第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P12

2016年5月27日(金) 16:30 〜 17:30 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-12-5] しゃがみ動作における骨盤前後傾の腸腰筋への影響

宮地諒, 藤井亮介, 西祐生 (石川県済生会金沢病院)

キーワード:しゃがみ動作, 腸腰筋, 超音波画像診断装置

【はじめに,目的】



しゃがみ動作は日常生活や理学療法で頻回に行われ,股関節運動との関連が深い。中でも股関節屈曲運動の主動作筋である腸腰筋は骨盤の前後傾の肢位により活動が変化することが知られている。しゃがみ動作における下肢筋の活動を分析した報告は散見されるにも関わらず,腸腰筋の活動を測定したものはみられない。近年,超音波画像診断装置(以下,US)を使用し鼠径部で測定した腸腰筋厚と磁気共鳴画像診断装置で測定した筋横断面積に差がないことや,USで測定した腸腰筋厚と股関節屈曲筋力とが関連するといった報告があり,USが腸腰筋の活動を評価する方法として有用であるとされている。そこで本研究はUSによってしゃがみ動作での骨盤前後傾による腸腰筋厚への影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】



対象は下肢や脊柱に関節障害などの既往がなく,日常生活に影響する疼痛がない健常成人男性9名(28.6±5.0歳)とした。課題動作は立位から膝関節屈曲60°までのしゃがみ動作とした。しゃがみ動作は骨盤前傾位と後傾位の両肢位で行った。骨盤前傾位と後傾位は被験者の最大努力下での骨盤前傾位及び後傾位とした。腸腰筋の筋厚の測定にはUS(LOGIQ e,GEヘルスケアジャパン社製)を使用した。測定するプローブ位置を一定にするために鼡径部中央にあらかじめマーキングを施行し,その上にプローブを接触して測定した。測定はBモードにて実施し,プローブはリニアプローブ(10MHz)を使用した。取得したUSの画像から画像解析プログラムImage Jによって腸腰筋厚を計測した。統計処理はWilcoxonの符号順位和検定を行った。

【結果】



しゃがみ動作終了時の腸腰筋厚は骨盤前傾位と後傾位のどちらも開始時よりも有意に増加した(P<0.01)。また,骨盤前傾位でのしゃがみ動作における腸腰筋厚は,開始時と終了時ともに後傾位よりも有意に高値を示した(P<0.01)。さらに骨盤前傾位でのしゃがみ動作では,開始時と終了時の腸腰筋厚の変化率が骨盤後傾位でのしゃがみ動作と比較して有意に大きかった(P<0.01)。

【結論】



骨盤前傾位と後傾位のどちらにおいてもしゃがみ動作により腸腰筋厚が増加し,その変化は骨盤前傾位で行う方が後傾位よりも大きい。そのため,骨盤前傾位でのしゃがみ動作は後傾位で行うよりも腸腰筋の活動が増加し,より効率的な腸腰筋のエクササイズと成り得ることが示唆された。