[P-KS-16-5] 大腿骨近位部骨折患者におけるFunctional Reach Testと股関節・足関節戦略の関係性
キーワード:Functional Reach Test, 運動戦略, 大腿骨近位部骨折
【はじめに,目的】
O'Brienらは65歳以上の高齢者において転倒経験者と非経験者ではFunctional Reach Test(以下,FRT)のリーチ距離(以下,FR値)に有意差があり,大腿骨近位部骨折の既往がある高齢者は再骨折のリスク群にあると報告している。しかし相反する報告もあり,JonssonらはFR値とCenter of Pressure(以下COP)の変位相関は低いとしており,FR値だけで立位の安定性限界を述べるには弱く運動戦略やCOPとの関係を明らかにする必要があると示唆している。本研究では,立位姿勢における動的バランス能力と運動戦略をより詳細に把握することが重要であると考え,二次元動作解析装置と重心動揺計を用いて左右FRT施行時の運動戦略と動的バランスの関係性を分析したのでここに報告する。
【方法】
対象は当院回復期病棟入院中の歩行が自立している大腿骨近位部骨折患者10名(男性0名,女性10名)。平均年齢79.5±8.2歳,平均身長1.49±0.05m,平均体重49.8±9.7kg。
測定方法は,Duncanらの方法に準じFRTを左右施行しFR値,COP前後移動距離,運動戦略について記録した。COP前後移動距離は,多目的重心動揺計測システム(Zebris社製WinPDMS)を使用し,FRT測定開始時からFR値最大到達点時において測定した。運動戦略はFRT測定時において矢状面より肩峰,大転子,腓骨頭,外果,第5中足骨頭をランドマークとしてビデオカメラで定点撮影し,二次元動作解析装置(DARTFISH Pro5.5)を使用して股関節と足関節角度を解析した。統計処理はWilcoxonの符号付順位和検定を用いFR値,股関節角度,足関節角度,COP前後移動距離の骨折側と非骨折側を比較した。有意水準は1%未満とした。
【結果】
FR値は骨折側20.4±8.6cm,非骨折側22.5±7.7cmで有意差を認めなかった。股関節角度は骨折側が屈曲20.3±16.7°,非骨折側が屈曲31.5±16.6°で非骨折側股関節角度が有意に大きかった(p<0.01)。足関節角度は骨折側が底屈3.0±2.4°,非骨折側が底屈3.1±2.6°で有意差を認めなかった。COP前後移動距離は骨折側60.8±18.1cm,非骨折側78.8±27.2cmで非骨折側が有意に大きかった(p<0.01)。
【結論】
本研究の結果より,骨折側リーチ時のCOP前後移動距離が有意に短いことは骨折側転倒リスクに繋がるのではないかと考えた。また,高齢者におけるFRT施行時の運動戦略は股関節戦略有意であり,足関節戦略に依存しにくい傾向にあると示唆された。足関節戦略が見られない要因として,藤澤らが多くの高齢者の特徴として足関節機能は加齢に伴い優位に低下する傾向にあると報告しており,今回の結果もそれに起因しているのではないかと考えた。このことから大腿骨近位部骨折患者は骨折側立位時に股関節屈曲角度が低下していることで,COP前後移動距離が短縮し動的バランス能力が低下する傾向にあると考えられた。本研究は症例数が少ないため今後も継続して調査を行い,より信頼性高い結果を示していきたいと考える。
O'Brienらは65歳以上の高齢者において転倒経験者と非経験者ではFunctional Reach Test(以下,FRT)のリーチ距離(以下,FR値)に有意差があり,大腿骨近位部骨折の既往がある高齢者は再骨折のリスク群にあると報告している。しかし相反する報告もあり,JonssonらはFR値とCenter of Pressure(以下COP)の変位相関は低いとしており,FR値だけで立位の安定性限界を述べるには弱く運動戦略やCOPとの関係を明らかにする必要があると示唆している。本研究では,立位姿勢における動的バランス能力と運動戦略をより詳細に把握することが重要であると考え,二次元動作解析装置と重心動揺計を用いて左右FRT施行時の運動戦略と動的バランスの関係性を分析したのでここに報告する。
【方法】
対象は当院回復期病棟入院中の歩行が自立している大腿骨近位部骨折患者10名(男性0名,女性10名)。平均年齢79.5±8.2歳,平均身長1.49±0.05m,平均体重49.8±9.7kg。
測定方法は,Duncanらの方法に準じFRTを左右施行しFR値,COP前後移動距離,運動戦略について記録した。COP前後移動距離は,多目的重心動揺計測システム(Zebris社製WinPDMS)を使用し,FRT測定開始時からFR値最大到達点時において測定した。運動戦略はFRT測定時において矢状面より肩峰,大転子,腓骨頭,外果,第5中足骨頭をランドマークとしてビデオカメラで定点撮影し,二次元動作解析装置(DARTFISH Pro5.5)を使用して股関節と足関節角度を解析した。統計処理はWilcoxonの符号付順位和検定を用いFR値,股関節角度,足関節角度,COP前後移動距離の骨折側と非骨折側を比較した。有意水準は1%未満とした。
【結果】
FR値は骨折側20.4±8.6cm,非骨折側22.5±7.7cmで有意差を認めなかった。股関節角度は骨折側が屈曲20.3±16.7°,非骨折側が屈曲31.5±16.6°で非骨折側股関節角度が有意に大きかった(p<0.01)。足関節角度は骨折側が底屈3.0±2.4°,非骨折側が底屈3.1±2.6°で有意差を認めなかった。COP前後移動距離は骨折側60.8±18.1cm,非骨折側78.8±27.2cmで非骨折側が有意に大きかった(p<0.01)。
【結論】
本研究の結果より,骨折側リーチ時のCOP前後移動距離が有意に短いことは骨折側転倒リスクに繋がるのではないかと考えた。また,高齢者におけるFRT施行時の運動戦略は股関節戦略有意であり,足関節戦略に依存しにくい傾向にあると示唆された。足関節戦略が見られない要因として,藤澤らが多くの高齢者の特徴として足関節機能は加齢に伴い優位に低下する傾向にあると報告しており,今回の結果もそれに起因しているのではないかと考えた。このことから大腿骨近位部骨折患者は骨折側立位時に股関節屈曲角度が低下していることで,COP前後移動距離が短縮し動的バランス能力が低下する傾向にあると考えられた。本研究は症例数が少ないため今後も継続して調査を行い,より信頼性高い結果を示していきたいと考える。