第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P26

2016年5月28日(土) 14:50 〜 15:50 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-26-2] ラット膝関節不動モデルに対する荷重と非荷重が軟骨硬度に及ぼす影響

長井桃子1, 飯島弘貴2, 伊藤明良3, 太治野純一2, 山口将希2, 張項凱2, 喜屋武弥2, 青山朋樹2, 黒木裕士2 (1.京都大学大学院医学研究科附属先天異常標本解析センター, 2.京都大学大学院医学研究科理学療法学講座, 3.京都大学大学院医学研究科感覚運動系外科学講座整形外科学)

キーワード:関節軟骨, 不動, 力学的分析

【はじめに,目的】

関節の不動は,関節構成体にさまざまな影響を及ぼすことが知られている。中でも関節軟骨は自己修復能に乏しく,構造維持にメカニカルストレスが大きな役割を果たすことが知られている。メカニカルストレスと軟骨構造の関係性の理解は,関節不動後の介入の影響や軟骨変性の予防的戦略を構築する上で重要である。軟骨の基質成分である2型コラーゲンや,プロテオグリカンの割合は不動に伴い変化すること(Caterson 1987),不動後の軟骨は領域により軟骨表面や軟骨厚,軟骨細胞の変化が異なることが明らかにされている(Nagai 2015,Trudel 2005)。我々は2014年同学術大会で,関節不動後の自由飼育介入では軟骨領域ごとに変性度合いが異なり,その領域特性が生じる一因に,不動期間中の荷重による影響が関与している可能性を報告した。これらを踏まえ,本研究は不動に伴う軟骨変性病態について,荷重の有無による影響と領域ごとの力学的特性を明らかにすることを目的とし,実験を行った。

【方法】

12週齢のWistar系雄ラットを用いた。実験群の膝関節を創外固定で屈曲140±5度に固定したのちに,通常ケージで飼育する荷重群と後肢懸垂状態で飼育する非荷重群に分けた。固定期間は,1,2,4週間の3グループ(n=4 legs/group)を設定した。同一期間飼育した非介入の自由飼育群を対照群とした。実験期間終了後に摘出した膝関節を肉眼観察した後に力学試験を実施した。力学試験では,脛骨内側中央部を評価部位とし,大腿骨と脛骨の軟骨接触部(以下,接触部)・その外側周辺部(以下,周辺部)の2領域について,たわみとりを実施した後に一定速度で0.01Nを加えた際の変位(歪み)と弾性率を測定した。統計学的解析は,対応のないt検定とTukey-Kramer検定を用い,有意水準は5%未満とした。

【結果】

肉眼変化では,荷重群では固定期間の延長と共に周辺部の変形が明瞭に捉えられた。非荷重群では接触部・周辺部問わず軟骨表面の不整が目立ち,色は荷重群に比べ赤みが少なかった。力学試験では,接触部は荷重群でのみ有意に,経時的な歪みの低下と弾性率の増加を認めた(P<0.05)。一方,周辺部では実験期間を通じて,荷重・非荷重群共に対照群よりも歪みの増加と弾性率の低下を認めたが,実験群間で有意差は認められなかった。

【結論】

本研究により,荷重下の関節不動では接触部軟骨の硬度は経時的に増加する一方で,周辺部では荷重・非荷重を問わず硬度低下が生じていることが示され,短期間の関節不動下の荷重と非荷重が関節軟骨変化に及ぼす影響について力学的側面から明らかにした。本結果は,関節不動に対する理学療法介入に関して,不動期間中の荷重状態や軟骨の領域によって,介入が軟骨に及ぼす影響が異なる可能性を示唆する。