[P-KS-11-1] スマートフォンの使用が頸部筋活動開始時間及び頭部前方位に与える影響
Keywords:スマートフォン, 筋活動開始時間, 頭蓋脊椎角
【はじめに,目的】
総務省が発表した平成26年の情報通信メディアの利用状況によると,スマートフォンの利用率は全年代を合わせて62.3%であり,40代以下の若年層では大多数を占める結果となっている。また,インターネットやソーシャルメディアの利用時間も,スマートフォンの普及率増加に伴い上昇している。これらを背景にスマートフォンの使用により,特に矢状面における頸部姿勢アライメントの異常と,それに伴う肩こり等の障害について各メディアで取り上げられているが,学術的な記事は少ないのが現状である。そこで,スマートフォンの連続使用が頸部の筋活動および姿勢制御にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを本研究の目的とした。
【方法】
対象は頸部に障害や疼痛のない健常成人男性10名(26.3±3.7歳)とした。筋電図解析には,三軸加速度内臓表面筋電図DELSYS Trigno(DELSYS社製)を使用し,サンプリング周波数は2000Hzとした。対象筋は,両側の胸鎖乳突筋,僧帽筋上部繊維とした。スマートフォン使用前後において,頭部前方位を評価するために頭蓋脊椎角(craniovertebral angle:以下CV角)を測定し,筋電図より最大屈曲位を開始肢位とした各1秒間の最大伸展―最大屈曲運動時の筋活動開始時間を算出した。三軸加速度計を前額部に貼付し,3秒間の静止時における矢状面の平均加速度±3標準偏差以上上回る最初の点を運動開始時間とした。筋活動開始時間は全波整流後,運動課題開始前500msec間における最大振幅の2倍を超える振幅を記録した時点とし,左右早い方の筋を採択した。運動開始時間を0msecとし,筋活動開始時間を算出した。スマートフォン課題は,椅子座位における30分間の自由課題とした。CV角,筋活動開始時間の課題前後における差をみるためにWilcoxonの符号付順位和検定を用いた。
【結果】
CV角は課題前(40.93±4.66°),課題後(43.98±6.54°)であり,有意差を認めなかった。筋活動開始時間は,屈曲運動時の僧帽筋(課題前:823.0±263.6msec,課題後:254.9±447.4msec)において有意に早くなった。
【結論】
頸部屈曲時の僧帽筋活動は,直立位を超えた際に遠心性に働くが,本研究における課題後では,直立位に達する以前の早い段階から筋活動が開始された。これはスマートフォン課題により,頸椎の運動制御になんらかの変化が起こっていることが示唆され,僧帽筋の作用により頭部伸展を制御できない屈曲運動となる可能性があり,今日の情報社会における障害予防に向けて,さらなる解明が必要と思われる。またCV角は課題前後における個人差が大きく,今後の検討課題としたい。
総務省が発表した平成26年の情報通信メディアの利用状況によると,スマートフォンの利用率は全年代を合わせて62.3%であり,40代以下の若年層では大多数を占める結果となっている。また,インターネットやソーシャルメディアの利用時間も,スマートフォンの普及率増加に伴い上昇している。これらを背景にスマートフォンの使用により,特に矢状面における頸部姿勢アライメントの異常と,それに伴う肩こり等の障害について各メディアで取り上げられているが,学術的な記事は少ないのが現状である。そこで,スマートフォンの連続使用が頸部の筋活動および姿勢制御にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを本研究の目的とした。
【方法】
対象は頸部に障害や疼痛のない健常成人男性10名(26.3±3.7歳)とした。筋電図解析には,三軸加速度内臓表面筋電図DELSYS Trigno(DELSYS社製)を使用し,サンプリング周波数は2000Hzとした。対象筋は,両側の胸鎖乳突筋,僧帽筋上部繊維とした。スマートフォン使用前後において,頭部前方位を評価するために頭蓋脊椎角(craniovertebral angle:以下CV角)を測定し,筋電図より最大屈曲位を開始肢位とした各1秒間の最大伸展―最大屈曲運動時の筋活動開始時間を算出した。三軸加速度計を前額部に貼付し,3秒間の静止時における矢状面の平均加速度±3標準偏差以上上回る最初の点を運動開始時間とした。筋活動開始時間は全波整流後,運動課題開始前500msec間における最大振幅の2倍を超える振幅を記録した時点とし,左右早い方の筋を採択した。運動開始時間を0msecとし,筋活動開始時間を算出した。スマートフォン課題は,椅子座位における30分間の自由課題とした。CV角,筋活動開始時間の課題前後における差をみるためにWilcoxonの符号付順位和検定を用いた。
【結果】
CV角は課題前(40.93±4.66°),課題後(43.98±6.54°)であり,有意差を認めなかった。筋活動開始時間は,屈曲運動時の僧帽筋(課題前:823.0±263.6msec,課題後:254.9±447.4msec)において有意に早くなった。
【結論】
頸部屈曲時の僧帽筋活動は,直立位を超えた際に遠心性に働くが,本研究における課題後では,直立位に達する以前の早い段階から筋活動が開始された。これはスマートフォン課題により,頸椎の運動制御になんらかの変化が起こっていることが示唆され,僧帽筋の作用により頭部伸展を制御できない屈曲運動となる可能性があり,今日の情報社会における障害予防に向けて,さらなる解明が必要と思われる。またCV角は課題前後における個人差が大きく,今後の検討課題としたい。