[P-KS-21-2] 視覚情報が着座動作に与える影響について
三次元動作解析による検討
Keywords:着座動作, 視覚情報, 三次元動作解析
【はじめに,目的】
高齢者の転倒は居室における立ち座りといった動作変換時,かつ暗い時間帯に多く発生している。また,立ち上がりの研究に比べて着座動作の関する研究は少ない現状もある。以上のことからより効率的な着座動作指導や環境整備によって転倒を主とする着座時の傷害を予防するために,今回三次元動作解析を用いてまず健常者における視覚情報の有無が着座動作に与える影響について検討することを本研究の目的とした。
【方法】
被験者は重篤な整形疾患の既往の無い健常成人男女13名とし,機器は三次元動作解析システムVICONと床反力計を用いて着座動作における所要時間,身体重心(COM)の軌跡,下肢の関節角度およびモーメントを計測した。座面の高さは足関節0°,膝・股関節屈曲90°になる高さに設定し,両上肢は腰に手をあて使用しないこととした。動作条件は①視覚情報がありイスの高さを把握した状態,②遮光加工を施したゴーグルを装着し視覚情報が無くイスの高さを全く把握していない状態の2条件で着座動作を自由速度で行い,条件の順番はランダム化した。統計処理はデータの正規性の検定後,対応があるT検定を行い有意水準は5%未満とした。
【結果】
所要時間は視覚有りに比べ視覚無しの方が有意に長くなり,特に体幹最大前傾までの屈曲相が延長しその後の着殿までの時間が短縮する傾向がみられた。視覚無しでの経時的COM軌跡はCOMを前方に残ったまま下降させ,着殿させた後後方移動し始める傾向がみられた。関節角度は股・膝・足関節で視覚有りに比べ,視覚無しの方が有意に大きくなったものの,体幹最大傾斜角度に有意差はみられなかった。下肢関節モーメントは股・膝・足関節の最大値において,すべて有意差はみられなかった。
【結論】
健常者における着座動作ではイスの高さを把握している場合に比べ視覚情報が無く座面の高さがわからない場合,屈曲相が延長し重心が前下方に残ったまま着殿する。下肢関節角度は有意に大きくなるが体幹前傾角度および下肢関節モーメントに差はない。視覚情報の有無による影響は立位~着殿までの間で大きいことが示唆された。つまり視覚情報がない着座動作では,着殿まではCOM後方移動が遅れるため,長時間両足底にてなる支持基底面内に重心を維持しながら股・膝・足関節の深屈曲を行う必要がある。高齢者は体幹・下肢のROM制限や筋力低下,バランス能力の低下等身体的能力の低下が考えられ,視覚情報が無い着座動作に必要とされる機能が不足し転倒に繋がる可能性がある。高齢者の転倒予防のためには更なる研究が必要であるが,本研究は不足する身体機能の検討や重心移動の最小化と下肢負担軽減のため座面を高く,足部をイスに近く置く等環境設定の一助となり転倒リスクを軽減できる可能性がある。
高齢者の転倒は居室における立ち座りといった動作変換時,かつ暗い時間帯に多く発生している。また,立ち上がりの研究に比べて着座動作の関する研究は少ない現状もある。以上のことからより効率的な着座動作指導や環境整備によって転倒を主とする着座時の傷害を予防するために,今回三次元動作解析を用いてまず健常者における視覚情報の有無が着座動作に与える影響について検討することを本研究の目的とした。
【方法】
被験者は重篤な整形疾患の既往の無い健常成人男女13名とし,機器は三次元動作解析システムVICONと床反力計を用いて着座動作における所要時間,身体重心(COM)の軌跡,下肢の関節角度およびモーメントを計測した。座面の高さは足関節0°,膝・股関節屈曲90°になる高さに設定し,両上肢は腰に手をあて使用しないこととした。動作条件は①視覚情報がありイスの高さを把握した状態,②遮光加工を施したゴーグルを装着し視覚情報が無くイスの高さを全く把握していない状態の2条件で着座動作を自由速度で行い,条件の順番はランダム化した。統計処理はデータの正規性の検定後,対応があるT検定を行い有意水準は5%未満とした。
【結果】
所要時間は視覚有りに比べ視覚無しの方が有意に長くなり,特に体幹最大前傾までの屈曲相が延長しその後の着殿までの時間が短縮する傾向がみられた。視覚無しでの経時的COM軌跡はCOMを前方に残ったまま下降させ,着殿させた後後方移動し始める傾向がみられた。関節角度は股・膝・足関節で視覚有りに比べ,視覚無しの方が有意に大きくなったものの,体幹最大傾斜角度に有意差はみられなかった。下肢関節モーメントは股・膝・足関節の最大値において,すべて有意差はみられなかった。
【結論】
健常者における着座動作ではイスの高さを把握している場合に比べ視覚情報が無く座面の高さがわからない場合,屈曲相が延長し重心が前下方に残ったまま着殿する。下肢関節角度は有意に大きくなるが体幹前傾角度および下肢関節モーメントに差はない。視覚情報の有無による影響は立位~着殿までの間で大きいことが示唆された。つまり視覚情報がない着座動作では,着殿まではCOM後方移動が遅れるため,長時間両足底にてなる支持基底面内に重心を維持しながら股・膝・足関節の深屈曲を行う必要がある。高齢者は体幹・下肢のROM制限や筋力低下,バランス能力の低下等身体的能力の低下が考えられ,視覚情報が無い着座動作に必要とされる機能が不足し転倒に繋がる可能性がある。高齢者の転倒予防のためには更なる研究が必要であるが,本研究は不足する身体機能の検討や重心移動の最小化と下肢負担軽減のため座面を高く,足部をイスに近く置く等環境設定の一助となり転倒リスクを軽減できる可能性がある。