[P-KS-23-3] 起き上がり速度変化における体幹運動の解析
―「普通」と「遅い」速度との比較―
キーワード:起き上がり, 体幹運動, 3次元動作解析
【はじめに】起き上がり動作について研究は,他の基本動作のように動作周期における時系列的な関節角度変化を定量的に示されていない。本研究では,起き上がり動作において骨盤を原点とした運動座標系を用いて,起き上がり速度変化による体幹運動を定量化し,速度変化による起き上がり動作の特性を明らかにする。
【方法】本研究で比較した2つの速度の違いによる起き上がり動作を選定するために,2回の実験を設けている。1回目の実験では,参加した12名の被検者に「右側へ,いつもと同じように起き上がってください」とだけ指示した。その起き上がり動作について,起き上がり時間を算出し,またSarnackiの分類による体幹回旋運動を伴う起き上がり(Roll Off)のみを選択し,「普通」の起き上がり速度による起き上がりデータとし6名存在した(平均年齢23.3±3.5歳)。この6名の起き上がり動作の遂行時間は2.38±0.24秒であった。
2回目の実験は,「普通」の起き上がり遂行時間で得られた標準偏差の2SDを越えるように,起き上がり遂行時間を3秒程度で,11名の被検者に起き上がるように指示した。そして1回目の実験同様に,体幹回旋運動を伴う起き上がり(Roll Off)を選択し,これを「遅い」起き上がりとし5名存在した(平均年齢22.0±2.5歳)。「遅い」起き上がり動作の遂行時間の平均は,3.53±0.16秒であった。
本研究で設定した「普通」「遅い」の起き上がり動作を4台のデジタルビデオカメラを用いて撮影した(30 fps)。ビデオ解析ソフト(Frame Dias IV)を用いて,身体29点を手動デジタイズした。本研究では,骨盤に対する体幹角度を算出するために,右上前腸骨棘を原点とし,右上前腸骨棘から左上前腸骨棘を向かうベクトルをZ軸,体幹長軸をX軸,ZX面に直行するベクトルをY軸とする右手系の運動座標系を定義した。統計学的検討には,対応のないT-testを用いた。
【結果】「遅い」起き上がり動作は,「普通」の起き上がり動作と比較して,体幹回旋角度が有意に大きく(p<0.05),左側への体幹側屈角度が大きい傾向にあった(p=0.07)。
【結論】本研究の「普通」の起き上がり遂行時間は,先行研究で報告されている若年者のデータと同程度である(Alexander, 1992)。高齢者は若年者と比較して,起き上がり動作速度が遅く,また体幹回旋運動と側屈運動が大きいと言われているが,定量的な数値で示されていない(MoCoy, 1993)。「遅い」起き上がり動作では,身体質量の大きい上半身を離床させOn Elbowになる際に,体幹を速く屈曲させる,または下肢の振りおろしによる運動量を利用することができない。そのため上肢支持を多用し,手支持で構成される支持基底面内に上半身重心を投影させるために,体幹回旋角度や体幹側屈角度が増加したものと考えられる。
【方法】本研究で比較した2つの速度の違いによる起き上がり動作を選定するために,2回の実験を設けている。1回目の実験では,参加した12名の被検者に「右側へ,いつもと同じように起き上がってください」とだけ指示した。その起き上がり動作について,起き上がり時間を算出し,またSarnackiの分類による体幹回旋運動を伴う起き上がり(Roll Off)のみを選択し,「普通」の起き上がり速度による起き上がりデータとし6名存在した(平均年齢23.3±3.5歳)。この6名の起き上がり動作の遂行時間は2.38±0.24秒であった。
2回目の実験は,「普通」の起き上がり遂行時間で得られた標準偏差の2SDを越えるように,起き上がり遂行時間を3秒程度で,11名の被検者に起き上がるように指示した。そして1回目の実験同様に,体幹回旋運動を伴う起き上がり(Roll Off)を選択し,これを「遅い」起き上がりとし5名存在した(平均年齢22.0±2.5歳)。「遅い」起き上がり動作の遂行時間の平均は,3.53±0.16秒であった。
本研究で設定した「普通」「遅い」の起き上がり動作を4台のデジタルビデオカメラを用いて撮影した(30 fps)。ビデオ解析ソフト(Frame Dias IV)を用いて,身体29点を手動デジタイズした。本研究では,骨盤に対する体幹角度を算出するために,右上前腸骨棘を原点とし,右上前腸骨棘から左上前腸骨棘を向かうベクトルをZ軸,体幹長軸をX軸,ZX面に直行するベクトルをY軸とする右手系の運動座標系を定義した。統計学的検討には,対応のないT-testを用いた。
【結果】「遅い」起き上がり動作は,「普通」の起き上がり動作と比較して,体幹回旋角度が有意に大きく(p<0.05),左側への体幹側屈角度が大きい傾向にあった(p=0.07)。
【結論】本研究の「普通」の起き上がり遂行時間は,先行研究で報告されている若年者のデータと同程度である(Alexander, 1992)。高齢者は若年者と比較して,起き上がり動作速度が遅く,また体幹回旋運動と側屈運動が大きいと言われているが,定量的な数値で示されていない(MoCoy, 1993)。「遅い」起き上がり動作では,身体質量の大きい上半身を離床させOn Elbowになる際に,体幹を速く屈曲させる,または下肢の振りおろしによる運動量を利用することができない。そのため上肢支持を多用し,手支持で構成される支持基底面内に上半身重心を投影させるために,体幹回旋角度や体幹側屈角度が増加したものと考えられる。