[P-KS-26-1] ラット変形性膝関節症モデルにおける関節軟骨の長期的な病理組織学的変化
Keywords:変形性膝関節症, 関節軟骨, メカニカルストレス
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(Osteoarthritis:以下OA)は臨床的および基礎的に幅広く研究されており,動物を用いたOAモデルには自然発症モデルや外科的に惹起するモデルなどがある。その中でも薬物によりOAを惹起するモデルはOAモデルだけではなく,疼痛モデルとしても確立されている。しかし,このような薬物によるOAモデルを用いた先行研究では関節構成体の病理組織学的変化を中心に見た研究や長期的な経過を検討した研究は少ない。またOAに関して病理組織学的自然史を追った研究は近年ほとんど為されていない。
そこで我々の研究グループではMonosodium iodoacetate(ヨード酢酸ナトリウム;以下MIA)を用いたラットOAモデルにおいて関節軟骨の長期的な変化を明らかにするために病理組織学的手段を用いて検討した。
【方法】
対象として9週齢のWistar系雄性ラット40匹を使用した。麻酔下にて左膝関節内に生理食塩水30μlを溶媒としてMIA1.0mgを投与した後,皮膚を縫合した。実験動物はそれぞれを10匹ずつ1週,2週,6週,8週群の4群に無作為に分類した。外科的処置後は,膝関節の固定および免荷や関節可動域練習は実施しなかった。飼育期間後,膝関節前額面標本を作製し,ヘマトキシリン・エオジン染色とトルイジンブルー染色を実施し,光学顕微鏡下で関節軟骨の荷重部とその辺縁部を観察した。
【結果】
関節軟骨は1週目では荷重部および辺縁部ともに表層の軟骨細胞の染色性は低下しており,部分的に無腐性壊死を認めた。トルイジンブルー染色においては荷重部および辺縁部ともに軟骨基質の染色性が低下していた。2週目では,荷重部において軟骨表面に細線維化を認め,荷重部および辺縁部における表層および中層の軟骨細胞は壊死していた。トルイジンブルー染色では1週と比較して荷重部および辺縁部における軟骨基質の染色性のさらなる低下が認められた。6週目では,荷重部では軟骨の亀裂および菲薄化を認め,部分的に象牙化を認めた。また,深層の軟骨細胞の壊死を認める一方,辺縁部では部分的にクラスター形成を認めた。8週目では荷重部において象牙化と軟骨細胞死を認め,辺縁部ではクラスター形成および線維軟骨による軟骨棘形成を認めた。
【結論】
本研究における6週目以降の病理組織学的結果はOAの典型的な像である軟骨の変性像を認め,先行研究の結果を支持した。また,6週以降壊死していた軟骨細胞が部分的に再生していた。さらに8週群では荷重部と辺縁部によって軟骨の組織像が異なっていることから,荷重が軟骨細胞の再生に影響を与えている可能性が示唆された。
これらのことから,本研究はMIAを用いたラットOAモデルの関節軟骨の破壊像を明らかにするとともに軟骨細胞の再生の可能性を示唆した。これらはOAモデルにおける新たな知見であり,今後のOAに対する理学療法に関するエビデンスを与えるものである。
変形性膝関節症(Osteoarthritis:以下OA)は臨床的および基礎的に幅広く研究されており,動物を用いたOAモデルには自然発症モデルや外科的に惹起するモデルなどがある。その中でも薬物によりOAを惹起するモデルはOAモデルだけではなく,疼痛モデルとしても確立されている。しかし,このような薬物によるOAモデルを用いた先行研究では関節構成体の病理組織学的変化を中心に見た研究や長期的な経過を検討した研究は少ない。またOAに関して病理組織学的自然史を追った研究は近年ほとんど為されていない。
そこで我々の研究グループではMonosodium iodoacetate(ヨード酢酸ナトリウム;以下MIA)を用いたラットOAモデルにおいて関節軟骨の長期的な変化を明らかにするために病理組織学的手段を用いて検討した。
【方法】
対象として9週齢のWistar系雄性ラット40匹を使用した。麻酔下にて左膝関節内に生理食塩水30μlを溶媒としてMIA1.0mgを投与した後,皮膚を縫合した。実験動物はそれぞれを10匹ずつ1週,2週,6週,8週群の4群に無作為に分類した。外科的処置後は,膝関節の固定および免荷や関節可動域練習は実施しなかった。飼育期間後,膝関節前額面標本を作製し,ヘマトキシリン・エオジン染色とトルイジンブルー染色を実施し,光学顕微鏡下で関節軟骨の荷重部とその辺縁部を観察した。
【結果】
関節軟骨は1週目では荷重部および辺縁部ともに表層の軟骨細胞の染色性は低下しており,部分的に無腐性壊死を認めた。トルイジンブルー染色においては荷重部および辺縁部ともに軟骨基質の染色性が低下していた。2週目では,荷重部において軟骨表面に細線維化を認め,荷重部および辺縁部における表層および中層の軟骨細胞は壊死していた。トルイジンブルー染色では1週と比較して荷重部および辺縁部における軟骨基質の染色性のさらなる低下が認められた。6週目では,荷重部では軟骨の亀裂および菲薄化を認め,部分的に象牙化を認めた。また,深層の軟骨細胞の壊死を認める一方,辺縁部では部分的にクラスター形成を認めた。8週目では荷重部において象牙化と軟骨細胞死を認め,辺縁部ではクラスター形成および線維軟骨による軟骨棘形成を認めた。
【結論】
本研究における6週目以降の病理組織学的結果はOAの典型的な像である軟骨の変性像を認め,先行研究の結果を支持した。また,6週以降壊死していた軟骨細胞が部分的に再生していた。さらに8週群では荷重部と辺縁部によって軟骨の組織像が異なっていることから,荷重が軟骨細胞の再生に影響を与えている可能性が示唆された。
これらのことから,本研究はMIAを用いたラットOAモデルの関節軟骨の破壊像を明らかにするとともに軟骨細胞の再生の可能性を示唆した。これらはOAモデルにおける新たな知見であり,今後のOAに対する理学療法に関するエビデンスを与えるものである。