[P-KS-20-3] 開き戸開扉動作の力学的分析
キーワード:先行随伴性予測姿勢調節, 関節モーメント, COP
【はじめに,目的】
日常生活に多い開き戸開扉動作は,前方リーチ動作とともに重心の前後移動が必要とされ,先行随伴性予測姿勢調節(APA)が十分に機能しない状況下では開扉動作に困難を伴うことが予想される。しかし先行研究では,日常生活指導において開き戸の開扉動作の具体的な指導方法はなかった。本研究は開き戸開扉動作時の下肢にかかる負荷量と重心移動量に着目し,開き戸に対する足部の角度の違いによる開扉動作の力学的分析を行った。
【方法】
対象は,研究の同意を得られた過去3か月において整形外科疾患を有さない20代男女健常学生9名(年齢21±1歳)とした。測定機器は,3次元動作解析システムVICON NEXUS,床反力計2枚(AMTI社製),赤外線カメラ6台(100Hz)を使用した。赤外線反射マーカーを被験者に全身計35箇所と開き戸に6箇所貼付した。使用する開き戸は木材で自作し,連結金具を用いて平行棒に固定した。被験者は裸足にて両足関節内側果間を両肩峰幅で,右肩関節屈曲位90°での上肢長を開き戸からの距離として各床反力計の上に静止立位を保つよう指示した。課題動作は,右上肢を前方リーチしドアノブを把持した状態を開始肢位とし,60回毎分の速度で2秒間かけて開扉動作を実施した。計測条件は,開き戸に対する足部の位置90°,45°の2条件を各3施行で計6施行をランダムに行った。解析パラメータは,①両下肢COP前方移動量最大値,②①における股関節,足関節モーメント,床反力鉛直,前後成分とした。COP前方移動量は静止立位時の足関節マーカー前後座標を起点とした。2条件間でのパラメータを比較するために各動作3施行の平均値を採用し,Wilcoxonの符号付順位和検定を用いて統計処理を行った。
【結果】
両側下肢ともに足関節底屈,股関節伸展モーメントが発生し,45°において共に有意に減少していた(90°:左足関節6.0±1.7Nm/m・kg 右足関節4.3±1.4 Nm/m・kg 左股関節0.6±2.0 Nm/m・kg 右股関節-0.7±0.8 Nm/m・kg 45°:左足関節3.8±2.1 Nm/m・kg 右足関節3.6±1.2 Nm/m・kg 左股関節0.2±1.9 Nm/m・kg 右股関節-0.3±0.7 Nm/m・kg,p<0.01)。足関節底屈モーメント最大時におけるCOP前方移動量は45°において両側下肢ともに有意に減少しており(p<0.01),左下肢では床反力鉛直,後方成分が有意に増加していた(p<0.01)。その他のパラメータでは有意差は見られなかった。
【結論】
立ち位置45°において床反力鉛直,後方成分が増加していたのにも関わらず,足関節底屈モーメントが減少していたのは,立ち位置90°よりCOP前方移動量が小さく足関節と床反力ベクトルとのレバーアームが短いことによる影響と考えられた。立ち位置45°から開扉動作は,前方への重心移動量が少なく足関節底屈筋群の活動量が少ない動作になることが示唆され,姿勢制御能力が低下している中枢疾患患者や高齢者のADL指導の一助になるものと考えた。
日常生活に多い開き戸開扉動作は,前方リーチ動作とともに重心の前後移動が必要とされ,先行随伴性予測姿勢調節(APA)が十分に機能しない状況下では開扉動作に困難を伴うことが予想される。しかし先行研究では,日常生活指導において開き戸の開扉動作の具体的な指導方法はなかった。本研究は開き戸開扉動作時の下肢にかかる負荷量と重心移動量に着目し,開き戸に対する足部の角度の違いによる開扉動作の力学的分析を行った。
【方法】
対象は,研究の同意を得られた過去3か月において整形外科疾患を有さない20代男女健常学生9名(年齢21±1歳)とした。測定機器は,3次元動作解析システムVICON NEXUS,床反力計2枚(AMTI社製),赤外線カメラ6台(100Hz)を使用した。赤外線反射マーカーを被験者に全身計35箇所と開き戸に6箇所貼付した。使用する開き戸は木材で自作し,連結金具を用いて平行棒に固定した。被験者は裸足にて両足関節内側果間を両肩峰幅で,右肩関節屈曲位90°での上肢長を開き戸からの距離として各床反力計の上に静止立位を保つよう指示した。課題動作は,右上肢を前方リーチしドアノブを把持した状態を開始肢位とし,60回毎分の速度で2秒間かけて開扉動作を実施した。計測条件は,開き戸に対する足部の位置90°,45°の2条件を各3施行で計6施行をランダムに行った。解析パラメータは,①両下肢COP前方移動量最大値,②①における股関節,足関節モーメント,床反力鉛直,前後成分とした。COP前方移動量は静止立位時の足関節マーカー前後座標を起点とした。2条件間でのパラメータを比較するために各動作3施行の平均値を採用し,Wilcoxonの符号付順位和検定を用いて統計処理を行った。
【結果】
両側下肢ともに足関節底屈,股関節伸展モーメントが発生し,45°において共に有意に減少していた(90°:左足関節6.0±1.7Nm/m・kg 右足関節4.3±1.4 Nm/m・kg 左股関節0.6±2.0 Nm/m・kg 右股関節-0.7±0.8 Nm/m・kg 45°:左足関節3.8±2.1 Nm/m・kg 右足関節3.6±1.2 Nm/m・kg 左股関節0.2±1.9 Nm/m・kg 右股関節-0.3±0.7 Nm/m・kg,p<0.01)。足関節底屈モーメント最大時におけるCOP前方移動量は45°において両側下肢ともに有意に減少しており(p<0.01),左下肢では床反力鉛直,後方成分が有意に増加していた(p<0.01)。その他のパラメータでは有意差は見られなかった。
【結論】
立ち位置45°において床反力鉛直,後方成分が増加していたのにも関わらず,足関節底屈モーメントが減少していたのは,立ち位置90°よりCOP前方移動量が小さく足関節と床反力ベクトルとのレバーアームが短いことによる影響と考えられた。立ち位置45°から開扉動作は,前方への重心移動量が少なく足関節底屈筋群の活動量が少ない動作になることが示唆され,姿勢制御能力が低下している中枢疾患患者や高齢者のADL指導の一助になるものと考えた。