[P-KS-18-3] 加齢が傾斜反応に及ぼす影響
Keywords:傾斜反応, 加齢, 体幹
【はじめに,目的】側方の姿勢制御能力は,加齢に伴い低下することが明らかにされている。側方の姿勢制御能力を担う要因に,傾斜反応がある。座位の正常な傾斜反応では,座面の傾斜とは反対側へ体幹を側屈し,正中を保持するが,前庭系の障害や,大脳基底核に障害がある者は,傾斜反応が低下し,体幹の側屈が起こらず,座面の傾斜側へ転倒することが明らかにされている。しかし,加齢が傾斜反応に及ぼす影響は明らかにされていない。そこで,本研究は,高齢者と若年者の座面の側方傾斜時の体幹の傾斜を比較し,加齢が傾斜反応に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】高齢群は,1)65歳以上,2)外来理学療法対象者,3)屋外独歩自立,4)中枢神経系疾患の既往が無いこと,(5)ADL自立,とした。若年群は,20~29歳の健常者とした。対象者には,ティルトテーブルの中央で端座位をとらせ,座面を利き手側へ2°/secの速度で水平位(0°)から15°まで傾斜させ,そこで5秒間静止し,水平位へと戻した。座面の傾斜が0°から15°までを上昇域,15°から0°までを下降域とし,座位姿勢を,後方からビデオカメラで撮影した。対象者には,「腕を組み,前を見て,転倒しないよう身体を真っ直ぐ保ちなさい」と指示した。対象者の両側肩峰にマーカーを張り付け,それを結ぶ線を体幹の指標として,座面3°傾斜毎の体幹の傾斜をImage Jを用いて解析した。体幹の傾斜は,水平を基準に,座面の傾斜と同側をマイナス,反対側をプラスと定義した。体幹の傾斜を高齢群と若年群で,対応のないt検定を用いて比較し,有意水準は5%未満とした。
【結果】対象者は,高齢群22名(平均年齢72.5±5.7歳),若年群16名(平均年齢25.3±2.7歳)であった。上昇域の座面3°傾斜で,高齢群と若年群の体幹の傾斜は,それぞれ-0.32±1.31°,-0.33±1.44°,座面6°傾斜で,0.06±1.77°,-0.93±1.90°,座面9°傾斜で,0.32±1.96°,-1.35±2.60°,座面12°傾斜で,1.01±2.04°,-1.49±2.59°,座面15°傾斜で,1.33±2.64°,-0.78±3.18°であった。下降域の座面12°傾斜で,1.67±2.62°,-0.08±2.23°,座面9°傾斜で,2.46±3.05°,0.44±1.92°,座面6°傾斜で,2.72±2.88°,0.86±1.18°,座面3°傾斜で,3.24±3.24°,0.95±1.12°であった。高齢群と若年群の比較では,上昇域の座面9°,12°,15°傾斜と,下降域の座面12°,9°,6°,3°傾斜で,高齢群の体幹の傾斜が有意に大きい値を示した。
【結論】全対象者が座位保持可能であり,座面の傾斜と反対側への体幹側屈を認め,傾斜反応を示した。一方,高齢群と若年群の比較では,高齢群の体幹の傾斜が有意に大きい値を示した。つまり,若年者は,座面の傾斜にかかわらず,体幹をほぼ正中に保持することが可能であるが,高齢者は,座面の傾斜とは反対側へ過度に体幹を傾斜させ,過剰な傾斜反応を示す特徴があることが明らかとなった。
【方法】高齢群は,1)65歳以上,2)外来理学療法対象者,3)屋外独歩自立,4)中枢神経系疾患の既往が無いこと,(5)ADL自立,とした。若年群は,20~29歳の健常者とした。対象者には,ティルトテーブルの中央で端座位をとらせ,座面を利き手側へ2°/secの速度で水平位(0°)から15°まで傾斜させ,そこで5秒間静止し,水平位へと戻した。座面の傾斜が0°から15°までを上昇域,15°から0°までを下降域とし,座位姿勢を,後方からビデオカメラで撮影した。対象者には,「腕を組み,前を見て,転倒しないよう身体を真っ直ぐ保ちなさい」と指示した。対象者の両側肩峰にマーカーを張り付け,それを結ぶ線を体幹の指標として,座面3°傾斜毎の体幹の傾斜をImage Jを用いて解析した。体幹の傾斜は,水平を基準に,座面の傾斜と同側をマイナス,反対側をプラスと定義した。体幹の傾斜を高齢群と若年群で,対応のないt検定を用いて比較し,有意水準は5%未満とした。
【結果】対象者は,高齢群22名(平均年齢72.5±5.7歳),若年群16名(平均年齢25.3±2.7歳)であった。上昇域の座面3°傾斜で,高齢群と若年群の体幹の傾斜は,それぞれ-0.32±1.31°,-0.33±1.44°,座面6°傾斜で,0.06±1.77°,-0.93±1.90°,座面9°傾斜で,0.32±1.96°,-1.35±2.60°,座面12°傾斜で,1.01±2.04°,-1.49±2.59°,座面15°傾斜で,1.33±2.64°,-0.78±3.18°であった。下降域の座面12°傾斜で,1.67±2.62°,-0.08±2.23°,座面9°傾斜で,2.46±3.05°,0.44±1.92°,座面6°傾斜で,2.72±2.88°,0.86±1.18°,座面3°傾斜で,3.24±3.24°,0.95±1.12°であった。高齢群と若年群の比較では,上昇域の座面9°,12°,15°傾斜と,下降域の座面12°,9°,6°,3°傾斜で,高齢群の体幹の傾斜が有意に大きい値を示した。
【結論】全対象者が座位保持可能であり,座面の傾斜と反対側への体幹側屈を認め,傾斜反応を示した。一方,高齢群と若年群の比較では,高齢群の体幹の傾斜が有意に大きい値を示した。つまり,若年者は,座面の傾斜にかかわらず,体幹をほぼ正中に保持することが可能であるが,高齢者は,座面の傾斜とは反対側へ過度に体幹を傾斜させ,過剰な傾斜反応を示す特徴があることが明らかとなった。