[P-KS-17-4] 他動運動時の関節角度および運動方向の違いが皮質脊髄路の興奮性に与える影響
キーワード:経頭蓋磁気刺激法, 他動運動, 皮質脊髄路
【はじめに,目的】
リハビリテーション分野において,他動運動は関節可動域の改善などを目的として広く用いられている。しかし,他動運動時の関節角度および運動方向の違いが皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響については不明な点が多い。先行研究においては,示指の他動運動時に誘発される運動誘発電位(motor evoked potential:MEP)は関節角度と運動方向の違いにより異なると報告されている(Edward, et al., 2004)。示指の内転運動時には第一背側骨間筋(First dorsal interosseous muscle:FDI)より導出されるMEP振幅値は安静時と比べ減弱し,外転運動時には内転時に比べMEP振幅値は増大することが報告されている。しかしながら,先行研究では外転運動時,内転運動時ともに示指外転位から中間位においてMEPを計測しており,内転位における皮質脊髄路の興奮性の変化は検討されていない。よって本研究では,示指の他動運動時における,内転位での関節角度および運動方向の違いが皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
同意が得られた健常成人13名(23.7±3.89歳)を対象として,右示指内外転他動運動中のMEP振幅を計測した。MEPは経頭蓋磁気刺激(Transcranial magnetic stimulation:TMS)を左側一次運動野手指領域に与え,右FDIから記録した。刺激強度は安静時に1 mVを誘発する強度とした。右示指他動運動は外転10°から内転30°の運動範囲で行い,運動速度は80°/secとした。MEP振幅を計測する関節角度および運動方向の条件は,内転運動時における内転0°および内転20°,外転運動時における内転20°および内転0°とし,5秒に1回の頻度で内転または外転運動を行った。安静時と他動運動中に計測したMEP各12波形の加算平均値を算出し,安静時に計測したMEP振幅値と他動運動中に計測したMEP振幅値を比較した。統計学的処理には反復測定一元配置分散分析を行った後,多重比較検定(Dunnett法)を用いた。なお,有意水準は5%とした。
【結果】
反復測定一元配置分散分析の結果,条件要因に主効果を認めた(p<0.05)。各条件のMEP振幅値(平均値±標準誤差)は,安静時では0.98±0.03 mV,内転運動時の内転0°では1.50±0.15 mV,内転20°では0.86±0.13 mV,外転運動時の内転20°では0.99±0.13 mV,内転0°では0.98±0.14 mVであった。安静時と比べ内転運動時の内転0°ではMEP振幅値の有意な増大が認められた(p<0.05)。しかしながら,安静時と比べ内転運動時の内転20°,外転運動時の内転20°,内転0°ではMEP振幅値に有意な差は認められなかった。
【結論】
本研究において,安静時と比較して内転運動時の内転0°にて計測したMEP振幅値が有意に増大することが明らかになった。この結果から,他動運動中の関節角度および運動方向の違いが皮質脊髄路の興奮性に影響を与える可能性が示唆された。
リハビリテーション分野において,他動運動は関節可動域の改善などを目的として広く用いられている。しかし,他動運動時の関節角度および運動方向の違いが皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響については不明な点が多い。先行研究においては,示指の他動運動時に誘発される運動誘発電位(motor evoked potential:MEP)は関節角度と運動方向の違いにより異なると報告されている(Edward, et al., 2004)。示指の内転運動時には第一背側骨間筋(First dorsal interosseous muscle:FDI)より導出されるMEP振幅値は安静時と比べ減弱し,外転運動時には内転時に比べMEP振幅値は増大することが報告されている。しかしながら,先行研究では外転運動時,内転運動時ともに示指外転位から中間位においてMEPを計測しており,内転位における皮質脊髄路の興奮性の変化は検討されていない。よって本研究では,示指の他動運動時における,内転位での関節角度および運動方向の違いが皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
同意が得られた健常成人13名(23.7±3.89歳)を対象として,右示指内外転他動運動中のMEP振幅を計測した。MEPは経頭蓋磁気刺激(Transcranial magnetic stimulation:TMS)を左側一次運動野手指領域に与え,右FDIから記録した。刺激強度は安静時に1 mVを誘発する強度とした。右示指他動運動は外転10°から内転30°の運動範囲で行い,運動速度は80°/secとした。MEP振幅を計測する関節角度および運動方向の条件は,内転運動時における内転0°および内転20°,外転運動時における内転20°および内転0°とし,5秒に1回の頻度で内転または外転運動を行った。安静時と他動運動中に計測したMEP各12波形の加算平均値を算出し,安静時に計測したMEP振幅値と他動運動中に計測したMEP振幅値を比較した。統計学的処理には反復測定一元配置分散分析を行った後,多重比較検定(Dunnett法)を用いた。なお,有意水準は5%とした。
【結果】
反復測定一元配置分散分析の結果,条件要因に主効果を認めた(p<0.05)。各条件のMEP振幅値(平均値±標準誤差)は,安静時では0.98±0.03 mV,内転運動時の内転0°では1.50±0.15 mV,内転20°では0.86±0.13 mV,外転運動時の内転20°では0.99±0.13 mV,内転0°では0.98±0.14 mVであった。安静時と比べ内転運動時の内転0°ではMEP振幅値の有意な増大が認められた(p<0.05)。しかしながら,安静時と比べ内転運動時の内転20°,外転運動時の内転20°,内転0°ではMEP振幅値に有意な差は認められなかった。
【結論】
本研究において,安静時と比較して内転運動時の内転0°にて計測したMEP振幅値が有意に増大することが明らかになった。この結果から,他動運動中の関節角度および運動方向の違いが皮質脊髄路の興奮性に影響を与える可能性が示唆された。