[P-KS-27-4] 足関節捻挫既往者における下腿筋機能と関節可動域の関係性
キーワード:足関節内反捻挫, 超音波画像診断, 関節可動域
【目的】
足関節外側靭帯損傷における再発の危険因子は,靭帯損傷による構造的不安定性,腓骨筋筋力の低下,腓骨筋反応時間の遅延,足関節の背屈制限,足関節背屈筋力の低下など多くの報告がされている。しかし,先行研究において超音波診断装置を用いて筋機能を評価し,他の身体機能との関係性を示している報告は少ない。
本研究は足関節捻挫既往者において,足関節内反捻挫の重症度を基に対象を分類し下腿筋機能と関節可動域の関係性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は過去1年以内に下肢の整形外科疾患を罹患しておらず,足関節に疼痛のない59名117足とした。対象は足関節捻挫歴を基に3群に分類した。捻挫歴がないものをControl群,Brownらの方法に従い,捻挫したが直後の腫脹や疼痛を認めないものをCoper群,捻挫後に腫脹や疼痛を生じ跛行を呈したものをLateral Ankle Sprain(以下LAS)群とした。Control群:36足,Coper群:32足,LAS群:49足であった。
計測項目は,関節可動域,関節弛緩性,下腿筋厚,下腿筋羽状角,距骨前方引き出し距離(以下ADT距離)とした。関節可動域は,足関節自動底屈・他動底屈・自動背屈・他動背屈,足部内転・外転,足関節最大底屈位における足部内転,外転とした。関節弛緩性は東大式全身関節弛緩性テストを行った。下腿筋の評価には超音波画像診断装置Xario(東芝メディカルシステムズ(株)製)を使用,プローブはリニア型9.0(MHz)を用いた。下腿筋は,前脛骨筋と,腓骨筋を対象とした。対象の筋に対し,安静時と収縮時における筋厚と羽状角を計測した。ADT距離は,踵部を固定し,下腿を他動的に後方に押し込んだ際の腓骨に対する距骨の移動距離とした。
以上の計測データについて,3群間の差を,一元配置分散分析を用い有意差が認められた場合,Tukeyの多重比較検定を行った。
【結果】
全身関節弛緩性はCoper群が他の2群より有意に高値を示した。他動背屈角度は3群間に有意差は認めなかったが,自動背屈角度はLAS群が他の2群より有意に小さい値を示した。足部外転角度は,Coper群がControl群より有意に大きかった。ADT距離はLAS群が他の2群より有意に大きかった。前脛骨筋と腓骨筋の各項目において,3群間で有意差は認めなかった。
【結論】
LAS群は自動足関節背屈制限が生じたことから,捻挫だけでなく靭帯損傷の有無が自動背屈角度に影響を与えることが示唆された。また,ADT距離が増大したが前脛骨筋機能に有意差はなかったため,自動背屈角度の制限には拮抗筋の関与が考えられた。さらに,捻挫が発生したが靭帯損傷が生じなかったCoper群の特徴として全身関節弛緩性が高かった。他の関節弛緩性が足関節外側靭帯損傷に与える影響は今後検討する必要があると考える。
足関節外側靭帯損傷における再発の危険因子は,靭帯損傷による構造的不安定性,腓骨筋筋力の低下,腓骨筋反応時間の遅延,足関節の背屈制限,足関節背屈筋力の低下など多くの報告がされている。しかし,先行研究において超音波診断装置を用いて筋機能を評価し,他の身体機能との関係性を示している報告は少ない。
本研究は足関節捻挫既往者において,足関節内反捻挫の重症度を基に対象を分類し下腿筋機能と関節可動域の関係性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は過去1年以内に下肢の整形外科疾患を罹患しておらず,足関節に疼痛のない59名117足とした。対象は足関節捻挫歴を基に3群に分類した。捻挫歴がないものをControl群,Brownらの方法に従い,捻挫したが直後の腫脹や疼痛を認めないものをCoper群,捻挫後に腫脹や疼痛を生じ跛行を呈したものをLateral Ankle Sprain(以下LAS)群とした。Control群:36足,Coper群:32足,LAS群:49足であった。
計測項目は,関節可動域,関節弛緩性,下腿筋厚,下腿筋羽状角,距骨前方引き出し距離(以下ADT距離)とした。関節可動域は,足関節自動底屈・他動底屈・自動背屈・他動背屈,足部内転・外転,足関節最大底屈位における足部内転,外転とした。関節弛緩性は東大式全身関節弛緩性テストを行った。下腿筋の評価には超音波画像診断装置Xario(東芝メディカルシステムズ(株)製)を使用,プローブはリニア型9.0(MHz)を用いた。下腿筋は,前脛骨筋と,腓骨筋を対象とした。対象の筋に対し,安静時と収縮時における筋厚と羽状角を計測した。ADT距離は,踵部を固定し,下腿を他動的に後方に押し込んだ際の腓骨に対する距骨の移動距離とした。
以上の計測データについて,3群間の差を,一元配置分散分析を用い有意差が認められた場合,Tukeyの多重比較検定を行った。
【結果】
全身関節弛緩性はCoper群が他の2群より有意に高値を示した。他動背屈角度は3群間に有意差は認めなかったが,自動背屈角度はLAS群が他の2群より有意に小さい値を示した。足部外転角度は,Coper群がControl群より有意に大きかった。ADT距離はLAS群が他の2群より有意に大きかった。前脛骨筋と腓骨筋の各項目において,3群間で有意差は認めなかった。
【結論】
LAS群は自動足関節背屈制限が生じたことから,捻挫だけでなく靭帯損傷の有無が自動背屈角度に影響を与えることが示唆された。また,ADT距離が増大したが前脛骨筋機能に有意差はなかったため,自動背屈角度の制限には拮抗筋の関与が考えられた。さらに,捻挫が発生したが靭帯損傷が生じなかったCoper群の特徴として全身関節弛緩性が高かった。他の関節弛緩性が足関節外側靭帯損傷に与える影響は今後検討する必要があると考える。