[P-KS-14-3] 歩行とランジ動作における膝関節軸性回旋中心位置の検討
Keywords:三次元動作解析, 歩行, 回旋中心
【はじめに,目的】
近年,人工膝関節置換術や前十字靭帯再建術の分野において膝関節の軸性回旋中心(Center of Axial Rotation:COR)が注目されている。脛骨平面におけるCORの位置により,medial pivotやlateral pivotと表現され,CORに関する様々な研究が散見される。特に歩行に関しては立脚期の解析においてlateral pivot patternが多いとの報告がある一方で,ランジ動作の解析研究においてはmedial pivot patternが多いと報告されている。これらの研究においてはCORの位置が動作の相や種類によって異なる可能性を示しているが,各動作の相ごとのCORの位置の変化に関しては不明である。本研究の目的は歩行とランジ動作における動作中のCORの位置と変化を明らかにすることである。
【方法】
歩行解析では健常成人20例40膝(男性10例,女性10例,年齢26.0±5.7歳,BMI 20.5±2.4kg/m2)を,ランジ動作解析では健常成人6例12膝(男性3例,女性3例,年齢26.6±0.1歳,BMI 20.6±0.8 kg/m2)を対象とした。光学式モーションキャプチャ技術(装置は赤外線カメラ8台(120Hz)と床反力計2枚(120Hz))を用い,ポイントクラスター(PC)法にて歩行とランジ動作の膝キネマティクスを解析した。キネマティクスデータは膝完全伸展位での自然立位をゼロ点とした。PC法における関節座標系はGroodらの定義に基づいて設定された。PC法により得られたデータを基に脛骨プラトーに設定されたT-xy平面上に投影された大腿骨上顆軸をpTEAとした。このpTEAが関節運動により変位したものをpTEA'とし,pTEAとpTEA'の交点をCORとして算出した。歩行では踵接地時,第一膝屈曲ピーク時,そして第一膝伸展ピーク時のCORを算出した。ランジ動作では膝屈曲相の初期,中間,終期のCORを算出し,膝伸展相についても同様に算出した。
【結果】
歩行立脚期のCORの中央値は全相で外側であり,全算出データの74%(58-92%)がlateral pivot patternであった。ランジ動作の膝屈曲相における中央値は全相で内側であり,全算出データの59.8%(55-68%)がmedial pivot patternであった。膝伸展相においては伸展相初期と中間で中央値は内側であり,全算出データの58.8%(47-68%)がmedial pivot patternであった。また,CORは各動作中に変化し定位ではなかった。
【結論】
本研究結果から,CORは歩行立脚期では外側(lateral pivot),ランジ動作では内側(medial pivot)が多く,動作の種類や相により変化することが明らかとなった。これは歩行立脚期では大腿骨が外旋かつ前方並進していたのに対し,ランジ動作では膝屈曲相で大腿骨が外旋かつ後方並進,膝伸展相では大腿骨が内旋かつ前方並進していたことによると考えられた。キネマティクスは運動の相や種類によって異なるため,キネマティクスを反映するCORも各動作中に変位し,定位ではなかったと考えられた。
近年,人工膝関節置換術や前十字靭帯再建術の分野において膝関節の軸性回旋中心(Center of Axial Rotation:COR)が注目されている。脛骨平面におけるCORの位置により,medial pivotやlateral pivotと表現され,CORに関する様々な研究が散見される。特に歩行に関しては立脚期の解析においてlateral pivot patternが多いとの報告がある一方で,ランジ動作の解析研究においてはmedial pivot patternが多いと報告されている。これらの研究においてはCORの位置が動作の相や種類によって異なる可能性を示しているが,各動作の相ごとのCORの位置の変化に関しては不明である。本研究の目的は歩行とランジ動作における動作中のCORの位置と変化を明らかにすることである。
【方法】
歩行解析では健常成人20例40膝(男性10例,女性10例,年齢26.0±5.7歳,BMI 20.5±2.4kg/m2)を,ランジ動作解析では健常成人6例12膝(男性3例,女性3例,年齢26.6±0.1歳,BMI 20.6±0.8 kg/m2)を対象とした。光学式モーションキャプチャ技術(装置は赤外線カメラ8台(120Hz)と床反力計2枚(120Hz))を用い,ポイントクラスター(PC)法にて歩行とランジ動作の膝キネマティクスを解析した。キネマティクスデータは膝完全伸展位での自然立位をゼロ点とした。PC法における関節座標系はGroodらの定義に基づいて設定された。PC法により得られたデータを基に脛骨プラトーに設定されたT-xy平面上に投影された大腿骨上顆軸をpTEAとした。このpTEAが関節運動により変位したものをpTEA'とし,pTEAとpTEA'の交点をCORとして算出した。歩行では踵接地時,第一膝屈曲ピーク時,そして第一膝伸展ピーク時のCORを算出した。ランジ動作では膝屈曲相の初期,中間,終期のCORを算出し,膝伸展相についても同様に算出した。
【結果】
歩行立脚期のCORの中央値は全相で外側であり,全算出データの74%(58-92%)がlateral pivot patternであった。ランジ動作の膝屈曲相における中央値は全相で内側であり,全算出データの59.8%(55-68%)がmedial pivot patternであった。膝伸展相においては伸展相初期と中間で中央値は内側であり,全算出データの58.8%(47-68%)がmedial pivot patternであった。また,CORは各動作中に変化し定位ではなかった。
【結論】
本研究結果から,CORは歩行立脚期では外側(lateral pivot),ランジ動作では内側(medial pivot)が多く,動作の種類や相により変化することが明らかとなった。これは歩行立脚期では大腿骨が外旋かつ前方並進していたのに対し,ランジ動作では膝屈曲相で大腿骨が外旋かつ後方並進,膝伸展相では大腿骨が内旋かつ前方並進していたことによると考えられた。キネマティクスは運動の相や種類によって異なるため,キネマティクスを反映するCORも各動作中に変位し,定位ではなかったと考えられた。