[P-KS-12-2] 片脚スクワット動作における体幹角度の男女差
前額面運動に着目して
Keywords:前額面, 体幹側屈, 性差
【はじめに,目的】
片脚スクワット動作は,身体重心を上下移動しながら,その際生じる矢状面および前額面上の動揺を制御し,身体重心が支持基底面内から逸脱しないようにバランスをとる動作である。バイオメカニクス的手法を用いた報告では,スクワット動作時,女性では男性に比較し股関節内転角度,膝関節外反角度が増加すると述べられている。しかしこれらの研究は下肢関節運動に注目したものであり,体幹の運動について述べた研究は少ない。近年体幹運動の姿勢制御への関与が注目され,理学療法実施の場面でも治療の対象となることが多い。そこで本研究は健常人における片脚スクワット動作の姿勢制御の男女差について,体幹角度に着目し検討することを目的とした。
【方法】
対象は整形外科的および神経学的疾患のない健常男性5名,女性5名の計10名,年齢21.0±1.5歳,身長163.2±7.3cm,体重57.1±6.3kgであった。計測機器は三次元動作解析装置(VICON Motion system社 MXカメラ8台)と床反力計(AMTI社製)を用い,サンプリング周波数100Hzで計測した。マーカー位置はplug in gait full body modelに基づく35点とした。すべての被験者で右側の下肢を対象とした。計測動作は,非支持脚の開始肢位を股関節軽度屈曲位とし,メトロノームに合わせて,2秒で膝を曲げ,2秒で膝を伸ばすよう指示した。片脚スクワットを連続3回行い,2回目を抽出して解析した。解析項目は体幹運動角度の最大値を算出した。統計解析は男性群と女性群で対応のないt検定を使用した。統計分析はExcel2013を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
片脚スクワット動作の膝関節屈曲時,体幹側屈角度は男性で0.78±0.75°,女性で3.77±1.4°であり有意差が認められた(p<0.05)。
【結論】
本研究結果から片脚スクワット動作の膝関節屈曲時において,女性は男性よりも大きな体幹側屈角度を呈していることがわかった。Valentinaらは片脚スクワット動作時,体幹前屈角度は男性に比較し女性で小さく,水平面では男性と比較し女性では反対方向に回旋角度を呈するが,前額面上の体幹運動においては男女差は認められなかったと述べている。しかし本研究においては前額面上運動においても男女差が見られた。これにより男性と女性での前額面上体幹運動による姿勢制御の方法に差があり,発生する関節モーメントにも差が生じていると考えられる。今後はさらに被験者を増やし,体幹側屈角度の性差が姿勢制御に及ぼす影響について検討する必要があると考える。
片脚スクワット動作時の体幹運動の男女差を把握することは,この運動課題が性別による姿勢制御の違いや,性別による各関節への負荷量の違いを把握すると考えられる。今後,運動療法として施行する際に性差による姿勢制御パターンの違いを考慮して治療に臨むことにもつながると考える。
片脚スクワット動作は,身体重心を上下移動しながら,その際生じる矢状面および前額面上の動揺を制御し,身体重心が支持基底面内から逸脱しないようにバランスをとる動作である。バイオメカニクス的手法を用いた報告では,スクワット動作時,女性では男性に比較し股関節内転角度,膝関節外反角度が増加すると述べられている。しかしこれらの研究は下肢関節運動に注目したものであり,体幹の運動について述べた研究は少ない。近年体幹運動の姿勢制御への関与が注目され,理学療法実施の場面でも治療の対象となることが多い。そこで本研究は健常人における片脚スクワット動作の姿勢制御の男女差について,体幹角度に着目し検討することを目的とした。
【方法】
対象は整形外科的および神経学的疾患のない健常男性5名,女性5名の計10名,年齢21.0±1.5歳,身長163.2±7.3cm,体重57.1±6.3kgであった。計測機器は三次元動作解析装置(VICON Motion system社 MXカメラ8台)と床反力計(AMTI社製)を用い,サンプリング周波数100Hzで計測した。マーカー位置はplug in gait full body modelに基づく35点とした。すべての被験者で右側の下肢を対象とした。計測動作は,非支持脚の開始肢位を股関節軽度屈曲位とし,メトロノームに合わせて,2秒で膝を曲げ,2秒で膝を伸ばすよう指示した。片脚スクワットを連続3回行い,2回目を抽出して解析した。解析項目は体幹運動角度の最大値を算出した。統計解析は男性群と女性群で対応のないt検定を使用した。統計分析はExcel2013を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
片脚スクワット動作の膝関節屈曲時,体幹側屈角度は男性で0.78±0.75°,女性で3.77±1.4°であり有意差が認められた(p<0.05)。
【結論】
本研究結果から片脚スクワット動作の膝関節屈曲時において,女性は男性よりも大きな体幹側屈角度を呈していることがわかった。Valentinaらは片脚スクワット動作時,体幹前屈角度は男性に比較し女性で小さく,水平面では男性と比較し女性では反対方向に回旋角度を呈するが,前額面上の体幹運動においては男女差は認められなかったと述べている。しかし本研究においては前額面上運動においても男女差が見られた。これにより男性と女性での前額面上体幹運動による姿勢制御の方法に差があり,発生する関節モーメントにも差が生じていると考えられる。今後はさらに被験者を増やし,体幹側屈角度の性差が姿勢制御に及ぼす影響について検討する必要があると考える。
片脚スクワット動作時の体幹運動の男女差を把握することは,この運動課題が性別による姿勢制御の違いや,性別による各関節への負荷量の違いを把握すると考えられる。今後,運動療法として施行する際に性差による姿勢制御パターンの違いを考慮して治療に臨むことにもつながると考える。