[P-KS-22-5] 超音波診断装置を用いた立ち上がり動作時における腓腹筋内側頭の動態変化について
キーワード:超音波診断装置, 立ち上がり動作, 筋線維
【はじめに,目的】
一般に下腿前傾に伴い腓腹筋は遠心性収縮が生じると言われているが,超音波診断装置を用いた先行研究では,静止立位での前方動揺時に腓腹筋は短縮しているとの逆説的な報告がある。臨床場面では動作観察における角度変化から筋の動態変化を推定しているが,動作時における視覚的な筋の動態変化を研究した報告は少ない。そこで本研究の目的は,立ち上がり時の腓腹筋内側頭の動態変化を,超音波診断装置を用いて視覚的に観察することとした。
【方法】
本研究に対し同意を得られた健常男性10名(25±2.4歳)を対象。超音波診断装置(GE Healthcare社製,周波数13MHz)にて8LSリニア型プローブを用いた。測定部位は右腓腹筋内側頭とし,筋腱移行部が超音波画像の画面に映るよう右下腿後面に固定。また,プローブの固定場所の妥当性を評価するため,先行研究を元に皮膚に反射マーカーを固定しプローブの位置変化がないかを検討。測定は膝関節90°,胸の前で両手を組んだ座位を開始肢位とし,立ち上がりを5回施行。またエコー動画と立ち上がり動作をビデオカメラにて録画。動画解析には映像解析ソフトウェアDartfish 7.0を使用し,エコー動画と立ち上がり動作の解析区間を同定し,開始相,離殿相,下腿最大前傾相,立位相に相分けした。Image J 1.49Vを用いてエコー動画から各相の静止画を作成し,下腿前傾角(下腿と垂直線のなす角)と筋線維長を計測し各々の平均値を算出。筋線維長については個体差を考慮し,開始相から各相での筋線維変位量(以下,変位量)を使用。画像からはみ出た筋線維については,先行研究を参考に筋内膜と筋線維の延長線上の角度を計測した。
【結果】
下腿前傾角は開始相で11.13°,離殿相で17.99°,下腿最大前傾相で19.34°,立位相で5.12°であった。変位量は開始相から離殿相で110.08mm,離殿相から下腿最大前傾相で172.40mm,下腿最大前傾相から立位相で287.20mmであり,下腿前傾角の増加に伴い筋線維長は増加傾向を示した。またエコー動画の観察より下腿最大前傾相の初期から中期にかけての変位量が大きく,立位相に近づくにつれ変位量の増加は小さくなる傾向を示した。
【結論】
本研究では,下腿前傾角の増加に伴い筋線維は伸張する傾向が見られた。静止立位での前方動揺と比べ立ち上がりでの下腿前傾角は大きくなり,足関節に発生する受動トルクは増加すると考えられる。そのため筋線維が伸張することから腓腹筋は受動トルクに対し大きな制動力を有しておらず,立ち上がり初期における寄与率は低い可能性が示唆された。また,下腿最大前傾相の中期から立位相にかけて変位量の増加が小さくなることから,筋線維は短縮方向に動いていると考えられ,立ち上がり後期では足関節の剛性を高めるために筋活動量が増加している可能性が示唆された。今後は,超音波と筋電図の計測を並行して行い,筋活動と筋線維長の動態変化を明らかにする必要がある。
一般に下腿前傾に伴い腓腹筋は遠心性収縮が生じると言われているが,超音波診断装置を用いた先行研究では,静止立位での前方動揺時に腓腹筋は短縮しているとの逆説的な報告がある。臨床場面では動作観察における角度変化から筋の動態変化を推定しているが,動作時における視覚的な筋の動態変化を研究した報告は少ない。そこで本研究の目的は,立ち上がり時の腓腹筋内側頭の動態変化を,超音波診断装置を用いて視覚的に観察することとした。
【方法】
本研究に対し同意を得られた健常男性10名(25±2.4歳)を対象。超音波診断装置(GE Healthcare社製,周波数13MHz)にて8LSリニア型プローブを用いた。測定部位は右腓腹筋内側頭とし,筋腱移行部が超音波画像の画面に映るよう右下腿後面に固定。また,プローブの固定場所の妥当性を評価するため,先行研究を元に皮膚に反射マーカーを固定しプローブの位置変化がないかを検討。測定は膝関節90°,胸の前で両手を組んだ座位を開始肢位とし,立ち上がりを5回施行。またエコー動画と立ち上がり動作をビデオカメラにて録画。動画解析には映像解析ソフトウェアDartfish 7.0を使用し,エコー動画と立ち上がり動作の解析区間を同定し,開始相,離殿相,下腿最大前傾相,立位相に相分けした。Image J 1.49Vを用いてエコー動画から各相の静止画を作成し,下腿前傾角(下腿と垂直線のなす角)と筋線維長を計測し各々の平均値を算出。筋線維長については個体差を考慮し,開始相から各相での筋線維変位量(以下,変位量)を使用。画像からはみ出た筋線維については,先行研究を参考に筋内膜と筋線維の延長線上の角度を計測した。
【結果】
下腿前傾角は開始相で11.13°,離殿相で17.99°,下腿最大前傾相で19.34°,立位相で5.12°であった。変位量は開始相から離殿相で110.08mm,離殿相から下腿最大前傾相で172.40mm,下腿最大前傾相から立位相で287.20mmであり,下腿前傾角の増加に伴い筋線維長は増加傾向を示した。またエコー動画の観察より下腿最大前傾相の初期から中期にかけての変位量が大きく,立位相に近づくにつれ変位量の増加は小さくなる傾向を示した。
【結論】
本研究では,下腿前傾角の増加に伴い筋線維は伸張する傾向が見られた。静止立位での前方動揺と比べ立ち上がりでの下腿前傾角は大きくなり,足関節に発生する受動トルクは増加すると考えられる。そのため筋線維が伸張することから腓腹筋は受動トルクに対し大きな制動力を有しておらず,立ち上がり初期における寄与率は低い可能性が示唆された。また,下腿最大前傾相の中期から立位相にかけて変位量の増加が小さくなることから,筋線維は短縮方向に動いていると考えられ,立ち上がり後期では足関節の剛性を高めるために筋活動量が増加している可能性が示唆された。今後は,超音波と筋電図の計測を並行して行い,筋活動と筋線維長の動態変化を明らかにする必要がある。