第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P24

2016年5月28日(土) 16:00 〜 17:00 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-KS-24-2] 徒手筋力計を使用した下肢・体幹筋力測定

下肢筋力の左右差および運動器障害が及ぼす影響について

菊本東陽, 田口孝行, 星文彦 (埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科)

キーワード:筋力測定, 左右差, 年代別

【はじめに,目的】

我々の徒手筋力計(hand held dynamometer:HHD)を使用した筋の均衡(伸展筋力/屈曲筋力比:E/F比)に関する研究の結果,①膝関節E/F比に性差(男性>女性),②若年者と比較して高齢者では,膝関節・体幹E/F比に有意な高値,などの知見を得た(第50回本学会で報告)。しかし,下肢筋力と筋の均衡の左右差,年代ごとの筋力と筋の不均衡の基準値,軽度運動器障害を有する者の筋力特性,などについては不明確であった。

本研究は,HHDを使用した下肢・体幹の筋力測定を実施し,①下肢筋力,筋の均衡の左右差,②20歳代,60歳-80歳代の健常者の筋力と筋の均衡値の基準化および,③軽度運動器障害を有する高齢者の筋力特性の調査を目的とした。

【方法】

対象は,下肢および体幹に運動器障害の既往のない20歳代の健常若年者92人(平均年齢21.6±0.9歳),60歳以上の健常高齢者86人(平均年齢69.7±5.5歳),測定に支障のない腰部,膝関節部に軽度の運動器障害を有する高齢者9人(平均年齢66.9±3.7歳)とした。

測定項目は,①問診,②身体計測,③筋力測定とした。①問診は,痛みの部位と程度,現病歴・既往歴について質問紙による調査を行った。②身体計測は,身長と体重を計測した。③筋力測定には,HHD(酒井医療製モービィMT-100),固定・牽引用ベルト(同プルセンサー)を用いた。被検筋は両側の膝関節伸展・屈曲筋群,体幹伸展・屈曲筋群の4筋群とした。測定肢位は,いずれの測定も端座位で体幹中間位,股関節・膝関節屈曲90°とした。測定は,等尺性最大収縮にて各3回実施した。データ解析は得られた3回の最大値を体重で除した値(N/kg)を用いた。また,膝関節筋,体幹筋の主動作筋と拮抗筋の均衡を評価するためE/F比を求めた。

本研究にて得られた数値は,平均値±標準偏差で示した。下肢筋力,筋の均衡の左右差の検定には,対応のあるt検定を,軽度運動器障害の影響の検定には,対応のないt検定を実施した。いずれも有意水準を5%未満とした。

【結果】

対象者のうち,健常者65人,軽度運動器障害を有する高齢者9人はすべての測定が可能であった。

(1)下肢筋力,筋の均衡の左右差

20歳代の膝関節伸展筋力,膝関節E/F比にのみ有意な左右差(右>左)を認めた(p<0.05)。

(2)筋力と筋の均衡の平均値

20歳代,60歳代の筋力(右膝関節伸展・屈曲筋力,体幹伸展・屈曲筋力),筋の均衡(膝関節・体幹E/F比)を以下に示す。

20歳代(n=92):7.2±2.9・4.4±1.1,4.3±1.0・3.2±0.9,1.6±0.4・1.4±0.3,60歳代(n=42):5.1±1.9・3.3±1.0,3.7±0.9・1.3±1.5,1.6±0.5・1.7±0.4。

(3)運動器障害を有する者の筋力特性

軽度運動器障害を有する高齢者の筋力,筋の均衡は,対象年代健常者と比較して体幹E/F比に有意な低値を認めた(p<0.05)。

【結論】

本研究による知見は,徒手筋力計を使用した下肢・体幹筋力測定の一指標となることが示唆された。