[P-KS-24-3] 徒手筋力計を用いた座位での股関節伸展筋力測定法の再現性と妥当性の検討
高齢者を対象とした研究
キーワード:徒手筋力計, 股関節伸展筋力, 高齢者
【はじめに,目的】
徒手筋力計(HHD)での筋力測定は,徒手筋力検査法(MMT)に準じて行われることが多い。しかし立位や歩行に重要な役割を果たす股関節伸展筋の大殿筋は,高齢者を中心に脊柱,下肢の屈曲拘縮を呈する場合,腹臥位の測定肢位をとれないことが多い。そのためMMTでは立位の別法があるが,対側の下肢筋力が測定値に影響する可能性が考えられる。我々は第50回本学会にて,HHDを用いた座位での股関節伸展筋力測定法(座位法)を考案し,その有用性を報告した。しかし対象は健常成人であり,今後高齢者での検討が課題となった。本研究の目的は高齢者を対象に座位法の信頼性について検討することである。
【方法】
対象は通所リハビリに通う高齢者40名(年齢,82.2±4.0歳)とした。課題運動は等尺性股関節伸展運動とした。測定肢位は座位,立位,腹臥位の3肢位とし,測定側の膝関節を屈曲90度位とした。なお座位は骨盤後傾位とし,両手を検査台に置かせた。またHHDを大腿遠位1/3の後面に設置後,ゼロ補正を行なった。検者は前方より骨盤を固定し,大腿部を下方へ押すよう指示した。立位と腹臥位はMMTに従じて実施し,抵抗部位は大腿遠位1/3とした。筋力値はHHD(Mobie,酒井医療)を用いてトルク値(Nm)を算出後,体重で除した値(Nm/kg)を採用した。筋活動の測定には表面筋電計(Tele Myo G2,Noraxon社製)を用い,導出筋を大殿筋上下部線維(UGMa,LGMa),半腱様筋(St)の3筋とした。筋活動量は各測定の筋活動ピーク値前後0.5秒の積分筋電値をMMT5の筋電値で正規化した値(%MMT)を採用した。各測定におけるトルク値の再現性はICC(1,1),腹臥位に対する座位,立位の基準連関妥当性はPearsonの積率相関係数で検討した。また再現性,妥当性ともにBland-Altman分析にて系統誤差を確認した。測定間でのトルク値と筋活動量の比較はHolm検定またはt-testで検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
各測定におけるトルク値の再現性はICC(1,1)が0.85~0.87の範囲で,座位と腹臥位は系統誤差を認めず,立位はplot図が左に開いた比例誤差を認めた。トルク値の基準連関妥当性は座位と立位が腹臥位と有意な相関を認めた(r=0.73,0.58)。また座位と腹臥位間では加算誤差を,立位と腹臥位間では加算誤差とplot図が左に開いた比例誤差を認めた。トルク値は座位と立位が腹臥位より高かった。筋活動量はUGMaで座位が立位より,Stで立位が座位より高かったが,LGMaは差を認めなかった。
【結論】
座位法はMMT別法の立位よりも大殿筋が関与し,筋力の強弱に関わらず高い信頼性が得られるため,腹臥位をとれない高齢者への対応が可能となり得る。しかし腹臥位とは,得られる値が異なるため,測定肢位に一貫性を持つことが必要である。
徒手筋力計(HHD)での筋力測定は,徒手筋力検査法(MMT)に準じて行われることが多い。しかし立位や歩行に重要な役割を果たす股関節伸展筋の大殿筋は,高齢者を中心に脊柱,下肢の屈曲拘縮を呈する場合,腹臥位の測定肢位をとれないことが多い。そのためMMTでは立位の別法があるが,対側の下肢筋力が測定値に影響する可能性が考えられる。我々は第50回本学会にて,HHDを用いた座位での股関節伸展筋力測定法(座位法)を考案し,その有用性を報告した。しかし対象は健常成人であり,今後高齢者での検討が課題となった。本研究の目的は高齢者を対象に座位法の信頼性について検討することである。
【方法】
対象は通所リハビリに通う高齢者40名(年齢,82.2±4.0歳)とした。課題運動は等尺性股関節伸展運動とした。測定肢位は座位,立位,腹臥位の3肢位とし,測定側の膝関節を屈曲90度位とした。なお座位は骨盤後傾位とし,両手を検査台に置かせた。またHHDを大腿遠位1/3の後面に設置後,ゼロ補正を行なった。検者は前方より骨盤を固定し,大腿部を下方へ押すよう指示した。立位と腹臥位はMMTに従じて実施し,抵抗部位は大腿遠位1/3とした。筋力値はHHD(Mobie,酒井医療)を用いてトルク値(Nm)を算出後,体重で除した値(Nm/kg)を採用した。筋活動の測定には表面筋電計(Tele Myo G2,Noraxon社製)を用い,導出筋を大殿筋上下部線維(UGMa,LGMa),半腱様筋(St)の3筋とした。筋活動量は各測定の筋活動ピーク値前後0.5秒の積分筋電値をMMT5の筋電値で正規化した値(%MMT)を採用した。各測定におけるトルク値の再現性はICC(1,1),腹臥位に対する座位,立位の基準連関妥当性はPearsonの積率相関係数で検討した。また再現性,妥当性ともにBland-Altman分析にて系統誤差を確認した。測定間でのトルク値と筋活動量の比較はHolm検定またはt-testで検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
各測定におけるトルク値の再現性はICC(1,1)が0.85~0.87の範囲で,座位と腹臥位は系統誤差を認めず,立位はplot図が左に開いた比例誤差を認めた。トルク値の基準連関妥当性は座位と立位が腹臥位と有意な相関を認めた(r=0.73,0.58)。また座位と腹臥位間では加算誤差を,立位と腹臥位間では加算誤差とplot図が左に開いた比例誤差を認めた。トルク値は座位と立位が腹臥位より高かった。筋活動量はUGMaで座位が立位より,Stで立位が座位より高かったが,LGMaは差を認めなかった。
【結論】
座位法はMMT別法の立位よりも大殿筋が関与し,筋力の強弱に関わらず高い信頼性が得られるため,腹臥位をとれない高齢者への対応が可能となり得る。しかし腹臥位とは,得られる値が異なるため,測定肢位に一貫性を持つことが必要である。