[P-KS-25-6] 老化促進マウスを用いた加齢によるサルコペニアのオートファジー関与について
キーワード:加齢, 筋減弱症, 筋線維
【はじめに,目的】
高齢化社会を迎え,理学療法の対象者も高齢者が大多数を占めるようになった。加齢により筋も老化(変性)することがわかってきているが,その全貌はまだつかめていない。近年,加齢に伴うサルコペニアが着目されており,サルコペニアには細胞の自食作用であるオートファジーが関与している可能性も示唆されているが,まだ詳しく検討した研究は少ない。そこで今回,オートファジーに着目し,老化促進マウス(SAM:Senescence-Accelerated Mouse)を用いて加齢による骨格筋変性にオートファジーがどのように関与しているか検証した。
【方法】
対象動物は,一般的なマウスと比較し寿命が短く,様々な老化関連疾患が促進されて発症してくる老化促進マウス(SAMP1)の雄を使用した。加齢の影響を調べるため,先行研究より変性が起こる前の時期25週齢マウス3匹,加齢による筋変性が起こる時期50週齢マウス3匹,加齢による筋変性が完全に起こった時期58週齢マウス4匹,計10匹を本研究では使用した。骨格筋は,腓腹筋,ヒラメ筋,前脛骨筋を用いた。各時期に,深麻酔下で生理食塩水による脱血・灌流を行い,連続横断切片を作成した。全体像を観察するためヘマトキシリン・エオジン(H/E)染色を行い,免疫組織化学染色にてオートファジーのマーカーである抗LC3抗体,抗Beclin1抗体を使用した。統計学的検定には統計処理ソフトSPSSを使用し一元配置分散分析後,多重比較検定を実施した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
HE所見から,25週齢群の各筋には異常は観察されなかったが,50週齢以降の各筋に筋萎縮が生じ大小不同・中心核線維も観察された。50週齢,58週齢の腓腹筋外側部に特に空胞変性が観察された。また同様に抗Beclin1染色,LC3染色でも腓腹筋外側部に強い染色性がみられた。腓腹筋外側部を定量した結果,抗Beclin1,抗LC3陽性細胞数は25週齢と比較して50・58週齢で有意に陽性細胞数が観察された。しかし50週齢と58週齢間に有意な差はみられなかった。
【結論】
今回,腓腹筋に著明に筋変性が生じていることから,SAMP1は速筋線維に加齢の影響を受けやすいと考えられ,サルコペニアのモデルとして有用であるといえる。また50週齢群以降の腓腹筋に空胞変性が観察され,この空胞に対しオートファジーに関与するBeclin1やLC3の発現が確認されたため,自己貪食空胞であると示唆された。SAMP1では,加齢による筋変性とともに,オートファジーによる細胞の自食作用が強まる傾向にあるといえる。加齢により増加する異常なタンパク質を,オートファジーにより適切に分解・処理する段階で,オートファジーが過剰に亢進したため空胞が生じた可能性がある。高齢期の長期臥床やギプス固定などは,通常以上に筋萎縮が促進されると考えられる。今後,理学療法を想定した運動を実施し,運動が加齢に伴うオートファジーにどのような影響を及ぼすのかについても検討が必要である。
高齢化社会を迎え,理学療法の対象者も高齢者が大多数を占めるようになった。加齢により筋も老化(変性)することがわかってきているが,その全貌はまだつかめていない。近年,加齢に伴うサルコペニアが着目されており,サルコペニアには細胞の自食作用であるオートファジーが関与している可能性も示唆されているが,まだ詳しく検討した研究は少ない。そこで今回,オートファジーに着目し,老化促進マウス(SAM:Senescence-Accelerated Mouse)を用いて加齢による骨格筋変性にオートファジーがどのように関与しているか検証した。
【方法】
対象動物は,一般的なマウスと比較し寿命が短く,様々な老化関連疾患が促進されて発症してくる老化促進マウス(SAMP1)の雄を使用した。加齢の影響を調べるため,先行研究より変性が起こる前の時期25週齢マウス3匹,加齢による筋変性が起こる時期50週齢マウス3匹,加齢による筋変性が完全に起こった時期58週齢マウス4匹,計10匹を本研究では使用した。骨格筋は,腓腹筋,ヒラメ筋,前脛骨筋を用いた。各時期に,深麻酔下で生理食塩水による脱血・灌流を行い,連続横断切片を作成した。全体像を観察するためヘマトキシリン・エオジン(H/E)染色を行い,免疫組織化学染色にてオートファジーのマーカーである抗LC3抗体,抗Beclin1抗体を使用した。統計学的検定には統計処理ソフトSPSSを使用し一元配置分散分析後,多重比較検定を実施した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
HE所見から,25週齢群の各筋には異常は観察されなかったが,50週齢以降の各筋に筋萎縮が生じ大小不同・中心核線維も観察された。50週齢,58週齢の腓腹筋外側部に特に空胞変性が観察された。また同様に抗Beclin1染色,LC3染色でも腓腹筋外側部に強い染色性がみられた。腓腹筋外側部を定量した結果,抗Beclin1,抗LC3陽性細胞数は25週齢と比較して50・58週齢で有意に陽性細胞数が観察された。しかし50週齢と58週齢間に有意な差はみられなかった。
【結論】
今回,腓腹筋に著明に筋変性が生じていることから,SAMP1は速筋線維に加齢の影響を受けやすいと考えられ,サルコペニアのモデルとして有用であるといえる。また50週齢群以降の腓腹筋に空胞変性が観察され,この空胞に対しオートファジーに関与するBeclin1やLC3の発現が確認されたため,自己貪食空胞であると示唆された。SAMP1では,加齢による筋変性とともに,オートファジーによる細胞の自食作用が強まる傾向にあるといえる。加齢により増加する異常なタンパク質を,オートファジーにより適切に分解・処理する段階で,オートファジーが過剰に亢進したため空胞が生じた可能性がある。高齢期の長期臥床やギプス固定などは,通常以上に筋萎縮が促進されると考えられる。今後,理学療法を想定した運動を実施し,運動が加齢に伴うオートファジーにどのような影響を及ぼすのかについても検討が必要である。