第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P16

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-KS-16-2] 高濃度人工炭酸泉下肢局所浴の湯温の違いによる効果の検討

平田尚久1, 實延靖1, 田中聡2, 沖貞明2, 金井秀作2 (1.木阪病院, 2.県立広島大学)

Keywords:炭酸泉浴, 自律神経機能, 血流

【はじめに,目的】

高濃度人工炭酸泉浴(以下炭酸泉浴)は深部温度の低下,皮膚血流の増加,温度感覚スコアの上昇や副交感神経活動促進,交感神経活動抑制効果も報告されている。しかし,先行研究の湯温や炭酸泉濃度などの条件が一定では無く,結果も一様ではない。特に湯温にはばらつきがあり,炭酸泉浴の適応条件を明確化するために湯温差による効果を検討することが重要である。本研究の目的は,湯温の違いによる炭酸泉浴の効果を検討することである。

【方法】

健常成人10名(20.9±1.1歳,男性3名,女性7名)。室温22.6±0.9℃,湿度43.3±5.8%。同じ時間帯・明度の屋内で,耳栓を使用し環境音を調整した。炭酸泉はCARBO MEDICAで作成し,GASTECを使用して炭酸ガス濃度を1000ppm以上で管理した。浸漬前後で10分間の安静座位をとり,腓骨頭より5cm下の水位の下肢局所浴を15分実施した。同一被検者に対し,湯温36℃と41℃の淡水および炭酸泉の4条件で日を変えて実施した。測定は浸漬前後10分を含む計35分間行った。自律神経活動は,心電図R-R間隔の周波数解析によって算出し,高周波成分(HF)を副交感神経活動,低周波成分/高周波成分(LF/HF)を交感神経活動の指標とした。血圧と脈拍を上腕血圧計で,快適度と温冷感の測定はそれぞれFace Scaleと7段階質問用紙を作成して測定した。皮膚血流はレーザードップラーALF21Rを使用し,表面・深部温度はコアテンプCM-210を使用して右腓腹筋外側頭で測定した。筋硬度は右腓腹筋外側頭と右内側広筋,右僧帽筋上部線維で測定した。測定データは浸漬前の0分,10分,浸漬中の25分,浸漬後の26分,30分,35分時点を測定点とし,各項目をそれぞれ3時点で測定した。4条件および時系列で比較を行い,統計処理はシャピロウィルク検定後,フリードマン検定,ボンフェローニ法を実施。有意水準5%で検討した。

【結果】

有意差(p<0.05)のあった項目を以下に記す。脈拍は41℃炭酸泉群で25分時点>35分時点で低下。LF/HF変化率は36℃淡水群で10分時点<25分時点で上昇。皮膚血流は36℃の両群<41℃の両群で上昇。全群で25分時点に上昇。36℃炭酸泉群以外で35分時点でも持続。表面・深部温度は36℃の両群<41℃の両群で上昇。表面温度は全群で35分時点,深部温度は41℃の両群のみ35分時点で上昇。筋硬度(腓腹筋)は41℃の両群で35分時点に低下。41℃炭酸泉群は26分時点<35分時点で低下。温冷感は36℃の両群<41℃の両群で上昇。全群で25分時点>35分時点,36℃淡水群以外で10分時点<25分時点で上昇した。

【結論】

健常者では炭酸泉浴による著明な自律神経活動の変化を示しにくいが,交感神経活動が亢進している状態では36℃炭酸泉浴によって抑制される可能性が示唆された。局所効果や主観的効果は湯温による影響が強い結果となった。炭酸泉浴を用いる際には目的や適応に応じて湯温を変更することが適切であると考えられた。