第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P16

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-KS-16-1] めまい・起立性低血圧の有無による自律神経動態の差異

―大腿骨近位部骨折患者での比較―

宇野健太郎1, 好永智治1, 白石直輝1, 谷頭幸二1, 田中恩1, 川端悠士2,3 (1.特定医療法人茜会昭和病院リハビリテーション部, 2.山口県理学療法士会学術研究部, 3.周東総合病院)

Keywords:めまい, 起立性低血圧, 自律神経活動

【はじめに,目的】

めまいやふらつき感は,高齢者の愁訴の中でも比較的頻度が高く,自律神経障害による神経原性低血圧(Ortho-static Hypotension:以下,OH)の症状としても生じる。また,めまいは転倒の要因にも挙げられ,日常生活活動に直接影響するだけでなく,転倒すれば骨折などの重篤な事態を招き得るとされ,転倒予防の観点からも予防,治療が必要であると考えられる。しかし,本邦ではめまい・OHの関係を検証した研究は少ない。このため本研究では,自律神経評価機器を使用し,骨折の中でも転倒による起因が多いとされる大腿骨近位部骨折患者において,めまい・OHの割合及び,めまい・OHの有無による自律神経動態の差異を明らかにすることを目的とする。

【方法】

対象は平成26年10月から平成27年9月までに当院回復期リハビリテーション病棟入棟の大腿骨近位部骨折患者49例。除外基準は,末梢前庭性疾患,重度な高次脳機能障害を有する患者とし,基準を満たした22例を研究対象者とした。方法はめまい症状の有無を問診し,心電図,心拍数,血圧を対象に自律神経評価機器を使用し起立負荷試験を実施した。測定項目は自律神経活動の指標であるCVRR,交感神経活動の指標であるLF/HFとした。22例をめまい・OHあり群9例と,めまい・OHなし群13例に分類した(2群において基本的属性に有意差なし)。統計手法はめまい・OH症状の有無の2群に分け,CVRR,LF/HFについて起立直前・起立・立位・着席時の時期とめまい・OHの有無を2要因とする分割プロット分散分析を,水準毎の比較では多重比較検定を実施した。

【結果】

めまい・OH症状を認めた症例は約4割に上った。CVRRに関して起立直前から起立時に2要因による交互作用が有意(p<0.05)であったため,水準毎に分けて多重比較を行った結果,CVRRはめまい・OHなし群で2.06±1.0から3.4±1.3へ有意に増加し(p<0.01),あり群では1.89±1.1から2.43±0.9へ増加したが有意差は認めず,LF/HFにおいても類似した結果を示した。

【結論】

本研究では,転倒が起因とされる大腿骨近位部骨折患者22例のうち9例(41%)がめまい・OHを認め,めまい・OHを認める症例は自律神経活動が弱化していることが示唆された。本結果は,転倒予防,治療においての新しい知見となる可能性があり,今後も追究が必要であると考える。本研究の限界として,薬剤を不考慮としていること,及び心房細動を持つ患者を研究対象者にしている点が挙げられる。また廃用によりCVRRやLF/HFといった指標の基礎活動が低下を示すかは検証できていない。さらに認知症例や座位,起立,立位に介助が必要な症例を研究対象から除外しており,対象例決定における選択バイアスの存在は否定できない。以上を考慮して,今後の追試が必要である。