが示された。下位頸椎肢位の相違により胸郭形状が変化した理由は,椎間関節の適合性および胸郭に付着する背部筋群活動の影響が考えられる。椎間関節の適合性の増減は,胸椎回旋偏位の増減に関与し,間接的に胸郭形状に反映される。背部筋活動の左右差は肋骨への牽引力として直接的に非対称な胸郭形状に関与する。よって,下位頸椎伸展位では椎間関節の適合性増大および頭部質量後方化に伴う背部筋活動減少により胸郭形状の対称化が生じ,下位頸椎屈曲位では椎間関節の適合性減少および頭部質量前方化に伴う背部筋活動増大により胸郭形状の非対称化が助長したと考えられる。
胸郭の配列に関する我々の研究により,その配列に共通点を見出すことができた。その定型的ともいえる胸郭形状が隣接する分節の肢位や運動に与える影響についても明らかになってきている。臨床上,胸郭形状と頸椎の関係においても法則性のある肢位や運動が観察され,安定した頸椎運動を再建するにあたり,その中枢である胸郭形状を指標とし,治療展開することで良好な結果を引き出すことに成功している。本研究では,頸椎と胸郭間の運動学的知見を得るために矢状面上における上・下位頸椎肢位が水平面上の胸郭形状に及ぼす影響について3次元画像解析装置を用いて検討することを目的とした。
【方法】
対象は成人男性12名とした。課題肢位は,上位頸椎伸展位+下位頸椎伸展位,上位頸椎屈曲位+下位頸椎屈曲位,上位頸椎伸展位+下位頸椎屈曲位,上位頸椎屈曲位+下位頸椎伸展位の4肢位とし,3次元画像解析装置3DイメージメジャラーQM-3000(トプコンテクノハウス社)を用いて各々の胸郭形状を再現した。各課題肢位における上位胸郭および下位胸郭の左右形状を定量化するため,左右の上位胸郭および下位胸郭の水平断面積を算出した。なお,個人間における体形差の影響を考慮するために,左右断面積の総和を100%とし左右各々の割合を断面積の値として算出した。統計処理は,安静位における上位胸郭および下位胸郭の左右形状を比較するために,左右の胸郭断面積値を対応のあるt検定を用いて検討した。また,上・下位頸椎の肢位変化が胸郭形状に与える影響について分析するために,上位,下位胸郭における水平断面積値の左右差を算出し2元配置分散分析を用いて検討した。なお,有意確率は5%未満とした。
【結果】
安静位における上位胸郭および下位胸郭の断面積の左右比較では,上位胸郭にて左側が有意に大きかった。下位胸郭では,右側が有意に大きかった。二元配置分散分析の結果,上位および下位胸郭において下位頸椎の主効果は有意であり,上位頸椎の主効果および上位頸椎と下位頸椎の交互作用について有意差はなかった。
【結論】
本研究により,矢状面上の頸椎肢位変化における胸郭形状変化は下位頸椎肢位に依存し,下位頸椎伸展位で胸郭形状が対称化し,下位頸椎屈曲位で胸郭形状が非対称化することが示された。下位頸椎肢位の相違により胸郭形状が変化した理由は,椎間関節の適合性および胸郭に付着する背部筋群活動の影響が考えられる。椎間関節の適合性の増減は,胸椎回旋偏位の増減に関与し,間接的に胸郭形状に反映される。背部筋活動の左右差は肋骨への牽引力として直接的に非対称な胸郭形状に関与する。よって,下位頸椎伸展位では椎間関節の適合性増大および頭部質量後方化に伴う背部筋活動減少により胸郭形状の対称化が生じ,下位頸椎屈曲位では椎間関節の適合性減少および頭部質量前方化に伴う背部筋活動増大により胸郭形状の非対称化が助長したと考えられる。