第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P14

2016年5月27日(金) 16:30 〜 17:30 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-14-1] 超音波画像でみた変形性膝関節症患者の大腿骨前脂肪体のエコー強度の変化

柴田和幸1,2, 岡田恭司2, 齊藤明2, 若狭正彦2, 髙橋裕介2, 佐藤大道2, 安田真理2, 堀岡航2, 大沢真志郎2, 江森怜央2, 髙橋仁美1, 柏倉剛1, 木村善明3 (1.市立秋田総合病院リハビリテーション科, 2.秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻, 3.市立秋田総合病院整形外科)

キーワード:超音波画像解析, 変形性膝関節症, 脂肪体

【はじめに,目的】

膝関節近位の大腿骨と膝蓋上包の間に位置する大腿骨前脂肪体(Prefemoral Fat Pad:以下,PFP)は,膝に疾患をもたない若年者や高齢者では,膝の屈曲・伸展運動や大腿四頭筋の収縮によって前後径が変化するが,変形性膝関節症(以下,膝OA)ではPFPの前後径や変化量は若年者や高齢者と比較して有意に低下していることがこれまでの我々の研究で明らかとなった。しかし,膝OA患者におけるPFPの前後径や変化量の低下を示した原因はいまだ明らかにされていない。本研究では超音波診断装置を用いてPFPを観察し,PFP自体のエコー強度(Echo intensity:以下,EI)を求めることで,PFPの変性の特徴を明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象は高齢群(14肢,年齢68.7歳,BMI 21.8kg/m2)と膝OA群(14肢,年齢78.1歳,BMI 26.2kg/m2)で比較検討した。高齢群は下肢に整形外科的疾患や神経筋疾患がなく,膝関節の変形や歩行時痛のない者を対象とした。

PFPの観察は,上前腸骨棘と膝蓋骨中央を結ぶ線上で膝蓋骨上縁近位部にプローブを垂直に当て,Bモードにて長軸像をモニター上に描出した。対象者の膝の屈曲角度は最大伸展位とした。測定機器はデジタル超音波診断装置Noblus(日立アロカメディカル社製)を使用した。プローブの周波数,フォーカスは一定とした。

EIは画像処理ソフトウェアImage J(National Institutes of Health)を用いて,グレースケールを基に白を255,黒を0として選択したピクセル内の平均値をEIとした。同一の画像内でPFPの他に,同じ脂肪組織である皮下脂肪のEIを求め,PFPのEIを皮下脂肪のEIで補正したPFP/SATを算出した。

【結果】

膝OA群は高齢群と比較して,皮下脂肪のEIに有意な差はなかった(72.5±7.6 vs. 72.6±8.2,P=0.9930)が,PFPのEIは膝OA群の方が有意に高かった(109.8±19.0 vs. 90.6±17.3,P=0.0097)。PFP/SATは高齢群と比較して膝OA群の方が有意に高かった(1.51±0.18 vs. 1.25±0.21,P=0.0019)。また膝OA群のPFPではfibrillar patternが見られた対象者もいた。

【結論】

膝OA群におけるPFPは高齢群と比較してEIが高い結果であった。EIは超音波自体の組織透過性を反映し,高いほど透過性が低いことを示しており,膝OA患者のPFPのEIが高かったことは,健常な膝のPFPと比較して線維化やPFP自体の萎縮といった変性を起こしていることを示唆している。PFPは大腿骨と膝蓋上包との間に位置しており,PFP自体の変性や前後径の変化の低下などから膝蓋上包の機能を低下させていることが考えられ,膝OAをはじめとする膝疾患に対するアプローチの対象となると思われる。