[P-KS-25-1] 廃用性筋萎縮からの回復時に起る炎症についての検討
Keywords:廃用性筋萎縮, ミオシン重鎖, 抗炎症剤
【はじめに,目的】
廃用性筋萎縮は身体の活動量低下やギプス固定などによる不動で起るが,一旦筋萎縮が起るともとの正常な筋に回復するには時間がかかり医療コストの上昇にもつながる。先行研究では,廃用性筋萎縮を発症し脆弱になった筋に体重を再負荷すると筋が損傷を起し炎症反応が起こり,そこから回復過程が始まると報告される。我々は萎縮した筋が起こす炎症は損傷を重傷化させるネガティブなものか,または回復を促進するポジティブなものかを検討するために本研究を考えた。本研究は実験動物を使用して廃用性筋萎縮を発生させ,筋に抗炎症剤を注射し,その後の回復過程における影響を検討することを目的とした。
【方法】
Wistar系雄ラット11週齢を使用し,右下肢を2週間ギプス固定してヒラメ筋に廃用性筋萎縮を発症させた。2週間のギプス固定解放直後に抗炎症剤(デポ・メドロール水懸注)を右下肢ヒラメ筋に注入し,その後再び体重を負荷させケージ内を自由飼育とし3日後,7日後の経過を検討した。本研究は,2週間のギプス固定を右下肢に施したギプス固定群(G),同ラットのギプス固定のない左下肢を対照群(C),ギプス解放直後に抗炎症剤注入後3日群(注射3)と7日群(注射7),ギプス解放後薬剤なしで自然治癒3日群(自然3)と7日群(自然7)の6群からなる。測定指標として,ヒラメ筋湿重量をラット体重で標準化した値,ヒラメ筋組織染色,リアルタイムPCR法によりミオシン重鎖アイソフォーム(タイプI,IIa,IIb)および炎症反応時のサイトカインIL-6の遺伝子発現レベルとして4種類のmRNA発現量を検討した。
【結果】
ヒラメ筋湿重量は2週間のギプス固定で低下し,自然治癒3日ではさらに低下したが7日には増加を示した。抗炎症剤を注射した群では3日後には対照群以上に増加,その後減少し7日目にはギプス群レベルに戻った。また,ミオシン重鎖遅筋タイプIの遺伝子発現量はギプス固定で低下し,注射3日後はさらに低下し,7日後はより低下していた。自然治癒3日後でも低下,7日後はより著しい低下を示し,注射群以上の低下を示した。速筋タイプIIaはギプス固定で著しく増加し,注射3日ではさらに増加したが7日では減少した。自然治癒3日ではギプス群より僅かに増加したが7日では大幅な減少を示した。注射群は自然治癒群よりも著しい増加を示した。IL-6はギプス固定で著しい増加を示しその後の回復過程でも増加を示した。しかし注射群は増加したものの自然治癒群よりかなり低い値を示した。
【結論】
2週間のギプス固定で廃用性筋萎縮の発症および速筋化が確認できた。抗炎症剤を注射すると遅筋タイプの低下は緩和されるが,速筋タイプの増加は増幅される。結論として,筋萎縮からの回復過程3日では抗炎症剤の注射はいろんな働きを促進し早期治癒が期待できるが,7日目には注射してもしなくてもすでにあまり変化がないことが示された。
廃用性筋萎縮は身体の活動量低下やギプス固定などによる不動で起るが,一旦筋萎縮が起るともとの正常な筋に回復するには時間がかかり医療コストの上昇にもつながる。先行研究では,廃用性筋萎縮を発症し脆弱になった筋に体重を再負荷すると筋が損傷を起し炎症反応が起こり,そこから回復過程が始まると報告される。我々は萎縮した筋が起こす炎症は損傷を重傷化させるネガティブなものか,または回復を促進するポジティブなものかを検討するために本研究を考えた。本研究は実験動物を使用して廃用性筋萎縮を発生させ,筋に抗炎症剤を注射し,その後の回復過程における影響を検討することを目的とした。
【方法】
Wistar系雄ラット11週齢を使用し,右下肢を2週間ギプス固定してヒラメ筋に廃用性筋萎縮を発症させた。2週間のギプス固定解放直後に抗炎症剤(デポ・メドロール水懸注)を右下肢ヒラメ筋に注入し,その後再び体重を負荷させケージ内を自由飼育とし3日後,7日後の経過を検討した。本研究は,2週間のギプス固定を右下肢に施したギプス固定群(G),同ラットのギプス固定のない左下肢を対照群(C),ギプス解放直後に抗炎症剤注入後3日群(注射3)と7日群(注射7),ギプス解放後薬剤なしで自然治癒3日群(自然3)と7日群(自然7)の6群からなる。測定指標として,ヒラメ筋湿重量をラット体重で標準化した値,ヒラメ筋組織染色,リアルタイムPCR法によりミオシン重鎖アイソフォーム(タイプI,IIa,IIb)および炎症反応時のサイトカインIL-6の遺伝子発現レベルとして4種類のmRNA発現量を検討した。
【結果】
ヒラメ筋湿重量は2週間のギプス固定で低下し,自然治癒3日ではさらに低下したが7日には増加を示した。抗炎症剤を注射した群では3日後には対照群以上に増加,その後減少し7日目にはギプス群レベルに戻った。また,ミオシン重鎖遅筋タイプIの遺伝子発現量はギプス固定で低下し,注射3日後はさらに低下し,7日後はより低下していた。自然治癒3日後でも低下,7日後はより著しい低下を示し,注射群以上の低下を示した。速筋タイプIIaはギプス固定で著しく増加し,注射3日ではさらに増加したが7日では減少した。自然治癒3日ではギプス群より僅かに増加したが7日では大幅な減少を示した。注射群は自然治癒群よりも著しい増加を示した。IL-6はギプス固定で著しい増加を示しその後の回復過程でも増加を示した。しかし注射群は増加したものの自然治癒群よりかなり低い値を示した。
【結論】
2週間のギプス固定で廃用性筋萎縮の発症および速筋化が確認できた。抗炎症剤を注射すると遅筋タイプの低下は緩和されるが,速筋タイプの増加は増幅される。結論として,筋萎縮からの回復過程3日では抗炎症剤の注射はいろんな働きを促進し早期治癒が期待できるが,7日目には注射してもしなくてもすでにあまり変化がないことが示された。