[P-KS-23-4] 健常者における目的姿勢の違いが寝返り動作パターンに及ぼす影響
~三次元動作解析システムを用いた検討~
キーワード:寝返り, 動作パターン, 三次元動作解析
【はじめに,目的】
寝返り動作はベッド上での移動性スキルの重要な要素であり,多くの運動課題に不可欠な構成要素である。動作パターンの多様性とともに,目的姿勢や動作によって適切な動作パターンを選択する適応性も求められる。臨床場面では画一的な動作パターンは可能だが,動作パターンの多様性や適応性が乏しい患者を経験する。例えば,寝返り動作は可能だが側臥位で止まれない患者や,起き上がり動作に汎化しづらい寝返り動作パターンを選択する患者を経験する。諸家により目的動作と寝返り動作パターンの関係は示唆されているが,詳細な検証はされていない。そこで,本研究の目的は健常者における目的姿勢の違いが寝返り動作パターンに及ぼす影響を検討し,理学療法評価・治療の一助とすることである。
【方法】
対象は整形外科的・神経学的疾患のない健常男性29名とし,属性は平均年齢21.6(19~30)歳,平均身長172.3±6.0cm,平均体重63.3±7.5kgであった。計測課題は背臥位から腹臥位までの寝返り動作(腹臥位群)と,背臥位から側臥位までの寝返り動作(側臥位群)の2課題とした。動作方法の指示は行わず練習後に言語的合図のみで至適速度で各3試行実施し,各3試行目を解析対象とした。測定には三次元動作解析システムVICON NEXUSを使用し,赤外線カメラ8台と赤外線反射マーカーを用いて行った。マーカーは体表面上の所定の位置に静止立位時39個,動作計測時27個の標点を設置・貼付し,課題動作中のマーカー位置を計測した。計測により得られた標点の三次元座標データを用いて,課題動作中の体幹角度を算出した。算出にはプログラミングソフトVICON BODY BUILDERを使用し,マーカー補正とオイラー角の算出を行った。データ解析区間は,2群とも動作開始から骨盤が床面に対して90°回旋位に至るまでとし,1動作を100%として時間を正規化した。算出パラメータは,体幹の最大・最小・平均角度と,最大・最小角度到達時間とした。統計学的検討は各パラメータを変数としたクラスター分析(Ward法)により2群の動作パターンを類型化し,各類型の特徴を確認するために,各類型を独立変数,各パラメータを従属変数とした一元配置分散分析(事後検定Scheffe)を行った後,2群の動作パターンを比較した。解析はIBM SPSS Ver.22を用い,有意水準5%で行った。
【結果】
クラスター分析の結果,2群ともに3つの動作パターンに類型化でき,分散分析の結果と先行研究を参考に体幹屈曲,回旋,伸展パターンに類型化した。腹臥位群では屈曲パターン41.4%,回旋パターン20.7%,伸展パターン37.9%,側臥位群では屈曲パターン58.6%,回旋パターン13.8%,伸展パターン27.6%であり,側臥位群で屈曲パターンの割合が多くなった。
【結論】
目的姿勢の違いが寝返り動作パターンに及ぼす影響が示唆され,健常者では目的に応じた動作パターンの選択,動作制御戦略を行う可能性が示唆された。
寝返り動作はベッド上での移動性スキルの重要な要素であり,多くの運動課題に不可欠な構成要素である。動作パターンの多様性とともに,目的姿勢や動作によって適切な動作パターンを選択する適応性も求められる。臨床場面では画一的な動作パターンは可能だが,動作パターンの多様性や適応性が乏しい患者を経験する。例えば,寝返り動作は可能だが側臥位で止まれない患者や,起き上がり動作に汎化しづらい寝返り動作パターンを選択する患者を経験する。諸家により目的動作と寝返り動作パターンの関係は示唆されているが,詳細な検証はされていない。そこで,本研究の目的は健常者における目的姿勢の違いが寝返り動作パターンに及ぼす影響を検討し,理学療法評価・治療の一助とすることである。
【方法】
対象は整形外科的・神経学的疾患のない健常男性29名とし,属性は平均年齢21.6(19~30)歳,平均身長172.3±6.0cm,平均体重63.3±7.5kgであった。計測課題は背臥位から腹臥位までの寝返り動作(腹臥位群)と,背臥位から側臥位までの寝返り動作(側臥位群)の2課題とした。動作方法の指示は行わず練習後に言語的合図のみで至適速度で各3試行実施し,各3試行目を解析対象とした。測定には三次元動作解析システムVICON NEXUSを使用し,赤外線カメラ8台と赤外線反射マーカーを用いて行った。マーカーは体表面上の所定の位置に静止立位時39個,動作計測時27個の標点を設置・貼付し,課題動作中のマーカー位置を計測した。計測により得られた標点の三次元座標データを用いて,課題動作中の体幹角度を算出した。算出にはプログラミングソフトVICON BODY BUILDERを使用し,マーカー補正とオイラー角の算出を行った。データ解析区間は,2群とも動作開始から骨盤が床面に対して90°回旋位に至るまでとし,1動作を100%として時間を正規化した。算出パラメータは,体幹の最大・最小・平均角度と,最大・最小角度到達時間とした。統計学的検討は各パラメータを変数としたクラスター分析(Ward法)により2群の動作パターンを類型化し,各類型の特徴を確認するために,各類型を独立変数,各パラメータを従属変数とした一元配置分散分析(事後検定Scheffe)を行った後,2群の動作パターンを比較した。解析はIBM SPSS Ver.22を用い,有意水準5%で行った。
【結果】
クラスター分析の結果,2群ともに3つの動作パターンに類型化でき,分散分析の結果と先行研究を参考に体幹屈曲,回旋,伸展パターンに類型化した。腹臥位群では屈曲パターン41.4%,回旋パターン20.7%,伸展パターン37.9%,側臥位群では屈曲パターン58.6%,回旋パターン13.8%,伸展パターン27.6%であり,側臥位群で屈曲パターンの割合が多くなった。
【結論】
目的姿勢の違いが寝返り動作パターンに及ぼす影響が示唆され,健常者では目的に応じた動作パターンの選択,動作制御戦略を行う可能性が示唆された。