[P-KS-15-1] 中強度運動後の静脈阻血による血管拡張は循環動態を亢進させる
Keywords:静脈血管拡張, 循環動態, 換気応答
【はじめに,目的】
心疾患患者は骨格筋などの末梢組織から交感神経中枢への求心性刺激の増加に伴い心負荷増大や重症不整脈を引き起こす可能性があり,運動療法を行う上でもリスク管理の点で末梢要因から起こる変化を把握する必要がある。Haouzi P(2014)らは静脈近傍にある血流変化に起因する静脈血管拡張を感知する受容器が換気の変化を,Jian Cui(2012)らは循環動態の変化を起こしていることを報告しているが,高強度運動や侵襲的な方法で実験しており理学療法分野で評価するには安全な強度で行う必要がある。そこで本研究は,中強度運動後の静脈阻血によって換気循環指標に変化が起こることを明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は健常男性10名とした。第一に運動負荷試験を行い嫌気性代謝閾値(AT)を算出した。プロトコルは安静7分,AT1分前の強度を用い4分間サイクル運動を200mmHgにて左大腿部へ阻血しながら施行した。終了直後に左大腿部へ静脈阻血を90mmHgにて行う阻血群と阻血をしない非阻血群に各々5分間の安静観察をとり測定を行った。静脈循環の状態は近赤外線分光装置(NIRS)を使用しdeoxyHbを測定,各群酸素摂取量(VO2)平均血圧(MAP),心拍数(HR)を測定した。統計解析はNIRSで得られたdeoxyHbの推移に多重比較検定を用い,VO2,MAP,HRは安静観察の比較に二元配置分散分析を用いた。有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
静脈循環におけるdeoxyHbは阻血群は安静11.3±2.9,運動15.4±3.7,観察14.9±3.4となり(安静<運動:p<0.05,安静<観察:p<0.05,運動≒観察:n.s),非阻血群は安静11.3±3,運動15.4±3.5,観察11.4±2となった(安静<運動:p<0.05,安静≒観察:n.s,運動>観察:p<0.05)。VO2において有意な交互作用が認められた(p<0.05)。各課題の有意な主効果は認められず(p=0.55),時間の有意な主効果が認められた(p<0.05)。MAPにおいて有意な交互作用は認められなかった(p=0.90)。各課題の有意な主効果は認められ(p<0.05),時間の有意な主効果は認められた(p<0.05)。HRの有意な交互作用は認められなかった(p=0.06)。各課題の有意な主効果は認められ(p<0.05),時間の有意な主効果は認められた(p<0.05)。
【結論】
健常者における,中強度運動後の静脈阻血は換気応答には変化は与えないが循環指標に変化を与えた。静脈阻血による血管拡張が交感神経求心性刺激を増加させ循環動態を亢進させた考えられる。運動後回復期において換気に対してMAPやHRが延長していることから循環動態が換気応答を代償した結果であると考えられる。以上より,末梢要因から起こる換気・循環動態の変化は中強度運動で評価が可能であること示唆された。また,運動後回復期において換気応答を循環動態で代償するまでの時間が明らかになれば末梢要因に対する新たな評価指標となる可能性が推察される。
心疾患患者は骨格筋などの末梢組織から交感神経中枢への求心性刺激の増加に伴い心負荷増大や重症不整脈を引き起こす可能性があり,運動療法を行う上でもリスク管理の点で末梢要因から起こる変化を把握する必要がある。Haouzi P(2014)らは静脈近傍にある血流変化に起因する静脈血管拡張を感知する受容器が換気の変化を,Jian Cui(2012)らは循環動態の変化を起こしていることを報告しているが,高強度運動や侵襲的な方法で実験しており理学療法分野で評価するには安全な強度で行う必要がある。そこで本研究は,中強度運動後の静脈阻血によって換気循環指標に変化が起こることを明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は健常男性10名とした。第一に運動負荷試験を行い嫌気性代謝閾値(AT)を算出した。プロトコルは安静7分,AT1分前の強度を用い4分間サイクル運動を200mmHgにて左大腿部へ阻血しながら施行した。終了直後に左大腿部へ静脈阻血を90mmHgにて行う阻血群と阻血をしない非阻血群に各々5分間の安静観察をとり測定を行った。静脈循環の状態は近赤外線分光装置(NIRS)を使用しdeoxyHbを測定,各群酸素摂取量(VO2)平均血圧(MAP),心拍数(HR)を測定した。統計解析はNIRSで得られたdeoxyHbの推移に多重比較検定を用い,VO2,MAP,HRは安静観察の比較に二元配置分散分析を用いた。有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
静脈循環におけるdeoxyHbは阻血群は安静11.3±2.9,運動15.4±3.7,観察14.9±3.4となり(安静<運動:p<0.05,安静<観察:p<0.05,運動≒観察:n.s),非阻血群は安静11.3±3,運動15.4±3.5,観察11.4±2となった(安静<運動:p<0.05,安静≒観察:n.s,運動>観察:p<0.05)。VO2において有意な交互作用が認められた(p<0.05)。各課題の有意な主効果は認められず(p=0.55),時間の有意な主効果が認められた(p<0.05)。MAPにおいて有意な交互作用は認められなかった(p=0.90)。各課題の有意な主効果は認められ(p<0.05),時間の有意な主効果は認められた(p<0.05)。HRの有意な交互作用は認められなかった(p=0.06)。各課題の有意な主効果は認められ(p<0.05),時間の有意な主効果は認められた(p<0.05)。
【結論】
健常者における,中強度運動後の静脈阻血は換気応答には変化は与えないが循環指標に変化を与えた。静脈阻血による血管拡張が交感神経求心性刺激を増加させ循環動態を亢進させた考えられる。運動後回復期において換気に対してMAPやHRが延長していることから循環動態が換気応答を代償した結果であると考えられる。以上より,末梢要因から起こる換気・循環動態の変化は中強度運動で評価が可能であること示唆された。また,運動後回復期において換気応答を循環動態で代償するまでの時間が明らかになれば末梢要因に対する新たな評価指標となる可能性が推察される。