[P-KS-26-4] ラットACL切断モデルでは外側半月板の変性が変形性膝関節症の誘因となり得る
Keywords:変形性膝関節症, 外側半月板, 関節制動
【はじめに,目的】
半月板の変性や損傷は,将来的な変形性膝関節症(膝OA)のリスクファクターとなりうるとされている。一般的に膝OAでは内反型が多く,内側半月板(MM)の変性・破壊が推察され,MMに関する研究は数多く散見される。一方で外側半月板(LM)もMMと同様に関節包内運動の制動に寄与するが,内側型の変形が多いためLMと膝OAの関係に関する研究は多くない。そこで,本研究では,MMと同様の機能特性を有するLMも,膝OAの進行に影響を及ぼすとの仮説を立て,ラットACL完全損傷モデルにおけるLMの動態,また異常な関節運動の制動がLMの変性に与える影響を検証し,関節異常運動と膝OAの発症メカニズムの関係性についての知見を得ることを目的とした。
【方法】
Wister系雄性ラット24匹を対象に,ランダムに術後1w群と2w群に分け,さらに各群をACL-T群,関節制動(controlled abnormal movement:CAM)群,control群に分類した。ACL-T群は膝蓋腱内側部を正中切開し,マイクロ剪刃を関節包内に侵入させACLを切断した。CAM群はACL切断後,脛骨の前方引き出しを制動する手術を行った。介入後はゲージ内で自由飼育し,術後1・2週経過時点で屠殺しLMを採取した。採取したLMからTotal RNAを抽出し,その後cDNAを合成し,aggrecan・ADAMTS-5・MMP-13・TIMP-1のプライマーを使用して,real time PCR法にて各因子のmRNAレベルでの発現量を群間で比較した。発現量の比較にはΔΔCT法を用いた。統計解析は,SPSSを用い一元配置分散分析,下位検定には多重比較検定Tukey法を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
各因子の発現量は,ADAMTS-5が,1wのACL-T群で0.62倍,CAM群で1.16倍であったが,2w時点では,ACL-T群1.65倍となり,0.91倍のCAM群に対して有意に増加していた。TIMP-1は,1wのACL-T群で1.12倍で,1.89倍のCAM群に対し,有意に低かった。
【結論】
結果よりACL-T群で軟骨破壊因子であるADAMTS-5の発現量増加が見られたことから,膝関節の異常運動によってLMの変性が進行することが示唆された。LMは,MMに比べて屈曲伸展に伴い大きく移動することからMMよりも損傷頻度が少ないという機能解剖学的特性をもつ。しかし,上記の結果よりACL損傷モデルではLMにおいても変性の進行が認められ,半月板による被覆率の高い外側部でも膝関節の異常運動が半月板の変性から,関節軟骨の破壊につながっていき,結果として膝OAの進行につながる可能性が考えられる。一方で,CAM群でADAMTS-5の発現量に亢進が見られなかったことから,異常運動の制動はOAの進行抑制に有効である可能性が示唆された。本研究の結果より,ACL-Tモデルにみられるような関節の異常運動では,内側だけでなく外側の半月板においても変性が生じ,膝OAの進行に繋がる可能性が示唆され,異常運動を制動する理学療法介入の確立が求められる。
半月板の変性や損傷は,将来的な変形性膝関節症(膝OA)のリスクファクターとなりうるとされている。一般的に膝OAでは内反型が多く,内側半月板(MM)の変性・破壊が推察され,MMに関する研究は数多く散見される。一方で外側半月板(LM)もMMと同様に関節包内運動の制動に寄与するが,内側型の変形が多いためLMと膝OAの関係に関する研究は多くない。そこで,本研究では,MMと同様の機能特性を有するLMも,膝OAの進行に影響を及ぼすとの仮説を立て,ラットACL完全損傷モデルにおけるLMの動態,また異常な関節運動の制動がLMの変性に与える影響を検証し,関節異常運動と膝OAの発症メカニズムの関係性についての知見を得ることを目的とした。
【方法】
Wister系雄性ラット24匹を対象に,ランダムに術後1w群と2w群に分け,さらに各群をACL-T群,関節制動(controlled abnormal movement:CAM)群,control群に分類した。ACL-T群は膝蓋腱内側部を正中切開し,マイクロ剪刃を関節包内に侵入させACLを切断した。CAM群はACL切断後,脛骨の前方引き出しを制動する手術を行った。介入後はゲージ内で自由飼育し,術後1・2週経過時点で屠殺しLMを採取した。採取したLMからTotal RNAを抽出し,その後cDNAを合成し,aggrecan・ADAMTS-5・MMP-13・TIMP-1のプライマーを使用して,real time PCR法にて各因子のmRNAレベルでの発現量を群間で比較した。発現量の比較にはΔΔCT法を用いた。統計解析は,SPSSを用い一元配置分散分析,下位検定には多重比較検定Tukey法を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
各因子の発現量は,ADAMTS-5が,1wのACL-T群で0.62倍,CAM群で1.16倍であったが,2w時点では,ACL-T群1.65倍となり,0.91倍のCAM群に対して有意に増加していた。TIMP-1は,1wのACL-T群で1.12倍で,1.89倍のCAM群に対し,有意に低かった。
【結論】
結果よりACL-T群で軟骨破壊因子であるADAMTS-5の発現量増加が見られたことから,膝関節の異常運動によってLMの変性が進行することが示唆された。LMは,MMに比べて屈曲伸展に伴い大きく移動することからMMよりも損傷頻度が少ないという機能解剖学的特性をもつ。しかし,上記の結果よりACL損傷モデルではLMにおいても変性の進行が認められ,半月板による被覆率の高い外側部でも膝関節の異常運動が半月板の変性から,関節軟骨の破壊につながっていき,結果として膝OAの進行につながる可能性が考えられる。一方で,CAM群でADAMTS-5の発現量に亢進が見られなかったことから,異常運動の制動はOAの進行抑制に有効である可能性が示唆された。本研究の結果より,ACL-Tモデルにみられるような関節の異常運動では,内側だけでなく外側の半月板においても変性が生じ,膝OAの進行に繋がる可能性が示唆され,異常運動を制動する理学療法介入の確立が求められる。