第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P19

2016年5月28日(土) 10:30 〜 11:30 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-19-3] 年齢による後方2ステップテストを含めたバランス評価の変化

兎澤良輔1,2, 平野正広1, 川崎翼1, 藤巻晶2, 工藤総司2, 高木亮輔1, 加藤宗規1 (1.了德寺大学健康科学部理学療法学科, 2.葛西整形外科内科リハビリテーション科)

キーワード:後方2ステップテスト, Timed up and go test, 年代比較

【はじめに,目的】

中高齢者の加齢による能力低下や機能障害は転倒を引き起こす要因となるため,加齢よる身体変化を捉える評価は重要である。Fritzらは,後方歩行は前方歩行よりも転倒との関連も高い評価方法で,加齢による身体機能の変化を鋭敏に捉える可能性について示唆している(Fritz, et al., 2013)。しかし,後方歩行は測定中のリスクが高く,臨床に応用しにくい欠点がある。そこで,我々は後方歩行能力を簡便に評価する方法として後方2ステップテストを考案し,その信頼性や後方歩行速度との関連についてこれまで報告してきた(兎澤 他,2015)。本研究では,後方2ステップテストが後方歩行と同様に加齢による変化を敏感に捉える可能性を検討するため,年齢による後方2ステップテストを含めたバランス評価の変化について比較検討した。


【方法】

協力の得られた中高齢者のボランティア26名(60歳代7名,70歳代11名,80歳代8名)を対象とした。平均身長,体重(標準偏差)は154.9(8.38)cm,53.3(10.6)kgであった。対象者は後方2ステップテスト,前方2ステップテスト,Functional reach test(以下FRT),Timed up and go test(以下TUG),片脚立位の5つの評価を実施した。2ステップテストは最大努力で2歩前進もしくは後進させた際の最大2歩幅(cm)を計測し,それを身長(cm)で除した数値を2ステップ値として算出した。2ステップテストは2回連続で実施し,1回目は練習として除外し,2回目の結果を代表値として採用した。これらの評価項目の年齢による変化を検討するために中高齢者を60歳代,70歳代,80歳代の3群に分け,各評価項目の年代間の値を比較した。統計は一元配置分散分析と多重比較法としてTukey法,またはKruskal-Wallisの検定と多重比較法としてSteel-Dawass法を実施した。統計処理はすべてR2.8.1を使用し,有意水準は5%とした。


【結果】

後方2ステップテストは60歳代と70歳代,60歳代と80歳代との間で有意な差を認め,年齢が高くなると測定値は小さくなった。また,TUGは60歳代と80歳代の間に有意な差を認め,年齢が高くなると測定値は大きくなった。その他の前方2ステップテスト,FRT,片脚立位は各年代の間に有意な差を認めなかった。


【結論】

本研究の結果,後方2ステップテストやTUGは年代によって値が変化することが明らかになった。TUGは60歳代と80歳代のみに有意な差が認められたが,後方2ステップテストでは60歳代と70歳代の間にも有意な差が認められた。この結果から,後方2ステップテストはTUGで検出できなかった60歳代と70歳代の間の変化も抽出できるため,年代による変化を敏感に捉える可能性が示唆された。それにより,TUGで検出できない転倒群を判別できる可能性がある。しかし,本研究では転倒との関連を明らかにすることはできなかった。今後,対象者の人数を増やし,転倒との関連についても明らかにしていく。