第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P20

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-20-5] 姿勢選択能力がパフォーマンスに及ぼす影響

楠見陸, 阿江麻里奈, 森千晴, 森川智栄, 岩田晃 (大阪府立大学地域保健学域総合リハビリテーション学類理学療法学専攻)

Keywords:姿勢選択能力, 走行, 垂直跳び

【はじめに,目的】

走行やジャンプなどのパフォーマンスに,実施時の姿勢が影響を及ぼすことが多くの先行研究で明らかにされている。Frostらは,短距離走の走行前の姿勢が走行速度に影響を及ぼしていると報告しており,同様にBobbertらは,垂直跳びの跳躍前の姿勢が跳躍高に影響を及ぼしていると報告している。これらの先行研究では,姿勢は検者により指定されているが,通常,パフォーマンスを行う際の姿勢は,実施者が自ら選択するものである。我々は,実施者自らが適切な姿勢を選択する能力(以下,姿勢選択能力)が,パフォーマンスに影響すると考え,それを検証することを本研究の目的とした。本研究では,膝関節伸展筋力を測定する際の膝関節角度を実施者が,より適切に選択する能力と,パフォーマンスの関係性について検証を行った。


【方法】

対象は健常若年女性46名(年齢20.1±1.0歳)とした。対象者が最大筋力を発揮できると予測した関節角度(以下,自由角度)と,実際に最大筋力が得られた関節角度(以下,ピーク角度)の差を,姿勢選択能力と規定した。自由角度は,対象者に筋力測定器(BIODEX)上で座位をとらせ,自身が最も等尺性膝関節伸展筋力が発揮できると予測,提示した膝関節角度とした。ピーク角度は,丹羽らの方法に従い,膝関節屈曲30°から100°まで10°刻みの8条件下でランダムに測定した等尺性膝関節伸展筋力のうち,最大筋力を発揮した膝関節角度とした。そして,ピーク角度と自由角度の差の絶対値(以下,両条件角度差)を算出し,姿勢選択能力の指標とした。両条件角度差が小さければ姿勢選択能力が高いと考えられ,両条件角度差が大きければ姿勢選択能力が低いと考えられる。そこで,全対象者の両条件角度差の中央値を算出し,角度差の小さい群,つまり姿勢選択能力が高い群(以下,H群)と角度差の大きい群,つまり姿勢選択能力が低い群(以下,L群)に群分けした。

パフォーマンスの指標として,6m走行時間と垂直跳びの跳躍高を測定した。6m走行時間は赤外線ストップウォッチ(デジタイマーII)を用いて測定した。垂直跳びの跳躍高は光学式歩行分析装置(Optojump)を用いて測定した。

統計処理は,6m走行時間と垂直跳びの跳躍高について,H群とL群の比較を行うために対応のないt検定を用いた。すべての統計解析にはSPSS Ver.21.0を用い,有意水準は5%未満とした。


【結果】

6m走行時間はH群が1.43±0.08秒,L群が1.55±0.09秒,垂直跳びの跳躍高はH群が30.6±3.3cm,L群が28.1±4.8cmであった。6m走行時間はL群と比較してH群が有意に短く(p<0.01),垂直跳びの跳躍高はL群と比較してH群が有意に高い値を示した(p<0.05)。


【結論】

姿勢選択能力の高い群が,短距離の走行時間と垂直跳びの跳躍高の双方で優れた結果を示すことが本研究で明らかになった。このことから,姿勢選択能力の違いがパフォーマンスに影響を与える重要な因子の一つであることが示唆された。