[P-KS-27-2] 超音波検査を用いた股関節他動伸展時の大腿骨頭並進運動の測定とその検者内信頼性の検討
キーワード:股関節不安定性, 超音波検査, 大腿骨頭並進運動
【はじめに,目的】
非外傷性股関節不安定性は,腸骨大腿靭帯・関節包の弛緩や,繰り返す回旋運動が原因とされる。これにより,股関節伸展時の大腿骨頭腹側並進運動が大きくなり,関節唇損傷や疼痛を引き起こす。しかし,定性的な評価方法が主であり,画像所見も異常が少ないため,見逃されることがある。そこで今回,非外傷性股関節不安定性の視覚的・定量的評価法を確立するために,超音波検査(US)にて,他動股関節伸展運動(以下,伸展運動)時の大腿骨頭並進距離(Femoral head Translation Distance;FTD)を測定し,その検者内信頼性を検討した。
【方法】
対象は股関節に既往のない健常成人男性15名30肢(26.7±1.9歳)。検者は伸展運動実施者とUS実施者の2名で,全て同一の検者が行った。使用機器はToshiba Viamo(測定誤差:0.12mm/pixel),リニアプローブ。検査肢位は背臥位,股関節中間位とし,骨盤は固定具で固定した。USは,プローブを鼡径靭帯に対し垂直に当て,臼蓋最上縁描出後,鼡径靭帯に沿って遠位1cm走査した位置を観察部位とした。伸展運動は,検査側下肢の殿溝より遠位をベッド端から出し,検者がend feelまで伸展させた。その際に伸展角度も測定した。伸展運動前後のUS画像をコンピュータに保存後,臼蓋先端部から大腿骨頭最腹側部までの垂直距離をImage Jにて測定し,伸展運動前後の差をFTDとした。検査間に1分の休憩を設け2回実施し,同様の検査を7~10日後に実施した。
統計解析は,測定値群の正規性の確認にShapiro-Wilk検定を用い,系統誤差の有無は,Bland-Altman plotを基に,比例誤差は測定値の平均値と差の無相関検定,加算誤差は測定値の差の平均値の95%CIの結果から判断した。信頼性係数はICC(1,1)(日内),(3,1)(日間)を用い,判定には桑原らの基準を採用した。さらに,測定の標準誤差(SEM)を算出した。有意水準は5%とし,解析にはSPSS statistics ver.22を用いた。
【結果】
FTDおよび股関節伸展角度の平均値はそれぞれ,日内が腹側に1.55±1.03mm,25.3±1.5°。日間が腹側に1.61±0.95mm,25.2±1.4°であった。日内・日間とも測定値群の正規性が認められ,系統誤差は認められなかった。日内信頼性は,ICCが0.98(95%CI:0.95~0.99),SEMは0.16mm,日間信頼性は,ICCが0.79(95%CI:0.61~0.90),SEMは0.46mmであった。
【結論】
伸展運動時,大腿骨頭腹側並進運動が観察され,非外傷性股関節不安定性を評価する方法として有用性が示唆された。日内信頼性は,ICCがgreat,SEMは機器の測定誤差程度となったことから高いと考える。日間信頼性はICCがfairで,SEMは日内よりも大きくなった。信頼性低下の原因は,プローブの傾斜角度が日間で異なっていた可能性が挙げられる。しかし,USを用いた他の信頼性研究と同程度の結果となることから,本検査の検者内信頼性は十分と考える。今後は上記の課題を解決したうえで,検者間や,患者を対象とした検討が必要である。
非外傷性股関節不安定性は,腸骨大腿靭帯・関節包の弛緩や,繰り返す回旋運動が原因とされる。これにより,股関節伸展時の大腿骨頭腹側並進運動が大きくなり,関節唇損傷や疼痛を引き起こす。しかし,定性的な評価方法が主であり,画像所見も異常が少ないため,見逃されることがある。そこで今回,非外傷性股関節不安定性の視覚的・定量的評価法を確立するために,超音波検査(US)にて,他動股関節伸展運動(以下,伸展運動)時の大腿骨頭並進距離(Femoral head Translation Distance;FTD)を測定し,その検者内信頼性を検討した。
【方法】
対象は股関節に既往のない健常成人男性15名30肢(26.7±1.9歳)。検者は伸展運動実施者とUS実施者の2名で,全て同一の検者が行った。使用機器はToshiba Viamo(測定誤差:0.12mm/pixel),リニアプローブ。検査肢位は背臥位,股関節中間位とし,骨盤は固定具で固定した。USは,プローブを鼡径靭帯に対し垂直に当て,臼蓋最上縁描出後,鼡径靭帯に沿って遠位1cm走査した位置を観察部位とした。伸展運動は,検査側下肢の殿溝より遠位をベッド端から出し,検者がend feelまで伸展させた。その際に伸展角度も測定した。伸展運動前後のUS画像をコンピュータに保存後,臼蓋先端部から大腿骨頭最腹側部までの垂直距離をImage Jにて測定し,伸展運動前後の差をFTDとした。検査間に1分の休憩を設け2回実施し,同様の検査を7~10日後に実施した。
統計解析は,測定値群の正規性の確認にShapiro-Wilk検定を用い,系統誤差の有無は,Bland-Altman plotを基に,比例誤差は測定値の平均値と差の無相関検定,加算誤差は測定値の差の平均値の95%CIの結果から判断した。信頼性係数はICC(1,1)(日内),(3,1)(日間)を用い,判定には桑原らの基準を採用した。さらに,測定の標準誤差(SEM)を算出した。有意水準は5%とし,解析にはSPSS statistics ver.22を用いた。
【結果】
FTDおよび股関節伸展角度の平均値はそれぞれ,日内が腹側に1.55±1.03mm,25.3±1.5°。日間が腹側に1.61±0.95mm,25.2±1.4°であった。日内・日間とも測定値群の正規性が認められ,系統誤差は認められなかった。日内信頼性は,ICCが0.98(95%CI:0.95~0.99),SEMは0.16mm,日間信頼性は,ICCが0.79(95%CI:0.61~0.90),SEMは0.46mmであった。
【結論】
伸展運動時,大腿骨頭腹側並進運動が観察され,非外傷性股関節不安定性を評価する方法として有用性が示唆された。日内信頼性は,ICCがgreat,SEMは機器の測定誤差程度となったことから高いと考える。日間信頼性はICCがfairで,SEMは日内よりも大きくなった。信頼性低下の原因は,プローブの傾斜角度が日間で異なっていた可能性が挙げられる。しかし,USを用いた他の信頼性研究と同程度の結果となることから,本検査の検者内信頼性は十分と考える。今後は上記の課題を解決したうえで,検者間や,患者を対象とした検討が必要である。