[P-KS-19-4] 足部アーチ高率の違いが荷重応答期の衝撃吸収に与える影響
キーワード:足部アーチ高率, 衝撃吸収, 歩行分析
【はじめに,目的】
足部アーチに関するこれまでの研究では,異常に高いアーチを持つ足部には疲労骨折の発生率が高いことが報告されている。一方,偏平足は距骨下関節の異常な回内を伴い,距骨や舟状骨は下降し,隣接する皮膚にしばしば胼胝を作ることなどが報告されている。また,立脚初期の距骨下関節の回内が足部内部の衝撃の緩衝を可能にするとされているが,アーチ高率の違いによる歩行時の衝撃吸収機能に関して検討した報告は見当たらない。本研究では,足部アーチ高率に焦点をあて,荷重応答期の衝撃吸収に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
健常成人24名(21.6±0.7歳)を対象とし,鳴海らの分類結果をもとに,低アーチ群8名(L群:アーチ高率11%未満),中等度群8名(M群),高アーチ群8名(H群:15%以上)に分類した。計測は三次元動作解析装置(VICON:Oxford-foot-model)及び,加速度計(DELSYS:右踵部・膝関節外側上顆に貼付),床反力計(KISTLER)を用い,運動学・運動力学的パラメータを求めた。また,衝撃吸収の指標として立脚初期の膝屈曲角度と足部に対する外側上顆の鉛直方向最大加速度伝達率を選択した。後者は足部の加速度を100とした場合の外側上顆の加速度の割合であり,伝達率が低いことは衝撃吸収率が高いことを意味する。解析は衝撃吸収の指標に関して,一元配置分散分析を用いて3群間の比較を行った。また,足部から外側上顆への加速度伝達率に影響する変数を決定するために各測定パラメータを独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った。
【結果】
立脚初期の膝屈曲角度では,3群間に差は認められなかった。加速度伝達率はH群(55.9±15.2%),M群(49.1±15.9%),L群(39.2±16.2%)の順に高値を示したが,有意確率は0.094であった。しかし,H群とL群の2群間の比較(t検定)では,効果量(d)=1.04,有意確率0.056を示し,L群に加速度伝達率が低い傾向が認められた。重回帰分析の結果,衝撃吸収に関与する因子として立脚期アーチ高率最低値,足関節回内角度,足関節最大回内位までの角加速度の3項目が抽出された(R2=0.50)。
【結論】
荷重応答期における足部から外側上顆までの加速度伝達率は,足部アーチで分類した3群間に明らかな差は認められなかったが,H群とL群の2群間の比較結果からL群の衝撃吸収機能が高い可能性が十分考えられる。これは,座位にて足部アーチのバネ定数を計測し,低アーチ群は荷重伝達率が悪いとした清水らの報告と類似している。重回帰分析の結果からも足部アーチや距骨下関節,距腿関節よる衝撃吸収への影響が示唆された。一方で,衝撃吸収の際に足部に加わる負荷が疼痛を引き起こすなど,足部へ悪影響を及ぼす可能性も考えられる。今後,対象者数を増やして足部アーチ高率による衝撃吸収への影響をより明らかにするとともに関節負荷を含めた詳細な検討が必要と考える。
足部アーチに関するこれまでの研究では,異常に高いアーチを持つ足部には疲労骨折の発生率が高いことが報告されている。一方,偏平足は距骨下関節の異常な回内を伴い,距骨や舟状骨は下降し,隣接する皮膚にしばしば胼胝を作ることなどが報告されている。また,立脚初期の距骨下関節の回内が足部内部の衝撃の緩衝を可能にするとされているが,アーチ高率の違いによる歩行時の衝撃吸収機能に関して検討した報告は見当たらない。本研究では,足部アーチ高率に焦点をあて,荷重応答期の衝撃吸収に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
健常成人24名(21.6±0.7歳)を対象とし,鳴海らの分類結果をもとに,低アーチ群8名(L群:アーチ高率11%未満),中等度群8名(M群),高アーチ群8名(H群:15%以上)に分類した。計測は三次元動作解析装置(VICON:Oxford-foot-model)及び,加速度計(DELSYS:右踵部・膝関節外側上顆に貼付),床反力計(KISTLER)を用い,運動学・運動力学的パラメータを求めた。また,衝撃吸収の指標として立脚初期の膝屈曲角度と足部に対する外側上顆の鉛直方向最大加速度伝達率を選択した。後者は足部の加速度を100とした場合の外側上顆の加速度の割合であり,伝達率が低いことは衝撃吸収率が高いことを意味する。解析は衝撃吸収の指標に関して,一元配置分散分析を用いて3群間の比較を行った。また,足部から外側上顆への加速度伝達率に影響する変数を決定するために各測定パラメータを独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った。
【結果】
立脚初期の膝屈曲角度では,3群間に差は認められなかった。加速度伝達率はH群(55.9±15.2%),M群(49.1±15.9%),L群(39.2±16.2%)の順に高値を示したが,有意確率は0.094であった。しかし,H群とL群の2群間の比較(t検定)では,効果量(d)=1.04,有意確率0.056を示し,L群に加速度伝達率が低い傾向が認められた。重回帰分析の結果,衝撃吸収に関与する因子として立脚期アーチ高率最低値,足関節回内角度,足関節最大回内位までの角加速度の3項目が抽出された(R2=0.50)。
【結論】
荷重応答期における足部から外側上顆までの加速度伝達率は,足部アーチで分類した3群間に明らかな差は認められなかったが,H群とL群の2群間の比較結果からL群の衝撃吸収機能が高い可能性が十分考えられる。これは,座位にて足部アーチのバネ定数を計測し,低アーチ群は荷重伝達率が悪いとした清水らの報告と類似している。重回帰分析の結果からも足部アーチや距骨下関節,距腿関節よる衝撃吸収への影響が示唆された。一方で,衝撃吸収の際に足部に加わる負荷が疼痛を引き起こすなど,足部へ悪影響を及ぼす可能性も考えられる。今後,対象者数を増やして足部アーチ高率による衝撃吸収への影響をより明らかにするとともに関節負荷を含めた詳細な検討が必要と考える。