[P-KS-19-5] 足底の刺激部位の違いが歩行中の重心動揺と下肢筋活動に及ぼす影響
キーワード:インソール, 足底刺激, 歩行分析
【はじめに,目的】人間の足底部には感覚受容器が多く存在することが知られており,臨床においても足底への感覚刺激を立位姿勢や歩行改善の手段として用いられている。また,歩行中の足底全面刺激時には,刺激なし時に比べ,歩行速度,ストライド長が減少したという報告(Anna L Hatton 2012)や,前脛骨筋とヒラメ筋の筋活動が減少したといった報告(Matthew A.Nurse 2005)がなされている。しかし,異なる刺激部位による下肢筋活動や重心動揺への影響を検討した報告は殆どみられない。本研究の目的は刺激を与える足底の部位の違いが,歩行中の下肢の筋活動及び運動学・力学的因子に与える影響を明らかにすることである。
【方法】整形外科的疾患及び神経学的疾患のない健常成人10名(年齢:21.9±0.3歳,身長:164±11.4cm,体重:60.1±9.7kg)を対象とし,測定機器として3次元動作解析装置(VMS社,VICON-MX:Plug-in gait full body model),床反力計(KISTLER社),表面筋電計(DELSYS社)を使用した。足底の刺激には痛みを生じない強度でかつ刺激をはっきり自覚できる素材として,靴底などに用いられる亀甲シート(合成樹脂製,厚さ3.2mm)を採用した。足底全面刺激,外側刺激,内側刺激,刺激なしの4条件に合わせて靴型に切り取った亀甲シートをケアシューズ(徳式産業株式会社製あゆみ)の内底に貼付し,4条件の歩行を3次元動作解析装置及び床反力計を備えた歩行路にて行わせた。また,筋電計を同期させて下肢・体幹の筋活動(%MVC)を測定した。ケアシューズ着用後は刺激による跛行等が出現しないよう,試行前に十分な歩行練習を行った。各条件3試行の平均値を用いて,各因子に関する条件間の比較を反復測定分散分析及び多重比較法(Dunnett法)にて検討した。有意水準は5%とした。
【結果】4条件間では歩行速度やストライド長に有意な差は認められなかった。全面刺激時には,刺激なし時と比較して,立脚初期における側方への重心移動が有意に増大した。また,内側刺激時には,刺激なし時と比べて,立脚中期の大殿筋の筋活動が有意に増大した。
【結論】立脚初期では刺激なし時と比較し,全面刺激時に側方への重心移動が増大したことから足底面への刺激が歩行中の重心動揺に影響を及ぼしうることが明らかになった。立脚中期において,内側刺激時に大殿筋の筋活動が増加した理由として,立脚中期における骨盤の安定性を維持する為に筋活動が高まった可能性が考えられる。また,これらの結果から,足底の刺激部位の違いにより,歩行中の重心移動や下肢筋活動への効果が異なる可能性が示唆された。今後は刺激の定量化とその種類や強度を考慮し,刺激部位を変化させた際の重心動揺や筋活動への影響を詳細に検討していく必要性があると考える。
【方法】整形外科的疾患及び神経学的疾患のない健常成人10名(年齢:21.9±0.3歳,身長:164±11.4cm,体重:60.1±9.7kg)を対象とし,測定機器として3次元動作解析装置(VMS社,VICON-MX:Plug-in gait full body model),床反力計(KISTLER社),表面筋電計(DELSYS社)を使用した。足底の刺激には痛みを生じない強度でかつ刺激をはっきり自覚できる素材として,靴底などに用いられる亀甲シート(合成樹脂製,厚さ3.2mm)を採用した。足底全面刺激,外側刺激,内側刺激,刺激なしの4条件に合わせて靴型に切り取った亀甲シートをケアシューズ(徳式産業株式会社製あゆみ)の内底に貼付し,4条件の歩行を3次元動作解析装置及び床反力計を備えた歩行路にて行わせた。また,筋電計を同期させて下肢・体幹の筋活動(%MVC)を測定した。ケアシューズ着用後は刺激による跛行等が出現しないよう,試行前に十分な歩行練習を行った。各条件3試行の平均値を用いて,各因子に関する条件間の比較を反復測定分散分析及び多重比較法(Dunnett法)にて検討した。有意水準は5%とした。
【結果】4条件間では歩行速度やストライド長に有意な差は認められなかった。全面刺激時には,刺激なし時と比較して,立脚初期における側方への重心移動が有意に増大した。また,内側刺激時には,刺激なし時と比べて,立脚中期の大殿筋の筋活動が有意に増大した。
【結論】立脚初期では刺激なし時と比較し,全面刺激時に側方への重心移動が増大したことから足底面への刺激が歩行中の重心動揺に影響を及ぼしうることが明らかになった。立脚中期において,内側刺激時に大殿筋の筋活動が増加した理由として,立脚中期における骨盤の安定性を維持する為に筋活動が高まった可能性が考えられる。また,これらの結果から,足底の刺激部位の違いにより,歩行中の重心移動や下肢筋活動への効果が異なる可能性が示唆された。今後は刺激の定量化とその種類や強度を考慮し,刺激部位を変化させた際の重心動揺や筋活動への影響を詳細に検討していく必要性があると考える。