[P-KS-15-4] 走行面の傾斜角度が乳酸性作業閾値に与える影響
老齢ラットによる実験的研究
キーワード:乳酸性作業閾値, 運動負荷試験, ラット
【はじめに,目的】
臨床において運動処方を行う場合,最高酸素摂取量や嫌気性代謝閾値,乳酸性作業閾値(以下,LT)等を運動耐容能の指標として用いる。我々はラットの外頚静脈にカテーテルを留置する方法を用いることにより,運動負荷試験中の血中乳酸濃度を欠落値なく連続的に測定することを可能とし,ラットにおけるLT評価方法を構築した。我々の先行研究では若齢ラットを用いたLT評価を行ったため,本研究では老齢ラットに対して運動負荷試験を行い,走行面の傾斜角度の違いがLTに与える影響について検討を行った。
【方法】
24か月齢のWistar系雌性ラット24匹を対象とし,無作為に3群に振り分けた。各群はトレッドミル運動負荷試験を傾斜0度で行う平地走行群(以下,L群),傾斜-16度で行う下り坂走行群(以下,D群),傾斜+16度で行う上り坂走行群(以下,U群)とした。まず,全ラットに対し麻酔下にて右外頚静脈にカテーテルを留置し,皮下を通してカテーテルの一端を後頚部へ露出させた。カテーテル留置後はカテーテル内にヘパリン加生理食塩水を充填した。カテーテル留置後2日間の回復を待って,運動負荷試験を行った。運動負荷試験はラットが走行不能になるまで実施する症候限界性漸増負荷試験を行った。トレッドミル走行は10m/minから開始し,2分毎に2m/min速度を増加させた。血中乳酸濃度はカテーテルに延長チューブを接続し,約5μLずつ運動開始直前および2分毎の負荷の漸増と同時に採血を行った。血中乳酸濃度測定は携帯型血中乳酸濃度測定器を用いた。LTは血中乳酸濃度が安静時から増加し始める点とし,専用の解析ソフトで算出した。3群間の比較については,安静時血中乳酸濃度,最高血中乳酸濃度,LT時点での走行速度,最高走行速度について一元配置分散分析を用い,有意差を認めた場合にはTukey法を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
カテーテル閉塞により採血が行えなかった3匹を除外し,各群7匹となった。各群の安静時血中乳酸濃度,最高血中乳酸濃度は3群間に有意差は認めなかった。LT時点での走行速度は,L群とD群に比べU群は有意に低く(vs. L群:P<0.05,vs. D群:P<0.001),L群に比べD群は高い傾向にはあったが2群間には有意差を認めなかった。最高走行速度は,L群とD群に比べU群は有意に低く(vs. L群:P<0.001,vs. D群:P<0.001),D群に比べL群は有意に低かった(P<0.01)。
【結論】
今回,老齢ラットにおいても若齢ラットと同様にLTの評価が可能であった。また,老齢ラットにおいて平地走行に加えて,下り坂と上り坂走行中のLT時点での走行速度を明らかにすることができた。走行面の傾斜面の角度が減少すれば,走行時の酸素摂取量も減少することは既に報告されており,本研究においても同様の結果となった。本研究で得られた結果は,今後老齢ラットを用いた運動負荷実験を行う上で,重要な基礎データになると考えている。
臨床において運動処方を行う場合,最高酸素摂取量や嫌気性代謝閾値,乳酸性作業閾値(以下,LT)等を運動耐容能の指標として用いる。我々はラットの外頚静脈にカテーテルを留置する方法を用いることにより,運動負荷試験中の血中乳酸濃度を欠落値なく連続的に測定することを可能とし,ラットにおけるLT評価方法を構築した。我々の先行研究では若齢ラットを用いたLT評価を行ったため,本研究では老齢ラットに対して運動負荷試験を行い,走行面の傾斜角度の違いがLTに与える影響について検討を行った。
【方法】
24か月齢のWistar系雌性ラット24匹を対象とし,無作為に3群に振り分けた。各群はトレッドミル運動負荷試験を傾斜0度で行う平地走行群(以下,L群),傾斜-16度で行う下り坂走行群(以下,D群),傾斜+16度で行う上り坂走行群(以下,U群)とした。まず,全ラットに対し麻酔下にて右外頚静脈にカテーテルを留置し,皮下を通してカテーテルの一端を後頚部へ露出させた。カテーテル留置後はカテーテル内にヘパリン加生理食塩水を充填した。カテーテル留置後2日間の回復を待って,運動負荷試験を行った。運動負荷試験はラットが走行不能になるまで実施する症候限界性漸増負荷試験を行った。トレッドミル走行は10m/minから開始し,2分毎に2m/min速度を増加させた。血中乳酸濃度はカテーテルに延長チューブを接続し,約5μLずつ運動開始直前および2分毎の負荷の漸増と同時に採血を行った。血中乳酸濃度測定は携帯型血中乳酸濃度測定器を用いた。LTは血中乳酸濃度が安静時から増加し始める点とし,専用の解析ソフトで算出した。3群間の比較については,安静時血中乳酸濃度,最高血中乳酸濃度,LT時点での走行速度,最高走行速度について一元配置分散分析を用い,有意差を認めた場合にはTukey法を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
カテーテル閉塞により採血が行えなかった3匹を除外し,各群7匹となった。各群の安静時血中乳酸濃度,最高血中乳酸濃度は3群間に有意差は認めなかった。LT時点での走行速度は,L群とD群に比べU群は有意に低く(vs. L群:P<0.05,vs. D群:P<0.001),L群に比べD群は高い傾向にはあったが2群間には有意差を認めなかった。最高走行速度は,L群とD群に比べU群は有意に低く(vs. L群:P<0.001,vs. D群:P<0.001),D群に比べL群は有意に低かった(P<0.01)。
【結論】
今回,老齢ラットにおいても若齢ラットと同様にLTの評価が可能であった。また,老齢ラットにおいて平地走行に加えて,下り坂と上り坂走行中のLT時点での走行速度を明らかにすることができた。走行面の傾斜面の角度が減少すれば,走行時の酸素摂取量も減少することは既に報告されており,本研究においても同様の結果となった。本研究で得られた結果は,今後老齢ラットを用いた運動負荷実験を行う上で,重要な基礎データになると考えている。