第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P27

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-27-3] 底屈運動時における腓腹筋内側頭の動態と半膜様筋との関係

佐藤貴徳1, 工藤慎太郎2,3,4 (1.国際医学技術専門学校理学療法学科, 2.森ノ宮医療大学保健医療学部理学療法学科, 3.森ノ宮医療大学卒後教育センター, 4.森ノ宮医療大学大学院保健医療学研究科)

Keywords:屈曲拘縮, 腓腹筋内側頭, 超音波画像診断装置

【はじめに,目的】

膝屈曲拘縮に対するアプローチを臨床上経験する機会は多い。特に変形性膝関節症では,屈曲拘縮が早期から出現するとされており,膝伸展筋力の強化とともに,屈曲拘縮に対する膝関節後面の筋の伸張性改善も重要となってくる。吉村ら(1977)は,伸張すべき重要な筋の一例として,ハムストリングスと下腿三頭筋を挙げている。特に内反モーメントにさらされる半膜様筋や腓腹筋内側頭は短縮位となり,屈曲拘縮の原因になりやすいと考えられる。半膜様筋の停止腱は,脛骨内側顆,斜膝窩靭帯をはじめ膝窩部に大きく広がりをもって付着しており(William, et al., 2004),その深層には,腓腹筋内側頭の起始部が存在している。そのため,同部位における半膜様筋と腓腹筋内側頭との滑走性は重要になると推察される。しかし,筋間の滑走性について生体で評価する方法はなく,評価が困難である。近年,理学療法分野においても,超音波画像診断装置(US)を用いた報告は多く,USにより筋間の滑走性が観察可能である。一方,USを用いた半膜様筋と腓腹筋内側頭の滑走性の評価方法を確立するためには,健常人における滑走性が明らかにされる必要がある。そこで本研究の目的は,USを用いて底屈運動時における腓腹筋内側頭の動態と半膜様筋との関係について定量化することとした。



【方法】

下肢に整形外科疾患のない健常成人18名32肢を対象とした(男性13名,女性5名,平均年齢21.7±3.7歳)。USにはMy Lab.25(esaote社製)を用いた。測定モードはBモードとし,12MHzのリニアプローブを使用した。半膜様筋の深層に腓腹筋内側頭が存在し,内側顆が映る高さを短軸で撮像し,安静時と底屈運動時の動態の変化を追った。動態変化は,腓腹筋内側頭内側端の移動方向・移動量と筋厚を,My Lab.25の計測処理機能を用いて計測した。筋厚については運動前後で比較し,変化量を算出した。統計学的手法として,Wilcoxon順位和検定を用いて有意水準5%未満で検討した。



【結果】

腓腹筋内側頭は内側深層方向に5.3±1.1mmの変化を示した。その際の筋厚は安静時16.7(15.3-18.1)mm,底屈運動時18.9(18.1-21.3)mmであり,有意差を認めた(p<0.001)。筋厚変化量は2.6±0.9mmであった。





【結論】

腓腹筋内側頭は,底屈運動時に起始部に引き付けられるように半膜様筋の深層を滑走しながら内側深層へ移動し,筋厚の増大に伴って半膜様筋は内側表層へ押し上げられるように移動する動態を示した。屈曲拘縮の評価指標は圧痛の有無や治療前後の変化が主体となるが,客観性に乏しいという限界がある。しかしながら,蒲田(2001)は,互いに隣接または交叉する組織間滑走性の重要性について述べており,本研究のようにUSを用いて動態の評価を行うことで,客観的な評価指標をもって理学療法を展開していくことが可能になると考えられる。今後は,屈曲拘縮膝における筋間の滑走性を検討したい。