[P-KS-13-5] 表面筋電図と動作解析装置による歩行時方向転換動作の解析
サイドステップ時の支持側筋活動と体幹傾斜角度に着目して
Keywords:歩行, 方向転換動作, 表面筋電図
【はじめに,目的】
近年,人の歩行動作について,生体計測装置の進歩により直進歩行時の運動については共通の見解が得られている。しかし方向転換時の歩行については,そのメカニズムについて明らかになっていない。本研究の目的は,方向転換時の筋活動と体幹傾斜角度を計測し,方向転換時の両者の関連を検討することとした。
【方法】
対象者は健常成人男性20名。平均年齢27.3±6.22歳,身長173.75±4.88cm,体重65.9±7.18kg。
方向転換動作は,支持基底面が広く取れるサイドステップとした。転換する側の下肢を転換側,転換する1歩前を支持側とした。転換角度は進行方向に対し30・60・90°とし,転換動作との比較のため0°(直進)の測定を行った。歩行周期決定のため床反力計(Kistler社)を2枚使用した。歩行速度は音に合わせ90・110・130steps/minとし,それぞれ遅い・普通・速い速度とした。
筋活動の計測に筋電計(MARQ MQ8-4)を使用し,電極を支持側の中殿筋,大腿二頭筋,長腓骨筋に貼付した。体幹傾斜角は,3次元動作解析装置(Motion analysis社)を使用し,両上後腸骨棘の中点と第7頚椎棘突起を結ぶ線と垂直線とのなす角度とした。そして,筋活動毎に分析区間を設定し,積分値(iEMG)を算出した。歩行率110steps/min,0°での値を100%とし正規化した。体幹傾斜角は転換時の最大傾斜角を用いた。統計分析は歩行速度と転換角度を独立変数,各筋の筋電図の積分値,最大傾斜角を従属変数とし,2要因分散分析を用いた。
【結果】
全ての筋活動,体幹傾斜角において,速度の主効果と転換角度の主効果は有意であった。また,大腿二頭筋活動のみ交互作用が有意であった。
速度変化については全ての筋において遅い速度が,普通と速いに対し有意に筋活動が高かった。多重比較の結果,大腿二頭筋においては,速度低下に伴い筋活動が有意に増加した。体幹傾斜角については,速い速度が普通と遅いに対し有意に高かった。
転換角度においては,全ての筋活動,体幹傾斜角ともに90°が0°に対し有意に高い値を示し,大腿二頭筋活動と体幹傾斜角は転換角度増加に伴い高くなる傾向が見られた。(p<.05)
【結論】
歩行速度の低下に伴い筋活動量が高くなり,エネルギー消費が増加する。方向転換時の体幹傾斜は,転換外側へ向かう遠心力に抗するためと,転換方向へ重心を移動させるために必要な要因である。この傾斜は,速度と転換角度の増加でより大きくする必要がある。この重心移動に対し,中殿筋が骨盤を水平位に保ち重心の制御に関与し,大腿二頭筋は速度制御に関与している。長腓骨筋は転換方向への推進力を生み出すために働き,体幹傾斜と共に重心を側方へ移動させるための要因として働いている。転換角度が小さい場合には長腓骨筋が主要な要因となり,転換角度が大きくなると体幹傾斜の要因が大きくなる。この関連は,立位時矢状面での姿勢戦略と同様ではないかと予測される。
近年,人の歩行動作について,生体計測装置の進歩により直進歩行時の運動については共通の見解が得られている。しかし方向転換時の歩行については,そのメカニズムについて明らかになっていない。本研究の目的は,方向転換時の筋活動と体幹傾斜角度を計測し,方向転換時の両者の関連を検討することとした。
【方法】
対象者は健常成人男性20名。平均年齢27.3±6.22歳,身長173.75±4.88cm,体重65.9±7.18kg。
方向転換動作は,支持基底面が広く取れるサイドステップとした。転換する側の下肢を転換側,転換する1歩前を支持側とした。転換角度は進行方向に対し30・60・90°とし,転換動作との比較のため0°(直進)の測定を行った。歩行周期決定のため床反力計(Kistler社)を2枚使用した。歩行速度は音に合わせ90・110・130steps/minとし,それぞれ遅い・普通・速い速度とした。
筋活動の計測に筋電計(MARQ MQ8-4)を使用し,電極を支持側の中殿筋,大腿二頭筋,長腓骨筋に貼付した。体幹傾斜角は,3次元動作解析装置(Motion analysis社)を使用し,両上後腸骨棘の中点と第7頚椎棘突起を結ぶ線と垂直線とのなす角度とした。そして,筋活動毎に分析区間を設定し,積分値(iEMG)を算出した。歩行率110steps/min,0°での値を100%とし正規化した。体幹傾斜角は転換時の最大傾斜角を用いた。統計分析は歩行速度と転換角度を独立変数,各筋の筋電図の積分値,最大傾斜角を従属変数とし,2要因分散分析を用いた。
【結果】
全ての筋活動,体幹傾斜角において,速度の主効果と転換角度の主効果は有意であった。また,大腿二頭筋活動のみ交互作用が有意であった。
速度変化については全ての筋において遅い速度が,普通と速いに対し有意に筋活動が高かった。多重比較の結果,大腿二頭筋においては,速度低下に伴い筋活動が有意に増加した。体幹傾斜角については,速い速度が普通と遅いに対し有意に高かった。
転換角度においては,全ての筋活動,体幹傾斜角ともに90°が0°に対し有意に高い値を示し,大腿二頭筋活動と体幹傾斜角は転換角度増加に伴い高くなる傾向が見られた。(p<.05)
【結論】
歩行速度の低下に伴い筋活動量が高くなり,エネルギー消費が増加する。方向転換時の体幹傾斜は,転換外側へ向かう遠心力に抗するためと,転換方向へ重心を移動させるために必要な要因である。この傾斜は,速度と転換角度の増加でより大きくする必要がある。この重心移動に対し,中殿筋が骨盤を水平位に保ち重心の制御に関与し,大腿二頭筋は速度制御に関与している。長腓骨筋は転換方向への推進力を生み出すために働き,体幹傾斜と共に重心を側方へ移動させるための要因として働いている。転換角度が小さい場合には長腓骨筋が主要な要因となり,転換角度が大きくなると体幹傾斜の要因が大きくなる。この関連は,立位時矢状面での姿勢戦略と同様ではないかと予測される。